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ヒカ・キャス・テメに対する煩悩かべうち

No.159

#コンビ以上カプ未満

オルトくんサブクエをするテメとキャス。
前半。書きかけ。この2倍くらい書いてるけど先が見えなくて、書き終わるか不明になってきました。


テメとキャスの年上組の冗談についていけない年下オルトくんの図がかわいいなって……。



紅葉舞い散る山道を歩く者は多い。
商人、狩人、聖堂騎士に神官、それから、旅人。立ち寄る人間は大抵どこかしら目的を持ち、その道中ないし目的地としてフレイムチャーチに立ち寄る。
「久しぶりね、テメノス」
では、彼女はどうだろう。
誰かを救うために手を差し伸べ続ける彼女が、ここへ立ち寄った理由は一体。

聖火の蝋燭が灯り、邪気の祓われた巡礼の道を往く。険しい坂だ。仄暗い洞窟を抜け、階段を上り、季節によっては多少の汗をかきながら道を進む。
でからこそ、道の先で待つ、青空の下の大聖堂は荘厳で美しく目に映るのだと言っていたのは親友だっただろうか。それとも、若い聖堂騎士だったろうか。
「足元に気を付けて」
「ありがとう」
心配は要らぬと分かっていても相応の配慮をしない理由にはならない。テメノスは杖を片手に坂を上り、石階段の手前でキャスティが追いつくのを待った。
落ち葉の少ない場所を選ぶという、普段ならばしない道の歩き方をしたために、軽く息が乱れる。ようやく大聖堂前の広場が見えると、はあ、と大きな息をつくとともに背筋を伸ばした。
「久しぶりにここまで来たわね」
こちらが呼吸を整える間を待ち、キャスティが歩き出す。
彼女の顔に汗は一つもなく、息も乱れていない。旅を続ける彼女に体力で敵うはずもなく、テメノスは大人しく彼女の後を歩いた。
キャスティは聖火の前で立ち止まった。
「良かった、今日も燃えてるわね」
「……心配していたんです?」
「そうね。そんなところかしら」
彼女からすれば、これもまた様子を見るべき対象なのかもしれない。曖昧な返答を訝しみつつ、そうですか、と後追いを避ける。
「ねえ。案内してくれない?」
大聖堂の方を見つめて彼女が誘う。
「構いませんよ。……以前とさして代わりありませんがね」
「だからいいのよ」
大聖堂は珍しいが、大きな建物というと、ニューデルスタの劇場も負けていない。だが、特殊加工で作られたガラスやレリーフ……歴史を感じさせる外壁と青を基調とした絨毯が敷かれた、落ち着いた室内はここ以外にはないだろう。
テメノスが大聖堂の説明を掻い摘んで行えば、へえ、そうなの、とキャスティは頷いた。外に出て、今度は町の端から端までをゆったりと案内する。
ふと、見覚えのある顔を認めた。同じく相手も立ち止まる。
「テメノスさん」
「君は……もう怪我は治ったんですね」
「はい。こうしてここへ旅ができる程には……自己紹介が遅れました。聖堂騎士、オルトです」
暗色髪の野暮ったい髪型の騎士は、外見に反して丁寧な敬礼を示した。彼の顔には見覚えがある。ストームヘイルでのクリックの葬式、それから、カルディナと対峙する前、虫の息となっていた一人である。
「なにか調べごとでも?」
「ああ、違うのよ。あまりゆっくり過ごしたことがなかったから、案内をしてもらっていて……」
キャスティが慌てて返答する。テメノスの方を様子見て言うことには。
「お仕事なら、席を外しましょうか?」
「いえ。仕事というよりこれは、個人的な調べごとといいますか」
「調べ事?」
「ええ、建築士ヴァドスについて……」
声の大きさを落としたということは、彼もまた事情を知る一人なのだろう。
「伺いましょうか。話してください、オルトくん」
彼は聖堂機関に残り、調査を続けていた。そしてヴァドスの手記を見つけ、そこに記載されていた文言を頼りにここまでやってきたのだという。
確かに彼の言う通り、カルディナの口振りからも黒幕は別にいると察せられた。テメノスはそれが誰なのかは知っているが、彼女一人だけが成せたことかといえば、違う気もしていた。協力者がいたはずだ。
「オルトくん、君はいい『鼻』をお持ちのようですね」
「は……?」
「興味が湧きました。私も同行しましょう」
「……よろしいので?」
「え?」
なぜかオルトは、テメノスではなくキャスティに確認を取る。彼女も困り顔だ。
「お二人で予定を楽しまれていたのでは?」
「違うけど」
「……」
「これは失礼。構いませんか? キャスティ」
即座の返答には思うところがあったが、テメノスはそれをおくびにも出さず、大げさな物言いながらそうは思っていないと伝わる声音で彼女に許しを請うた。
「いいわよ。こうなるとてこでも動かないでしょう?」
「あなたの寛大な心に感謝します」
「あなたが即答したこと、覚えておくから」
「おや、怖いことを」
冗談に二人で乗っかっただけなのだが、当のオルトだけが困惑してしまったので、応酬をやめて向き直る。
「行きましょう、オルトくん」
では、と咳払いの後、彼は地下道へ向かいます、とマントを翻した。


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