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BONNO!
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ヒカ・キャス・テメに対する煩悩かべうち

No.21

#テメキャス
#テメキャス「紅茶と雨宿り」

続きです。4話構成と言ってましたが、3話構成になりました。これでおしまいです。
これはこれでいい気がしています。

テメについての考えが浅い気がしますので、ゆるっと見逃してください🙇
全部ノリと私の好きな雰囲気でできてます。

追記:自分メモ
ヘアバンドじゃなくてカチューシャでした。

二、ティータイムの続き

顔も見れないほどの近さに戸惑う。
背中を撫でられ、ぎくりとした。温もりが直接触れたように錯覚するほど、体温を感じる。それほどまでにその手に熱を帯びているのだと分かって、緊張なのか、拒絶なのか、肌が粟立つ。手の震えを感じた。
「嫌なら、拒むべきです」
「……あなたは、」
声が掠れる。緊張によるものではない。
まさに今、変わってしまいそうな『なにか』を失わぬよう、見極めようとしているだけ。
「私と、どうにかなりたいというの」
「その道もあるでしょう。聖火教会は審問官の婚姻を認めています」
(婚姻……)
少し前に自分はこの部屋に何を思ったか。
夫婦の部屋のようだ、と思った。
なぜそんなふうに思ったのか。男女で一室を借りているから?
本当に、それだけだろうか。
情はある。これだけ肌が触れ合っていて心地の良い関係なんて、そうないことも理解している。
けれど、確信はない。
「……好きだと思う?」
「そうだと、嬉しいですね」
考える。何をもって判断すればいいか分からないから、分かることを拾い上げる。
苦しくない抱きしめ方。温かい。彼の言わんとするところはおそらく性愛的な好ましさで──とすれば、ここで応えてしまうとどうなるのかというと。
「……」
熱がさっと顔に集まった気がした。
できるだろうか。知らず手指に力が入り、シーツを掴む。
同じタイミングで、テメノスは腕の力を弱めた。
「……驚かせてすみません。頭を冷やしてきますから、先に寝ていてください」
「待って」
表情を見られたくないのか、離れてすぐに立ち上がってしまう彼を思わず引き止める。掴んだシャツの裾がずる、とはみ出たが、それよりも。
「肝心なことを、言い忘れてるわ」
長いため息をついた後、ようやく彼は振り返った。
「なんです?」
普段は飄然としていながら、大切な仲間が傷つけられようものなら誰よりも熱く敵の前に立ち向かう──どんなに建前で取り繕っても、彼の本当の心は隠しきれないほど真っ直ぐで、素直だ。
「私にだけ言わせるつもり?」
「……何を言うつもりか知りませんが、不公平では?」
「そうかしら」
目元の赤らみが分かるほどまで近付いてくると、テメノスは毛布をかけるようなゆっくりとした手付きでキャスティを押し倒した。ベッドが軋む。手のひらを重ねるだけと思えば、指を絡め取られる。肌の触れ合う場所が増えただけで不思議と安心感が得られた。
「言ってくれたら、変わるかもしれないじゃない」
「やれやれ……あなたには敵いませんね」
それは一瞬のことだった。その言葉を言ってくれるのかと期待したのに、響いたのは窓を打つ雨の音だけで、互いが息を吐く音すら聞こえなかった。
「──」
「ん、……いま、」
耳を食むように囁かれた。聞き返そうとした唇をもう一度塞がれて言葉を失う。
啄まれるような軽い触れ合いが続いた。片手を繋いだまま、静かに吐息だけを交換する。
「はは、いい顔ですよ。キャスティ」
ようやく解放されたと思えば、そんなことを言われた。唇を親指の腹でなぞられ、そこで初めて唾液で濡れていたのだと知った。
「……どんな顔よ、もう……」
「気持ちは変わりましたか?」
手を引かれて上体を起こす。乱れたキャスティの髪に触れ、耳にかけながらテメノスはいつもの楽しげな表情に戻ってそう訊ねた。
これは、分かっていて聞いている。
「そうねえ……」髪の毛先をくすぐる指先を見つめ、言葉を探すような間を置く。楽しげなテメノスの薄青の瞳を見つめて、ふ、と微笑んだ。
「もっとしてくれたら、考えるわ。──おやすみなさい」
今度は捕まる前に自分のベッドへ滑り込み、シーツを被る。
なんだか子供の頃に戻ったように、胸がどきどきと高鳴っていた。
ため息が聞こえた。からかいすぎただろうか。
部屋が暗い。テメノスが明かりを消したらしい。
キシ、とベッドに乗り上がる音と、衣擦れの音が近くから聞こえた。
シーツの中を探るように迷い込んできた手に、左手を握られた。
彼は何も言わない。その手は温かいまま。
ふ、と小さく笑ってしまった。
遠雷が聞こえる。また雨が降るらしい。頭痛はなく、このまま眠れそうだ。
たまにはこんなふうに一緒に寝てもらうのもいいかもしれない。そんなことを考えながら、キャスティはゆっくりと意識を手放した。

畳む



三、雨上がりにキスをして

人を疑う仕事はまさしく自分には天職だった。テメノスはその言葉を本心のように告げることも、建前のように話すこともできる。
聖職者として暮らす中見えてきたものは、いつだって人は都合の良い嘘をつくということだ。だからせめて自分だけはと、建前の裏側に本音を隠し、本当でも嘘でもないことを口にするようになった。
善良な人間が殺され、悪が生き延びる。そんなことがあっていいものかと怒りが内側に満ちるとき、同じくらい悪の存在に気付く立場であってよかったと思う。
何も知らないまま、人の死を惜しむことはできない。
身近な人の死にすら、貪欲に理由を求める。
今回は、それが良い結果となっただろう。聖火教会に巣食う闇を払った。若い命を守れなかったことは悔やまれ、かつての友や親しんだ人々の死を仕方ないことだったなどとは微塵も思わないが、彼らの死が無駄にならずに済んでよかったと思う。

仲間と共に夜明けを取り戻したことで気がかりは晴れた。
それぞれ目的を持つ面々だった。テメノスは幸いにして職や故郷を追われることはなく、謎という美酒は既に食らった。
またあの場所に戻り、子供たちに紙芝居を語り聞かせ、次なる美酒の香りに思いを馳せるだけ。
だが、そう──一つだけ。魚の小骨が喉に刺さったかのような、そんな引っ掛かりがまだあった。
事件性のないものであったので放っておいたが、知らずそれは言動に表れ、返答があると喜びを伴った。
この正体を知らぬほど無知でもなく、子供でもない。彼女のやりたいことを思えば、自分は教会にいますよと無害な顔をして寄り添うことが望ましいとすら思っていたので、さしたる問題もなかった。
なかったのだが。
魔物が迫ることにも気付かず、片手で頭を押さえて立ち尽くす彼女を──キャスティを見つけたときは、身体が勝手に動いていた。
そうして理解した。知らぬところで、彼女が命を落とすこともある。
彼女はヒカリに次いで戦闘面でも回復面でも頼もしい存在だった。それなのに、今のように恐ろしいほど無防備になるときがある。
思いは叶わずとも、せめて少しの間だけでも彼女を守れたら。気付けばテメノスは旅の同行を申し出ていた。
自覚した。思ったより自分は、彼女を心配している。


記憶を取り戻してからの彼女に対し、記憶を失う前と大きく変わったところはない。時折見せる表情だとか、歳の離れた仲間への態度に余裕が出たといったくらいの変化はあったが、どんな記憶であれ、今の彼女となるに必要な軌跡だったのだろうと思えるほどには、彼女はいつも通りだった。
ティンバーレインで彼女の身に起きたことを知るまで、呑気にもテメノスはそう思っていたのだ。
紫の雨に振られる中、一心に薬を調合する姿は研究者じみていた。自ら飲み、効果を試したときは肝を冷やした。自分こそ休むべきであるというのに、その場にいた仲間達の他、雨に濡れた患者全てに薬が行き届くまで動き続け、彼女が眠ったのは夜半時だ。
ヒカリが抱きとめるのを見ていた。ク国の王はそうやって、彼女が記憶を取り戻したときも支えたのだ。
オズバルドに抱き上げられた彼女は、肩を並べて話すときより小さく見え、ベッドへ寝かせてもなお離れがたかった。
献身的な振る舞いに共感していたし、それによってたしかに彼女が多くの人を救ったことに、静かに感動していたのだ。
それまでの印象に上書きするように尊敬が芽生え、敬愛となり、そこからさらに変容していった。
オーシュットとキャスティが森に入った時、薄暗い闇がキャスティを襲ったと聞いた。その話の詳細は彼女自身の口から語られたわけだが、話を聞いたテメノスが思ったことといえば、この人は強くあるほどいつか儚く切れてしまうのだろうということだけだった。
弦を弾けば美しい音色が響くが、弾き続ければ摩耗する。
そんな一面が彼女にあり──それが記憶喪失に繋がったのではないかと閃いたとき、まず、首を振って考えを否定した。
しかし、気付いてしまえば見逃せないものでもある。仲間達を見つめる横顔を盗み見ては、考え、テメノスには分かりようのない儚さだから惹かれるのだろうかと──いつの間にかそれが他より強い感情になっていた。
美しい弦が切れてほしくないくせに、その音が最も美しく響くようつま弾きたいとでもいうように、その感覚はやがて思考を侵食する。
恋は盲目というべきか、傲慢というべきか。
なんだっていい、どうせこれは示すことなく抱えるものだ。
そう思っていたはずなのだ。


聖堂機関に連絡を済ませたあと。テメノスは聖堂機関から案内された宿屋の様子を見に行き、空いていた一室を予約した。ベッドが二つあるということで、本来なら部屋を分けるべきだと分かっていたが、まあ彼女のことだから警戒などしないだろうと一つにした。
ただ、彼女がもし……二人きりを気にするようなら、その時は聖堂機関の部屋を借りようと考えた。
鍵を受け取り、外を出歩く。この町はクリックや仲間達と歩いた町だ。懐かしい、旅の思い出が詰まった町。
「また、報告に行きましょうか」
空へ、穏やかな海風が流れていく。
気の向くままに町を散策していると。
「あの……俺、キャスティさんの考えが好きで、ずっと一緒にいたくて」
「それって、薬師として人を助けたいということ?」
「あ……えっと、俺、キャスティさんに見てもらえるなら、どんなことでもやります!」
「動機はなんでもいいのよ。でも、患者さん一人ひとりに向き合う気持ちは持ってほしいわね。……エイル薬師団に入ってくれる人を探してはいるの。あなたはどう?」
噛み合わない会話に足を止めたテメノスはすぐに裏手に回った。道が狭ければ、斧は振るえない。あのまま路地裏に連れ込まれては、流石のキャスティも動きにくいはずだ。
幸いにして、男はキャスティの鈍さに頭を抱えて去っていった。
名前を呼ぶと、やはりよく分かっていないのだろう困惑顔の彼女が振り返る。忠告を唱えたが、ぴんときていないようだった。
やはり不安だ。背中を押して彼女を大通りへ戻し、酒場へ向かう。
さて、彼女について忘れてはならないことが一つある。
キャスティという女は素面の時から恐ろしいほどに男のツボを突くのが上手い上、酒が入ると隙が増える。つまり、酒場で酒を飲ませてしまうと、必然的に男の目を集める。
彼女にとっては一仕事終えた後のねぎらいであるので、控えるよう忠告するのも忍びなく、……つまり今、テメノスは理性を試されている。
「それで最後にしてくださいね」
一言二言言い返されたが、その後、彼女はジェラートと果実水を頼んだ。頭を冷やしてから戻るらしい。
上着を渡し、鞄と杖を片手に彼女を連れ出す。
細く、小さな手のひらだ。ひとたび斧を振るえば大型の魔物をも圧倒する力を持っているはずなのに、不思議なものだ。
「……ニューデルスタも夜が賑やかだけど、ここもまあまあ活気があるわよね」
知り合いの多い町だという自覚がないのか、彼女は手を振り払わない。デートか? などとこちらを探るような会話もあちこちで聞こえていたから──このまま同じ宿に入ったとなれば、言い訳は通用しないだろう。
外堀を勝手に埋めている自覚はある。
だが、彼女には言わない。
「そうですね。……キャスティ、ちゃんと前を見て歩いてください」
「歩いているわよ。だって……あら、いつの間に」
ようやく気付いたようで、キャスティが手を離そうとする。
「迷子になっては困りますから」
強く握り返すと、苦笑された。
「……私が子羊なのね」
察しが良くて助かるが、本当のところはおそらく伝わっていない。そのまま何も気づかずにいてくれと願いながら、部屋まで連れ込む。
成功などしてほしくはなかった。少しは警戒をしてくれないだろうか。全くどうしてこの人は。文句を抱きながらも喜ぶ顔を見ると絆されてしまい、先にシャワーを進めた。
(……どうしたものですかね)
紙芝居で間をもたせるか。それとも。
散々考えたが、最悪の流れになった場合に備えて、宿の主人に朝食を分けてもらうよう、部屋の外に出た。

そして。
結局、彼女は寝てしまった。
テメノスが手を握ったことで安心したのだろう。その寝顔は穏やかだ。添い寝のつもりではなかったのだが、これもまあ想定していたことではある。
空いている左手を口元へ添え、考え込む。
キスだけで踏み止まることができてよかった。彼女がこういったことに鈍いだろうことは推測していて、ほとんど躱されるかと思っていたからこそ、先程の問答と触れ合いが幻のように思える。
『言ってくれたら、変わるかもしれないじゃない』
──あんなふうに煽られるとは思いもしなかった。
好きだと言い続ければ、好いてくれるのか。それは他の男に対してもそうなのか。
弱々しく手を握られ、顔を上げた。彼女の手が離れる。背中を向けられる。
しばし月色の後頭部を見つめていたが、ため息をついた。
ベッドを軋ませぬよう、重心移動に気を付けながら彼女の髪を背に払う。覗いた項にそっと口づけてから自分もベッドに横たわった。
寝られるかはともかく、身体は疲れていた。


翌朝、目覚めると隣に彼女の姿は見当たらなかった。
朝食を載せたトレイはテメノスが置いた場所にあり、料理も手を付けた様子がない。
昨晩使った茶器もそのまま残っていた。
シーツに触れる。体温は残っていない。
念の為水場も確認したが、姿はなかった。
「おはよう、起きたのね」
探し人自ら部屋へ戻ってきた。いつもの格好だ。こんな朝早くから診てきたのだろう。勤勉なことだ。
「おはよう。よく眠れましたか?」
「ええ。おかげさまで」
変わりない笑顔に肩透かしを食らって、視線を外す。
とにかく服を着るかといつもの神官服を手に取ろうとして、止められた。
自らも上着とヘアバンドを外しながら、キャスティは微笑む。
「暖かいから、外で食べましょう?」
「外、ですか?」
「そう。宿のご婦人に薬を調合したら、裏手にバルコニーがあるから、使うといいって鍵を貰ったの」
カナルブラインは町の半分が海に突き出しており、窓の外が海である家も少なくない。
朝食を持って彼女についていくと、なるほど庭のような空間が裏手にあった。荷物置き場として使っているらしく、テーブルと椅子、薪や樽が置いてある以外、なにもない。
穏やかな波の音が響く。
「休日はここに座って夫婦でゆったり海を眺めるんですって」
「それはなんとも良い過ごし方ですね」
「でしょう?」
食器の音を最小限に抑えてテーブルに並べる。冷めたスープにスライスしたパン、チーズに燻製肉、あとはラディッシュやトマトなどの果実が並ぶ。
食事中はいつも通りだった。紅茶を作ってくるわとキャスティが席を立ち、少しの間一人になる。
風が髪をさらう。この程度の風なら、今日、出航するだろう。道具を調達して乗り込めば、後は船が運んでくれる。
「お待たせ」
「ありがとうございます」
キャスティが小さなトレイに紅茶を載せて戻ってきた。
ハーブティーのようにみえるが、爽やかというより、薬草らしい香りがする。一瞬飲むのを躊躇ったが、彼女の淹れてくれた紅茶が不味かったことはないので、一口含んだ。
「夫婦になったら、こんな感じなのかしら」
対面に座り、海を眺めながらキャスティが呟く。彼女はテメノスの視線に気付いて、ぱち、と瞬きをした。
「どうかした?」
「……いえ」
昨日の会話を振り返ってみるが、了承を得た記憶はない。
「キャスティ」
「なあに」
「私が忘れているのでしたら、怒ってくれて構いません。が……昨日、あなたは何も言っていませんよね?」
「なんのこと?」
「……」
本気で思い当たらないのか、とぼけているのか、判別できない。テメノスはなんでもないような顔を見せながら、内心、必死に考えを巡らせる。
どちらだ。これは。
その間にもキャスティはのんびりと紅茶を飲む。
「あっ、ごめんなさい。茶葉を間違えたみたい」
「そうですか」
「薬みたいに飲みにくいでしょう? すぐに淹れ直すわね」
「ええ……」
てきぱきと小さなトレイに茶器を戻すと、キャスティは足早に室内へ戻ろうとする。
「待ちなさい」
トレイとその細腕の両方を手で掴む。彼女は顔を見せてはくれなかったが、その耳は妙に赤い。
そんな姿はこれまでに一度も見たことがない。
つい今の今まで、平然としていたはずの彼女の腕は冷え切っていて、吐息と共に微かに揺れた。
「な、なにか忘れ物でもしたかしら」
ぎこちない返答。なるほどそういうことかと納得し、苦笑した。
「好きですよ、キャスティ」
「……」
「言えば、返してくれるんでしたよね?」
「…………どうだったかしら」
こちらへ腕を引くと、キャスティが観念して振り返る。珍しく目元に赤い化粧をさして、綺麗だった。
トレイを脇へ置き、両手を繋ぐ。あやすように揺らして促せば、はあ、と大きなため息をつかれた。
「やりたいことがあるから、一緒に居られないわ。それでもいいの?」
「構いませんよ。私もこうして仕事であちこち出かけますから、それと同じことでしょう」
「……寂しくなったら?」
「手紙を書きます。場所が分かれば、私の方から会いに行きます」
「困ったわ。断ろうと思ってたのに」
ふっ、と彼女は吹き出してそう言った。
「あなたのそういう素直なところ、好きよ」
「おや? 間違えていますよ、キャスティ」
「え? なにかしら……」
空気が緩んだ隙に逃げようとする彼女の手をやはり掴んだまま、じっと見つめる。促されたように首を傾げて考えていたキャスティだったが、不意に回答を閃いたようで、はっと目を逸らした。
少しの間、白波が二人を見守る。
「──あなたのことが好きみたい」
「よくできました」
「もう……」
彼女を手伝い、トレイを持つ。店の主人へ戻すものと、二人で飲むための紅茶を載せたものとを持ち上げ、キャスティに扉を開けてもらおうと呼びかけ、動けなくなる。
「テメノス」
一瞬のことだった。肩と顔が下に引き寄せられて、唇に柔らかいものが触れた。薬草の残り香が鼻腔をくすぐり、彼女の小さな笑い声が耳に残る。
「両手が使えないときにしないでください」
「そんなこと言わないで。嬉しくないならやめるから」
ズレた返答をするのは、彼女自身がよく分かっていないからだろう。
「そうではないから困るんですよ」
そして自分も、結局素直に嬉しいとは言えないまま、後に続いて部屋へと戻ったのだった。

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後書き的な
おっっっかしいな……えっちなことをしてもらうはずだったんですが?なぜ?
キャスがテメを持ち上げて落としかけてたのですが、まあうまいことまとまりました。よかった。

ところでキャスに「もう!」て言わせたくなるんですが、これはオシュへの態度からの妄想な気がしてます。

そしてこの話はここで終わってしまったのですが、続きを少し書いて本にしようかなって思います。船の上での話というか。

で、やっとこのあとテメが、へーそういうなら本気でいかせてもらいますかねみたいな感じで、トトハハ島のあの……アグちゃん2章のところにキャスを連れ込んで仲良くする感じの2冊目を作りたいです。

うまくかけるかわからないのですが、(見ての通り小説書くのがヘロヘロになってきてるので)、テメがキャスに注ぎ込んだ分、キャスもテメを救ってる……という感じを書きたいなと思ってます。書けるかわからないのでここに書き残しておきます。
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小説