#ヒカキャス #ヒカキャス「花嫁探し」 予定と違う感じになったけど、今はこの形でまとめていこうと思います。オズと会話して恋心を認めるしかなくなってきてるキャス。ちょっと修正。「花嫁探し」の続きを読む ヒカリに見送られ、ク国を発ったキャスティは、オズバルドとエレナの様子を見るため、コニングクリークを目指した。元々彼らの様子を見る予定だったのだが、ヒカリに呼ばれたので、その前にク国へ向かったのだ。「元気そうね」「君もな」オズバルドは相変わらずの無愛想な態度で、けれど角の取れた態度でキャスティを迎えた。自宅を焼失した彼は、ここでは研究室を拠点とし、日中は娘と共にクラリッサに世話になっているという。「ごきげんよう、キャスティさん」「エレナちゃん。ごきげんよう、最近はどう?」「随分いいわ!」はじめはぼんやりとしていた彼女も、すっかり年相応の反応を示すようになってきた。記憶のすり替え──対象物の混乱とでもいうのか、一時はオズバルドの存在がハーヴェイに書き換えられていたエレナだが、キャスティの記憶喪失の知見とオズバルドの調査の成果により記憶が戻りつつあった。治療を急げば、悲しい過去をたくさん思い出すことになるかもしれないので、それには極力配慮しつつ、まずはオズバルドとの記憶を取り戻すことを優先している。以前に会ったときはオズバルドのことを父親だと認識できていなかったが、今は顔を出すたび、おかえりなさいと呼びかけてくれるという。経過が良いことは明らかだった。オズバルドとは積もる話もあるからと、夜、酒場で待ち合わせとした。キャスティは町の様子を見て回った後、待ち合わせよりも早く酒場へ向かった。なんだか久しぶりに酒場を訪れた気がする。話したいことがあるから、ク国に来てほしい──そう言われて向かったキャスティを待ち受けていたのは、予想外の話だった。カウンターに座り、メニューを選びながらこれまでのことを振り返る。「エイル薬師団の方ですか」「ええ。知っているの?」「あなたの姿は以前から何度か。ではなく、エイル薬師団のキャスティという方へ、手紙を受け取っていまして」「まあ……そうだったのね。ありがとう」旅をしていると手紙のやり取りというのはなかなかに難しい。数ヶ月滞在する場合は宿屋や酒場を宛先として送ってもらうこともあるが、コニングクリークへはつい昨日来たばかりで、滞在の期間もそう長くは考えていない。「誰から……ヒカリくんだわ」確かにキャスティの行き先を知っているとすれば、彼以外に居ない。キャスティより先に届いたということは、早馬を使ったか、鳥を使ったか、ともかくキャスティが発って直ぐに出された手紙であることは間違いなかった。(もしかして、何か怪我でも──)ク国はまだ復興の途中で隣国との親交もこれから温め直すところだ。その手伝いの過程で怪我をすることはあるはず……とさっと手紙を開き、二度ほど目を通したところでオズバルドがやってきた。「待たせたな」「ええ……」顔を上げ、オズバルドに気づくと慌てて手紙を折り畳み、鞄の中へしまった。会うのは、アグネアの舞台以来だ。彼の娘のこともあり、舞台で再会する前にも一度様子を見に来たことがあるので、仲間のうちでは比較的よく会っている方。「これが、東を旅していて見つけた書物だ。テメノス、パルテティオ、アグネアを連れて、巨壁の地下洞を探索していたときに見つけた」「そんなところにあったの?」「研究に来た学者が落としたんだろう」出会った頃とはすっかり見違え、オズバルドは身だしなみを整え、仲間とも頻繁に交流しているようだった。特にソローネのことを彼なりに気に掛けているようで、パルテティオやアグネアと連れ立っていたと語る彼の横顔は柔らかく、娘を見守る父親の姿に似ていた。食事は各々食べたいものを頼んでいたので、皿が空になるとキャスティは酒を、オズバルドは珈琲を頼んだ。「君の方はどうしている。ヒカリに呼ばれたと言っていたが」「ああ、それね──……」ここでふと彼に話してもいいのでは、という考えが過った。唯一の既婚者であり、彼自身は無自覚でも愛や恋の経験はある。「その前に聞いてもいいかしら。あなたと奥さんってどうして結婚したの?」「……急に何だ」「後で話すわ。ね、教えてくれない?」キャスティが訊ねるとオズバルドは深く溜息をついた。「どうもなにも……リタが一緒に住もうと言うから、それなら結婚するかと返しただけだ」「まあ。大胆ね」「……同じ家に暮らすとなれば、すり合わせも必要だ。そしてその話をするなら、結婚を考えてもいいだろうと」「奥さんは? なんて言ったの?」ふうと小さなため息をついて、オズバルドはキャスティとは反対の方へ顔を背けた。「もういいだろう」「もしかして、照れちゃった?」「……君に酒を飲ませるべきではなかったな」「そんなこと言わないで。一杯だけにするから」ようやく機嫌を直してオズバルドが珈琲を飲み始めたので、キャスティは鞄の中から手紙を取り出した。ヒカリがしたためたのだろうその手紙は、いくつか大事なことが書かれていた。「ヒカリくんがね、お嫁さんになってくれる人を探したらどうかって言われたそうなの。でも、彼はそこまで必要とはしていないみたいで、……最初は彼の考えに賛同してくれる人を探していたみたいだったのに、何故か急に、私を口説いてきて」「そうか」「そんなに急がなくてもいいと思うのよね。彼は若いのだし、これから色んな人に……それこそ他国のお姫様だって会うことになるでしょうし」オズバルドは黙って珈琲を飲み続けた。彼が何も言わないから、キャスティは沈黙を埋めるように話してしまう。「……彼の提案してくれた話は、とても魅力的だった。でも、きっとその条件なら他の人だって頷くはずなのよ。──たまたま私がそこにいたから、口説かれただけなの。なのに、」手元の手紙を見て、苦笑する。「どうしてこんな手紙が届くのかしらね」すぐに会いたいなどという殊勝な話は書いてなかった。呼び寄せておいて大したもてなしもできなかったことと、ヒカリの発言で戸惑わせたことへの謝罪。それから──『帰る場所は、いくつあっても困らぬはずだ。近くを通ったなら、必ず顔を見せてくれ。楽しみにしている』「……本当は、数カ月ク国に滞在して、カンポウについて学ぼうかと考えていたのよ。でも急に私を口説いてきたから……居づらくなっちゃって」「嫌だったなら、そう言えばいい。彼は聞く耳を持たぬ男ではないだろう」「そう……そうなのよね」両手で頬杖をつき、ため息をつく。オズバルドの言う話は最もで、キャスティもまた、ヒカリなら話を聞いてくれるだろうという自信はあった。でも、止めてほしい、とは言えなかった。ただ、聞かされ続けると迷う気がして、逃げてしまった。「答えは出ているのか?」「分からないわ。だって、国をまとめる立場の人よ。好きだから一緒にいられるわけでもないでしょう」「……話が見えん。それはヒカリに話すことだろう」キャスティは残り少ない酒を呷った。それからオズバルドに聞いてみたかった問いを、もう一つ、口にする。「あなたって、嫉妬したことはある?」「……それが何かはわかる」「なら、話が早いわね。女の嫉妬は怖いものなのよ。ヒカリくんなんて、たくさんの人を口説いちゃうから大変……」かちゃ、とティーカップを受け皿へ戻し、オズバルドは机上に置いていた本を開いた。「ここに蓄音機があれば、ヒカリに聞かせてやれたんだがな」「やめて。彼には秘密にしてちょうだい」「君はさっさとク国へ戻れ」「うう……! 店主さん、エールをもう一杯お願い!」オズバルドがため息をついて嘆いたが、キャスティは気にしなかった。『ク国に定住しなくともいい。帰る場所にしてくれたなら、それで』『民の中にも薬師を目指す者がいるはずだ。彼らをエイル薬師団のたまごとして育てるのはどうだ』ヒカリの話は本当に魅力的だった。彼が好意ではなく信頼からキャスティに声をかけたことも分かっている。信頼関係だけでいえばアグネアやソローネ、オーシュットだっているのだ。キャスティは一番歳が離れているし、それに、恋や愛の経験はなくとも、ヒカリがこの先誰かを好きになったとき、自分がどう感じるかの想像はできる。それがヒカリを好きという感情ではなく、嫉妬だということも、理解している。だから、ヒカリが月を見ながら、口説いたのは本意だと口にしたとき、はぐらかしたのだ。彼は素直に信頼を向けてくれているのに、綺麗に同じものを返せないどころか、自分の我儘だけを聞いてもらうような形の婚姻など、不健全だと思ったから。「……明日休んだら、ヒカリくんに謝るわ」「それがいい」「振られたら、慰めてちょうだい。オズバルド」返事はなく、ページを捲る音だけが返った。キャスティは二杯目の酒をゆっくりと飲みながら、どうしてこうなのかしらとオズバルドを真似たような長いため息をついた。畳む favorite やった〜! わーい! 嬉しいです! ありがとうございます! 感謝! 2025.3.6(Thu) 21:58:38 小説 edit
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オズと会話して恋心を認めるしかなくなってきてるキャス。
ちょっと修正。
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