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BONNO!
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ヒカ・キャス・テメに対する煩悩かべうち

2025年3月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する

#テメキャス
#テメキャス「キスしないと出られない部屋」

書けないかと思ったけどなんとかまとまりました。

2025/3/31修正しました。



用事を思い出したから、後で聞くわね」
キャスティが席を立った。
引き止める隙もなく、早足で去っていく。酒場の扉の鈴が鳴り、テメノスは中途半端に浮かせた手を大人しく引き戻した。
「これで何回目だ?」
一つ空席を挟んだ隣に座っていたオズバルドが指摘する。耳の痛いそれに、ため息を返した。
「数なんて数えていませんよ」
「俺の見る限りで、十三回目だ」
「……十二回目です」
「……数が合わんな」
「答え合わせは遠慮します」
紅茶を含み、それ以上の問いかけを拒む。カウンターへ置いた紅茶の水面に写る酒場の照明を見つめて、思う。
──まさか、ここまで手こずるとは思わなかった。


ソローネの見つけた地下道を探索する途中、不可思議な部屋に落ちたことからテメノスとキャスティの関係は『少々』変化していた。
これまではソローネも含めて冗談に乗っかる間柄だったというのに、あれからぴたりとキャスティがテメノスに関わってこなくなったのである。無論皆の前ではいつも通りに振る舞い、先程のように言葉を交わすこともあるが、そのまま話し込もうとすると断られる。
ヒカリやパルテティオはいつもと変わらないだろうと言っており、オーシュットは変化にこそ気付いているが「ニンゲンも大変だな〜」の一言で片付け気にしていないようだ。残る女性二人はテメノスよりもキャスティに味方をしているようで、アグネアは申し訳なさそうに話しかけてくるが、ソローネはだから言ったのにと肩を竦めるだけで匙を投げている。
つまり唯一の既婚者であるオズバルドがテメノスの味方とも呼べる訳だが、彼においては変化を記録しているだけで、アドバイスを求めようものなら市政の本を読めと言われるばかりだ。
「──手強いな」
密室で二人きりという、通常なら有効活用するべき場面で、密室の謎を解くという方向に頭を傾けてしまったことが良くなかった。
いや、あの場面でなぜ口付けで鍵が開くのかという疑問を持たないことなど無理だ。鍵師や絡繰師など機会があれば、話を聞いてみたいものだ──と考えてしまったところでテメノスは肘をつき、組み合わせた両手に額をつけるようにして吐息した。
(……やはり、このままがいいのだろうか)
謎が何物にも代えがたいものであるから、惹きつけられる。人に向ける興味関心とは別のものであるので、こればかりはどうしょうもない。
これまではそれで良かったはずだ。それなのに、どうしてこんなにも彼女に焦がれてしまうのだろう。
「……」
茶器を見下ろして、思う。
──彼女の淹れる紅茶を、久しく飲んでいない。


それから最後の夜を経て、二人の関係は再びもとに戻っていた。謎を解き明かす過程で、壮絶な闘いがあり、気まずいなどと言っていられない状況だったことも理由だろう。
仲間を慰め、ときに慰められる側に立ちながら、死闘を乗り越え皆で待ち望んだ朝日を見た。──あの時の光景は、目に焼き付いて今も離れない。
金色に輝く朝日を浴び、文字通り世界を救った彼女は、これからも多くの病や怪我に悩める者を救い、救う者を育てていくのだろう。その彼女が、どんな理由であれ自分を意識しているというなら?
取り組む理由としてはそれで十分だと開き直った。
もとより叶うはずもないと考えていたのだから、今更何を恐れよう。
旅の目的も終え、世界を救い、共に旅をする理由は失った。カナルブラインに戻ってきた八人は、このままここで別れるのも寂しいから、というアグネアの提案に乗り、再び、あのキャンプ地へ向かうことにした。
ここしかない、と思った。テメノスは静かに時を待った。
腹を満たしたオーシュットがもう寝る、と言って地面に丸くなったとき、頃合いだと考えた。ヒカリが笛を鳴らし、アグネアが踊り始め、オズバルドが感嘆の息をこぼして二人を見守っている。パルテティオが注いだ酒を手にソローネに呼び掛けたのを見て、テメノスもまたオーシュットに持たされた干し肉を片手にキャスティの傍へ移動した。
「食べませんか?」
「有り難いけど、お腹はいっぱいなの。誰かに食べてもらいましょう」
両手を上げて断る姿が妙に可愛らしい。
地面に置かれた木皿の上へ肉を置き、よいしょ、とキャスティの隣に腰掛けた。
「……いい夜ね」
「ええ、本当に」
キャスティがヒカリ達の方へ視線を向ける。その横顔を見守っていたかったが、テメノスは意を決してキャスティの手を取った。
「散歩に行きたいので、付き合ってもらえませんか」
「え?」
断らないでほしいと願いながら、手を離す。キャスティはさして気にした風もなく頷いた。
「じゃあ、ついでに水も汲みにいきましょうか」

バケツを手に近くにある小さな湧水池を目指す。キャスティが事前に毒性について調べており、この池の水は飲んでも良いということになっていた。
彼女は何も言わなかった。静かにテメノスの後をついてくる。
「……長いようで、短い旅でしたね」
「ええ、本当に」
月の光が落ち、池の水面はキラキラと輝いていた。穏やかで、静かな水の音に耳をそばだてるように少しの間沈黙し、ややあって、キャスティに手を差し伸べる。
「貸してください。掬いますよ」
「ありがとう。お願いするわね」
以前ヒカリと当番になったときは重く感じた水だが、旅を経て多少は筋肉がついたのだろうか。一つ程度ならふらつくこともなく、水を掬う。
キャスティは直ぐ側に立っていた。水面に反射する彼女の顔色は伺えない。
「私に話したいことがあるのでしょう?」
顔を合わせると、キャスティはどこか苦笑するように言った。
「ええ、まあ」
バケツを置き、立ち上がる。
「……聞いてくれますか?」
「最後だもの。わだかまりを残したくないのは私も同じ。……覚悟はできているわ」
「覚悟、ですか」
妙な言い回しが引っ掛かり、テメノスは首を傾げた。
「ちなみに、どうして覚悟が必要なんです?」
「あなたの話を聞いてから答えるわね。どうぞ」
そう言われると先に話したくなくなるものだが、キャスティの顔色は真剣そのものであったので、逡巡の末、ようやく時間を得られたのだからと思い直し、小さく息を吸った。
「順番を間違えてしまったことを、反省していたんです。……いくら密室から出るためとはいえ、女性に乱暴を働くなど合ってはなりません。すみませんでした」
「……私は早く出たかったから、気にしなくていいのよ」
「それでも、ですよ。不本意な状況であれ、先に伝えるべきでした。……あなたと二人きりでいることも、口付けることも私にとっては幸運であり、不運などではなかった。私はあなたとだからあの状況を楽しめたのだと」
「そう……。それなら、良かった」
段々と俯きがちになる彼女の様子を見て、テメノスは言葉に迷った。
「キャスティ。もう一度、私に機会をもらえませんか。──あなたの笑顔を一番近くで見られる人になりたいので」
返答は、なかった。
衣擦れの音がした。キャスティが握り合わせていた両手を顔に押し当てる。
「どうしました?」
「ごめんなさい、火照っちゃって。……まるで告白されたみたいに聞こえて、照れちゃったの」
すぐに冷ますから、とこちらに背中を向け、氷柱を生み出そうとするキャスティに近寄り、両の手首を掴む。
「え?」
「……今のは告白のつもりだったので、熱を冷まさないでください」
「えっ、ええっ?!」
手を離し、代わりに後ろから抱き締める。思うより華奢な身体は想像以上に柔らかく、腕が吸い付いて離れない。
「て、テメノス……ねえ、離れて……」
「返事をくれるのなら考えます」
ああ、だの、うう、だとキャスティは母音をブツブツと唱えて片手で額を押さえていたが、大きく深呼吸をした後、テメノスの腕を軽く引っ張った。
「顔を見せてくれない? 見たいわ」
「……いつもと変わりありませんよ──」
腕の力を緩めるのと、頬に手が添えられたのは同時だった。リップ音と共に口端に触れた感触に目を瞠り、困ったように笑うその顔が月光に照らされてよく見えたとき、同じようにその下顎に手を添え、唇を触れ合わせていた。


「……本当はね、忘れないといけないと思っていたの」
バケツを片手に、もう片手にキャスティを引き連れ、テメノスは森の中を散歩していた。このまま仲間達のところへ戻っても良かったものの、まだお互いに話し足りない部分もあったからだ。
「あなたの顔を見るたび思い出しちゃって……あなたは私のことをなんとも思っていないと思っていたから、余計に、気にし過ぎる自分が嫌だったのよね」
「考え過ぎてしまったわけですね。……おかげでやきもきさせられましたよ」
「悪かったと思ってるわ。でも、あなたは恋愛なんてしないのだと思っていたから」
子供のように軽く手をゆすり、キャスティが近寄る。顔を覗き込むように彼女はその清らかな目にテメノスを写した。
「謎は、何物にも代え難いごちそうなのでしょう?」
「……ええ、否定はしません。なので考え直すことにしたんです」
上体を屈め、キャスティの額に唇を寄せる。逃げることなく受け止めてくれた喜びをしっかりと味わい、薬草の香りと共に記憶する。
「どちらも私には必要なものかもしれない、とね。……あなたにとって重荷とならないことを願いますよ、キャスティ」
「あら、優しいのね」
「私はいつでも優しいので」
「うふふ。……そうだったわね」
腕を組むように身を寄せてくれたことが何よりも喜ばしく、足を止める。少しの間、離れていた分の想いを分かち合うように二人静かに身を寄せ合っていた。

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小説

#ヒカキャス
先日はエアブーありがとうございました!
突貫工事ながら気に入ってるのでサルベージ。
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このあと一日だけ駆け落ちして翌朝には戻ってくればいい。殿ご乱心しよ?

漫画

#ヒカキャス
#進捗
友呼ぶシリーズ第2弾と表紙をのんびり始めている。上手くいい感じに描くぞ……!🔥

#雨に花束関連
サブストを3つほどやりまして。
メリアのサブストにおける私の煩悩感想です。
修正:メリアが全部メアリになってたので直しました。
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以下
#ネタメモ

グラヴェルの姉妹の方々の話。これをキャス・ヒカ・テメ・パルでやりまして、なんやかんやでキャスが全部いいところを決めてくれたのと、その後連れて行く流れをテメが引き取ってくれたので、実プレイ妄想として書き留めておこうと思いました。
パルは傭兵呼びをして物攻ダウン係でした。良いダメージを入れていくヒカ・テメで倒せずキャスのねらい撃ち(修正)で倒すという……ね!ブレイクもキャス(またはパル)でした。
この話が切なすぎるというか、いいお話だったというか……ヒカ・キャス・テメが関わるいいお話っぽさがあったので、思い出に残ってしまいました。
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#テメキャス
#テメキャス短い話

メリアのサブスト後。付き合ってる二人の妄想。

娼婦にならずに済んで良かった、と思っちゃったのよね……」
「当然です」
メリアの話が落ち着いたその夜のこと。仲間達との穏やかな晩餐を終え、テメノスはキャスティと共に宿へ向かっていた。
仲間達には明かしていないが、二人はいわゆる恋人関係にある。
旅の目的を果たし、報告なども終えて、仲間達の旅路に残された謎でも追いかけようかと散歩に出かけたはずが、運命の相手と出会ってしまったというわけだ──言うほど運命とやらを信じてはいないが。
いや、実のところテメノスもさほど強い気持ちを持っていなかったはずなのだが、ティンバーレインで一躍、時の人となったキャスティが、仲間を増やすためと言って早々に離脱しようとしたので、それを引き止めるうちにいつの間にやら傾倒してしまったのだ。
「記憶喪失という弱みに付け込む人間も居たはずなのですから、あなたは相当に運が良い。パルテティオが言っていたのも頷けます。……日頃の行いが良いのでしょうね」
「あら、褒めてくれるの? ありがとう」
暖かな宿へ戻ると、どちらからともなく吐息がこぼれる。
キャスティは何も言わず、そのまま大人しくテメノスについてきたので、部屋の中まで導いた。
仲間達の泊まる宿とは別で確保した部屋で、余計な気を使うことはない。
「……部屋も暖かいですね」
「そうね。暖炉を焚いてくれていたみたい」
扉を閉じても他愛ない会話を続けていると、キャスティはおもむろにテメノスを見上げる。応じて顔を寄せ、唇を軽く重ね合わせた。
「おかえりなさい。疲れたでしょう?」
「ただいま戻りました。歩くだけで済みましたので、そうでもありません」
細腰に手を回す前に腕を掴まれ、押し戻される。衛生面を配慮したい彼女の意見に従い、軽く着替えを済ませ、手洗いを終えてようやく抱擁を交わした。
二人きりになることなど、旅の最中ではありえない。男女であるから配慮こそしてもらえるだろうが、お互い、仲間達に明かすつもりがないので、こんなふうに宿が複数ある町でない限り、触れ合うことはほとんどなかった。
キャスティも軽く汗などを流しており、その身体は温まっていた。肩口に鼻先を寄せると、いい香りがする。髪はほどかれ、滑らかな金色の髪が肩に落ちている。指通りが良く、後頭部に手を添えるだけで満たされるものがある。
額を重ね合わせ、小さな笑い声を交換するように口付けた。

肌を重ね合わせているから余計に思うのだろう。彼女のこんな姿を知るのは、自分が最後でいい、と。



冗談でも娼婦してたら通うとかは言わんか……言わんなあ……と思い。
きっと向いてないと思うわと、のほほんとのたまうキャスにいや向いてはいると思……思……となりつつもそれを言いたくはないし他の男が触れるなんて考えたくもないテメがいたらいいなって思った私でした〜
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メモ,小説

#テメキャス
#テメキャス「キスしないと出られない部屋」
終わり。あと1話だけ書きます。
この話はテメ→←キャスだったみたいです。




(本当なのにね)
離れていくテメノスを見上げながら思う。
彼にとって、キャスティの持つ感情などただの信頼でしかない。分かっていたことなので苦笑一つで受け入れられた。
「これからどうするの?」
「……それを一緒に考えてもらえると助かります」
「分かった」
どうやらテメノスは戸枠に書いてあるだけのことに大人しく従うつもりはないようだ。試す価値はあるのに、と思いつつ、キャスティも改めて室内を検分する。
ベッドの下もしっかりと確認し、ソローネなら使えそうな針金も見つけた。
「これで開けられないかしら」
鍵穴に差して手を動かしてみるが噛み合うような感触はない。もう一度錠前を確かめたが、やはり鍵はかかったままだ。
「上へ戻ることができればいいのですがね」
共に頭上を見上げ、沈黙する。
天井には固く閉ざされた鉄の門があり、見るからに、押し開くことは難しそうだ。
「棚と……他に痕跡がないか調べるか」
独り言を呟いてテメノスが検証を始める。
こころなしかその横顔が楽しそうに見えたので、キャスティは密かに納得した。
すぐに部屋を出たいわけではないのだろう。目の前に出された美酒をとことん味わいつくさねば気が済まない──。
(困った人ね)
彼自身の性格と嗜好が一致しているからの行動なのだから、勝手に悲観しては失礼だし、どのみちここから何かしらの手段で出られるならそれに越したことはない。
テメノスが棚を動かしたいというのでそれを手伝い、家具の類が一切動かせないことを確認しても、キャスティはあまり深刻に考えてはいなかった。しかしある程度調べるために動き回ったことで、気付くことはあった。
「……空気が足りるといいのだけど」
ポツリと、ほぼ無意識に呟く。この部屋に落ちてから三十分は経過しただろうか。窓がないので外の様子は伺えず、砂時計を取り出し、時間の目安とする。
「なにか分かりましたか?」
「そうね。あまり悠長に構えていると、酸欠になって二人とも死んじゃうかも……ということなら」
「……恐ろしい話だ」
「あなたは? なにか分かったの、名探偵さん」
ベッドに腰掛け訊ねるとテメノスは両手を天井へ向けて首を振った。
「お手上げです。調べようにも痕跡も何もない。……調べるほどこの空間の異質さを感じるだけです」
「そう……」
大人しく彼も隣りに座った。
「せめてお湯を用意できれば、紅茶でも淹れてゆっくり考えられたのでしょうけど」
「構いませんよ。こんな場所で飲むより、宿でくつろぎながら飲むほうがずっと味わえるはずです」
「……それで、結論は出た?」
キャスティは早々に彼の行動意図も理解していたからそう訊いたわけだが、テメノスは返事を渋った。ため息をつく。
「このような形で、行為に及ぶのは不本意ではありませんか?」
「あなたと閉じ込められたことが不幸中の幸いだったから、あまり気にしていないわ。知らない人だったら困ったでしょうし、アグネアちゃんやソローネだったらそれこそすぐに出ていると思うし……」
「……そのくらいのことだと」
「命と比べたら、そうかもしれないわね。──ごめんなさい、あなたの気づかいを有り難いとは思っているのよ」
彼の顔が真剣味を帯びたので慌てて付け足した。
「でも、ここで足踏みをしてはいられないから」
「……分かりました。あなたに従います」
「本当?」
「なので、あなたからしてもらえますか」
にこやかに言うと、テメノスは目を閉じた。
「どうぞ」
「え?」
意図を捉えきれず戸惑う。
(なんだか……妙ね)
彼がこうも素直に応じる背景は、一体なんだろう。本当に出られる手が他になかったからなのか。どうなのか。
「なにか隠してる?」
「いいえ? 何も」
キャスティの問いかけを彼はフフと軽く笑い流す。片目を開けて、茶目っ気たっぷりにこちらを見た。
「先程のあなたを真似しただけです」
「……あらそう」
やはり、ずっと二人きりというのは良くない。キャスティは表情を変えずに立ち上がり、鞄の中から小瓶を取り出した。
「……何をする気です?」
「私からしていいのでしょう? 大丈夫、扉が開いたら手を借りて運ぶから」
安眠草を乾燥させ、煎じたものだ。軽く吸い込むだけですぐに眠気に誘われ、意識を手放す。
手巾を水筒で軽く濡らし、そこへ安眠草を振りかける。水を吸って布に色が沈着したのを見て、テメノスへ差し出した。無理やり押さえつけては先程の彼と同じになってしまうので、あくまで選択を委ねる。
「……」
ジロリと睨まれたので微笑み返す。
少しの間膠着状態が続いた。テメノスは黙ってこちらを見上げるばかりで、キャスティが僅かにでも動けば杖を振れるよう片手に握り込んでいる。
手袋の先に湿り気を覚えて、ため息と共に折りたたむ。
「……目を瞑って」
素手で触れると逡巡の末、薄青の瞳が瞼の奥に閉ざされた。前髪を払い除ける。僅かに痙攣を示した眉間を軽く笑って、緊張しなくていいのよ、と囁いた。
こめかみに触れて駄目だったとして、挨拶に使われる場所が駄目とは限らない。額に触れて、すぐに扉の状態を確認しようと身体を離したとき、手を掴まれた。
「まだ開いていないと思います」
確信を持った声に、キャスティも勘付いた。
「その口振り、何か見つけたのね」
「……そうですね。ええ、白状しましょう──もう少し屈んでくれます? そうです、こちらに」
「なに──」
そんなに大きな声で話せないことなのかと眉を潜めながら肩を近付けた。相手が目を閉じているから問題ないと思った。
それが悪かった。
柔らかいものに触れた。それを実感したときには天地がひっくり返り、自分の身体はベッドの上にあった。
瞬きをする。視線が一瞬重なって、名前を呼ぼうとしたその時になって、何をされたのか、されようとしているのか理解し、動けなかった。
「──ッ、テメノス」
触れ合わせているだけなら唇を動かすことはできる。どうしたかったのか自分でも分からないが、名前を呼んだ途端、口の中を埋めるように何かが入り込んできて喉が震えた。
肩を押したが男性の身体を押しのけることはできず、服を引っ張るがローブのせいで引き剥がせない。
(息が、)
呼吸の仕方など分からない。目眩を覚え、それが酸欠によるものだと気付いてとにかくもがいた。
「はあっ……は、っ」
彼が離れてくれたので肩で息を繰り返し、慌てて彼から起き上がる。
「キャスティ」
とにかくここから出たかった。外からやって来る足音に気付き、引き止められる前に扉へ向かう。
ドアを押し開けると、見覚えのある仲間の顔がそこにあった。
「キャスティ、テメノス──」
付き合いの長いヒカリが目の前にいたから、思わず抱きついた。
「助けにきてくれたのね、ありがとう」
誰かに触れると落ち着いた。オーシュットに問われる前にぱっとヒカリからも離れ、仲間の顔を見上げる。
「キャスティさん! テメノスさんも無事?」
「ええ。でもちょっと空気が薄くて、眩暈がするの。先に地上へ戻りたいわ」
アグネア、ソローネ、パルテティオが土の階段を下りてくる。
「おいおい大丈夫かよ、キャスティ」
「あら、手を貸してくれるの? パルテティオ」
「いいけどよ」
仲間達の体温に触れて、熱を忘れる。心配顔のソローネには大丈夫、と微笑みかけて、パルテティオ、オーシュットと並んで地上へ出た。

残されたテメノスは部屋の外で交わされる仲間達の声を聞きながら、ゆっくりと腰を上げた。
衣服を整え、ローブのシワも伸ばして部屋の外へ出る。
「テメノスさん!」
「心配をかけましたね、二人とも」
「……」
オズバルドは何かあったことを察したのだろう。テメノスをじっと見定めていたが、おもむろに背を向ける。
「中は部屋だったのだな」
「ええ。おかげで腰を痛めずに済みました」
「それなら良かった……!」
アグネア、ヒカリの素直な心配を受け止め、地上へ促す。
一人、テメノスが歩き出すまで動かずにいたソローネだったが、声を掛けると静かについてきた。階段を上り、外へ出る。地下にいるのと、森の中ではこうも空気が変わるのかと深呼吸を通して実感した。
「……悪かったね」
「気にしないでください。楽しんでいたのは事実なので」
「ならいいけど」
自分が見つけた地下道だったから、余計に気負わせてしまったのだろう。テメノスは穏やかに、次はもう少し慎重にいきます、と念を押して慰めた。
「あのさ」
ソローネは甘えるようにテメノスの腕に肩を寄せたかと思えば、ニヤリと口角を上げた。
「二人、何かあった?」
「何もありませんよ」
「ふうん……」
つまらないと言わんばかりに離れ、彼女は細い肩を竦めた。
「ま、手を出すときは気を付けることだね」
「何もありませんから」
「はいはい」

本当は、あの部屋に手がかりなど何もなかった。
刻まれた文字の不可解さも、文字に従えば開くという鍵の仕組みも謎に包まれていた。最終的にあの部屋の中だけではどうにもならないと判断したから、キャスティの意見に賛成し、行動に移したわけだが──もしかしなくとも自分は順番を間違えたのだろうと思っている。
はじめは揶揄われているのだと思った。
ほんの少し冗談を言い合い、気分を解すためのものだと。しかし、どうやら存外彼女は真剣に言っていたようで、テメノスがそれに気付いたのは口付けを終えてからになる。
好かれているとは思っていなかった。仲間としての信頼しか向けられていないのだと思っていた。
テメノスの知る彼女なら、驚くだけで、すぐに逃げはしなかっただろう。
普段焦りを見せないからこそ、酒や熱以外で簡単に頬を染めないからこそ、その理由に期待してしまう。
「……次はもう少し場所を選ぶか」
「なにか言った?」
「いいえ」
この際、酒の力を頼ってもいい。
答えを得るには、多少の犠牲はつきものだ。
テメノスは杖をついてソローネの隣をのんびりと歩く。

先頭を歩くキャスティと目が合った。
その表情がさっと変わったのを見て、早々に決着をつけなくてはならないなと、テメノスはゆるやかに微笑んだのだった。



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小説

#テメキャス
#進捗

予定外のことが起こりすぎてすぐ終わらなくて……。
小説版も書いてます。とはいえどう落とし所をつけるか迷ってます。
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メモ:鞄の作画ミス

漫画

#ヒカキャス
ネタメモでぼやいてた温泉ネタ。ヒカくんの髪結い姿がもしかしたらキャスに似るかもしれないと気付いてイメージを描き出すしかなかった。ちゃんとデフォルメではない形でも描く。
花嫁探しの表紙を描いたら……。
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#ネタメモ

#ヒカキャス
片想いの間とお付き合い始めてからの態度の変化について

片想いの間もヒカくんは態度隠さない気がしてきて……むしろきっかけというかキャスが少しでも隙を見せたら畳み掛けてくれそうな幻覚を見始めています。
もちろん逆で、好きなのが当然で、キャスに示されたら素直に喜ぶだけで満足してるヒカくんもありだと思うんですよね……!
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#テメキャス
片思いの時のステータス差分の旨味を味わいたい話とか

もともとテメが片思いで「ばれたくないとき」と「ばれてもいいとき」で態度違うよねって思ってたんですよね。そういう幻覚を他所で見て、そうそうそれそれ〜!!ってなっちゃって……。
まあバレたくないというか、私が今まで書いてきたテメはすぐに自覚しないから、あんまり素振りが見られないわけだが……好きだけど、キャスがそういう目で見てくれないから別にいい、ってときに、キャスとかソロちゃんに「好きでしょ?」みたいに言われると反発する可能性もあるなあって……思ったんですよね。そこの旨味をまだ吸えてないなと……吸っていきたいなと……。

私が書くとたいてい潔いというか調子に乗るというか、然るべきときにちゃんと踏み出せる人になってるので、違う世界線の……例えばテメ主人公世界線とかで考えて見るのもありだなーなんて思っています。

2周目はテメ主人公でキャスを拾うつもりです!なので2周目プレイが始まったらまた色々考えそう。
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メモ