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ヒカ・キャス・テメに対する煩悩かべうち

No.280

#ヒカキャス
#ヒカキャス長い話
前からの続き。「友呼ぶ」シリーズからさらに恋愛色を強めたお話で、漫画で描こうと思ってたせいでヒカ→キャスの流れを端折ってますがそのうちその話も出てきます。

セリフ少なめですがトラベラーズはみんないます。


ヒカ4章後、キャス3章後の時間軸で船を手に入れた実プレイからの妄想で……定期船じゃなくなったので、プライベートな時間も多く取るようになったんじゃないかなあみたいな、そんな雰囲気をこれから出していくと思います。


ヒカリ達八人の旅人が海を行き来することに慣れた頃、使い慣れた定期船に別れを告げるときがやってきた。
トト・ハハ島の造船所にてパルテティオが買い付けた大きな船がこの度完成したのだ。
青い帆に、青い蛸の紋様。定期船をも凌ぐ大きさの船は、八人が乗るにしてはやや豪華だ。
「おお……!」
「見事だな、パルテティオ」
「な! いやあ、見事なもんだよ」
テリーとの契約書のやり取りを終え、帽子を片手で押さえながら歩いてくる彼と感想を言い合う。ヒカリは女性陣達が梯子を登り終えるまで仲間の白い帽子に視線を注ぎ、オーシュットに呼びかけられてようやく頭を動かした。
「パルティ〜! 海渡ろう!」
「おうよ! ヒカリ、俺達も乗るか」
「ああ」
賑やかな仲間達の声が甲板から響いてくる。縄梯子を上り、船の上に立つと、なるほど感嘆の息が漏れるほどの景色が広がっていた。
「すげえ〜……遠くまで見渡せるぜ」
アグネアとオーシュットが軽やかに駆け回り、ソローネは海を見渡し、キャスティは船の内部を物珍しげに見て回っている。オズバルドとテメノスが上船したところで、パルテティオが一通りの部屋を案内すると言って皆を呼び寄せた。
「こっちが男部屋で、こっちが女部屋だ。食堂はこっちだ……キッチンもあるから食料さえ買い込めば問題ねえだろ」
「助かるわ。航海中は壊血病になりやすいから。料理で防げそうね」
キャスティが気に入ったのは治療室とキッチンだ。
ぶつぶつと船に乗せる食材や調味料を確認し始め、その隣でオーシュットが肉を強請り始める。隣で調理器具を物色していたソローネが、包丁に指を添え、いいね、と呟いた。
「良いものが揃ってる。これもあんたが?」
「まあな。貴族様向けに着工されたものらしくてよ。装飾一つ一つに技巧が凝らしてある。安モンの包丁も悪かねえが……長く使うなら、揃えておいたほうがいいだろ?」
「へえ……。やるじゃん」
口笛を吹くソローネの背後、壁掛けの小棚を見ていたオズバルドが部屋の隅の樽を見つけて渋いため息をつく。
「……酒はあるのにコーヒー豆はないのか」
「挽く道具もありませんし、買い出しに行かれては?」
戸口で仲間を見守っていたテメノスが苦笑と共に提案する。
「倉庫もそれなりの広さでしたね。一ヶ月分の食料は保管できるのでは?」
「じゃあいっぱい買い込もう!」
楽しみを隠さずアグネアが両手を握りこぶしにして意気込む。彼女のまばゆい明るさに負けじとパルテティオが白い歯を剥き出しに笑い返した。
「それなら安心してくれ。船を動かすには人が必要だろ? ついでに食材も頼んでおいた。──一時間もしねえうちに、出航だぜ!」


グランド・テリー号は西へ向かって舵を取った。
ソローネが海図を手に入れ、目指すべき離島を決めたためである。
風が吹き、夕暮れ時の空は朱に染まっていた。この分なら夜も晴れるだろうと航海士が天候を読む。
「おーおー、アグネアも大興奮だな」
パルテティオが口笛を拭いた。その音を上書きするようにアグネアの高らかな歌声が船上に、空に響く。
「素敵ね」
ヒカリがパルテティオと同じくアグネアの舞と歌に感心していると、キャスティがやってきた。食事の準備のためにケープを脱いだだけなのに、夕陽に照らされたその身体の細さが目に焼き付く。
儚く倒れるようなひとではないと理解している。それでも、風に揺れる金髪や薄青の服の裾から覗く四肢がどうにも気になった。
「ご飯の時間よ、って呼びに来たのだけど……歌が終わってからにしましょうか」
「そうだな。お疲れさん、キャスティ」
「ふふ。ありがとさん、パルテティオ」
笑顔が交わされる。二人の仲の良さはこれまでにも見守ってきたので今更何かを思うことはなく、しかし、キャスティがこちらを見て瞬きをしたのでヒカリは軽く首を傾げた。彼女が何かに驚いたように見えたのだ。
「どうかした?」
「いや?」
「あら、そう。……じっと見ているから、話したいことがあるのかと思ったの」
歌を邪魔しないようにと思ったのか、キャスティは言いながら肩と肩が触れ合いそうな距離まで近付き、後半のセリフは一層声を潜めて言った。
姿をみとめるだけで鼓動が早くなる我が身だ。それだけでどうしようもなく緊張を覚え、落ち着き払って返せるまでに数秒時間を要した。
歌が終わる。パルテティオが手を鳴らし、船首で同じく耳を澄ませていたらしいオーシュットが指笛を吹いた。
「見惚れていた」
「え?」
「それだけだ」
心地よい風が顔に集まる熱を冷ましていく。
それからすぐキャスティはご飯のために呼びに来たと皆に声をかけた。ヒカリとは一度も視線が合わなかったが、それが普段と違う行動だと分かるからこそ、先程の言葉が彼女に響いたのだと理解でき、晴れやかな気分で仲間達の後に続いた。

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ヒカキャスに落ち着くのがextraED再会後なので「長い話」としてまったりまとめていきます。

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