#テメキャス #テメキャス「貴方に溺れる」正式タイトル「Dive Into You」の冒頭。自分で校正をかける用に置かせてください。友情出演: オシュ注釈: ジョブ関連や戦闘・力関係の話などは基本的に実プレイベースで話をさせてもらってます。 都合良い感じに英語版の呼び名や詠唱を織り交ぜています。余談: キャスから見たテメがかっこいいとかより美しい人だと私が嬉しいのでそういう描写があります。大事なこと:色々間違ってても実際には修正されるので見逃してください。続きを読む------覚悟しておいてください」夕陽の沈んでいく海を背に、彼は運命を告げるように静かな声を発した。意図するところは分からなくとも、陽の光が銀髪や白のローブの端を輝かせ、まるで淡い光が包むように彼を象った、その美しい瞬間だけははっきりと、キャスティの脳裏に刻まれたことだろう。「……なんの?」かろうじて問い返した声は掠れていた。フ、と指先で隠した口元から小さな笑い声を零してテメノスは答える。「肩肘を張るようなことは致しませんよ──恋人なのですから。ね?」「まあ、そうよね」彼は気付いているだろうか。いま、ほんの少しだけ困ったように笑ったことを。それが、親しい人を亡くして旅に出た、始まりの頃の様子と似ていたことを、気付いているだろうか。(きっと……自覚がないのよね)彼にそんな顔をさせたのはおそらく自分なのだが、生憎とキャスティには思い当たることがない。彼の言う通り、これからじっくり互いの話をしていけば、多少は気付けるだろうか。頬に触れる指先は温かく、眼差しに揺らぎはない。瞳孔の大きさに変化がないことを確認していると、唇を塞がれた。キスされたのだ。「な、なに? 急に」「考えごとをしていたようなので。さあ、行きましょう」いくら新しい関係を受け入れたからと言って、触れ合いにすぐ慣れるわけではない。一歩後退ったキャスティの手を取ると、テメノスは平然と歩き出した。「行くって……どこに」「着替えましょう。まずは」「え?」「お互い、仕事着では気も休まらないでしょうから」提案されるがままに商人の衣装に着替える。そうして降りましょうかと促されるまま、トト・ハハ島へ上陸した。一、男女が付き合うとなると、将来的な話が絡むのが常識だ。結婚はするのか。子供は、住む家は、等々。ソリスティアでは性別の違いが収入や職業を制限するようなことは少ないが、テメノスはフレイムチャーチに自宅を持ち、キャスティはいわゆる流れ者であるため、定住となると、どうしても彼の家に上がり込むことになるだろう。だが、キャスティは一つ所に留まるつもりがないため、定住するという選択肢はできるだけ選びたくない。それこそ、子供が生まれ、育てるとなった場合に考えればいいわけで、つまるところ問題は、テメノスが本当に婚姻関係を結ぶつもりがあるのか、ということと、子供を考えているか、ということの二つになる。(年齢で言えば、そういう年頃ではあるけど)見てきた限りでは、結婚し、子供を生み育てる年齢も地域によって様々だ。キャスティは記憶によれば今年二十九なので、身体的には適齢期ではある。(なんて、考えすぎかしら)生まれてこの方、誰かと付き合ったことなどない。口説かれた経験こそあれど、キャスティは己のしたいことが明白であったので、あまりそういった気持ちを抱くことなくここまできてしまった。だから、むしろテメノスに対してそういう気持ちを抱いている今の方が珍しく、どう考えればよいのか分からない。「ねー、聞いてる? Mom?」「ごめんなさい、ぼうっとしてたわ。なにかしら、オーシュット」「いーよ。それでさ、これをすり潰すんだっけ?」「そうね。ドクダミの実はすり潰して乾燥させると、色んな怪我や病気に使えるわ」トト・ハハ島西側──ケノモ村にて、キャスティはオーシュットと村の子供達と置き薬の調合を行っていた。東にあるリゾート地トロップホップでの滞在を予定していたが、コテージの予約が二日後からしか取れないとのことで、それまでケノモ村に世話になることにしたのだ。緋月の夜を経て、同じ島民として人間たちが獣人に歩み寄りを見せており、キャスティ達以外にも数人、獣人達と交流する姿が見られる。オーシュットと再会したのは到着して翌日のことだ。「うわっほーーーい! みんなー、ただいまー!」海の魔物の背に乗り、大波を引き連れ彼女はマヒナと共に戻ってきた。ジュバをはじめ獣人達はそんなオーシュットを笑顔で迎え、キャスティも一緒におかえり、と告げる。「あれれ? なんでキャスティがここにいるの?」「テメノスと東大陸へ向かう途中なの。ここで休んでから行こうという話になって」「へえー。まあ、なんでもいいや。会えて嬉しい!」「私もよ……会えて嬉しい」再会の抱擁をして、思う。一度は別れなくてはならなかったが、こうしてまたそれぞれ会いに行けばいいのだと──それが難しくとも、努めることはできる。ウッドランドの森で闇を打ち払ってくれた小さな身体を抱きしめ、キャスティは頬をほころばせた。オーシュットと再会してからは、狩人の衣装に着替え、彼等と一緒に行動した。なお、テメノスはというと、キャスティの滞在先を決めると、調べたいことがあるからと言ってナ・ナシの里へと向かってしまったので、彼はまだオーシュットと再会していない。「キャスティー! 狩りに行こうよ」「いいわよ。薬草採取もしたいところだし」オーシュット達の背を追いかけるように浜辺を歩く。彼女達との再会はただの偶然なので仕方ないものの、テメノスもここにいれば良いのに、と思った。オーシュットを前にした彼は、どこか肩の力が抜けていて気安さがにじみ出ていたから。それはオーシュットがいつだって裏表なく接し、テメノスを信頼していたからだと見ている 。彼女は人の感情や機微に聡い。それは人間が何かを理解するという行動と似て非なるものではあったが、オーシュットがよく利く鼻で察知したものはテメノスも警戒している相手であることが多く、ソローネと並んでいい助手だと眺めていた──またあの三人の後ろ姿を見たいものだ。薬草を採取し、オーシュットに言われるまま浜辺で待機する。最近小さな魚を食べ過ぎな海の魔物を狩るということで、オーシュットが追い込み、キャスティと挟み撃ちする予定だ。日は既に傾きはじめ、海面がきらきらと光って眩しい。一点の影のようなものを薄目で追いかける。ズアッと突然海が山のように起こり、大きな魔物が現れた。ウミボウズ、というのだったか。それだけで荒波が立つ。跳躍でなんとか波をやり過ごし、オーシュットとタイミングを合わせて目を狙った。捕獲していた魔物達も総出で怯ませる。ヒカリやアグネアがここにいてくれたら、多少は手数が増やせたのに。そう考えてしまって、苦笑を隠せなかった。矢を放つ。「オーシュット!」「うがあ!」一際大きな咆哮が響く。分かっていても、びりびりと肌を震わすその気迫に怯えてしまう。「──手を貸しましょう」「テメノス!」淡い緑の光が辺りを包み込む。オーシュットの嬉しそうな声が浜辺に響いた。それから三人と獣人の加勢を受け、狩りを終える。「キャスティ、オーシュット、お疲れ様です」「久しぶり!」再会の抱擁を済ませるとオーシュットは解体作業に取り掛かる。もう一人の獣人も手伝うと言ってテメノスの側を離れ、解体を手伝うには頼りない二人が残された。「これを」おもむろにテメノスが咳払いをして、着ていた学者のコートをキャスティに羽織らせる。「そのままだと風邪を引きますよ」なるべく浜辺に居たつもりだが、海水を吸って衣服は随分と湿っていた。気候は温暖であるから気にしていなかったが、水気があるとあっという間に体温は冷えやすい。「そうね、村へ戻って着替えるわ。オーシュット、他に手は必要?」「頼んだー!」穫った魔物は皮と牙、肉と内臓に分けられた。戦闘の影響で浜辺に打ち上げられた魚も獲り、食べきれないということで人間達の里にも食糧を分けに向かう。一息ついた頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。アグネアが披露したことで踊りが定着したらしく、焚き火を囲んで数人が踊り始める。「はー食った食った。お腹いっぱーい」「よく食べたわねえ」膨らんだ腹をぽんぽんと叩くオーシュットを見て、フフと笑う。果実を絞ったジュースを飲んでいると、ある女性の獣人に呼ばれた。「キャスティ、おどる」「私?」狩人の衣装は濡れてしまったので、今は踊子の衣装を着ていた。アグネアの服装と似ていたから、誘われたのだろう。オーシュットに、いいね! と背中を押されて、焚き火の前に立たされる。「え? あら」手を取られるままに身体を動かす。踊りと言うにはあまりにぎこちないものだったが、彼等の余興にはなったようで、少しすると解放された。テメノスとオーシュットが会話をしていたので、そちらへ戻る。「戻ったわ」「おかえりー」「おかえりなさい。上手でしたね」「そうかしら。……変じゃなかった?」「いいえ、そんなことは」オーシュットの隣の流木に腰掛けたキャスティだったが、ふと、狩人の彼女にじっと見つめられていることに気付き、首を傾げた。「どうかした? オーシュット」「んー……なんでもない」オーシュットは上半分の際に沿うようにしっかり半周分眼球を動かして迷い、しかし口を噤んだ。マヒナがホロロ……とか細い声を出す。「二人はいつまでここにいるの?」「一週間だから……あと三日は居る予定よね?」「明日からはコテージ泊にはなりますが、まあ、島にはまだ居ますかね」「じゃあ、また寄って」背伸びをしながら答え、オーシュットは立ち上がる。「今度はテメノスも、三人で狩りに行こうよ」「私もですか? 困りましたね……」「メシも食わせられないオスは、直ぐに愛想を尽かされるって言うよ」「……覚えておきます。やれやれ」テメノスが本当に困り果てたように肩を落とすので、オーシュットはそれを快活に笑い飛ばし、がんばれ、と背を叩いた。「師匠が呼んでる。行ってくるね」「いってらっしゃい」キャスティと抱擁を交わし、マヒナを連れて彼女は元気に岬の方へ走り去っていった。「……今、あなた、釘を刺されてたわよね。どういうこと?」「あなたが踊っている間に、こう言われまして」夜風を受けて、テメノスの銀髪が揺れる。焚き火の明かりで淡い暖色の影が落ちるその顔に苦笑いのような、渋いような表情を乗せて、彼は説明を始めた。キャスティが手を取られて焚き火の方へ連れて行かれる。オーシュットがいいぞいいぞと手を叩いているので、テメノスも特に何も言うことなく彼女を送り出したわけだが。「ねー、テメノス」「はい」「キャスティからテメノスの匂いがしたよ。なんで?」それは唐突な問いかけだった。真っ直ぐにこちらを見つめる瞳に、どこまで本当のところを告げるかを迷う。「……先程上着を貸しましたから、匂いが移ったのでは?」「違う。その匂いじゃない」(これは……)彼女自身も気付いているのだろうと思った。ただ、それならもう少し違う聞き方をするような気もして、判断に迷う。嘘はつきたくないが、かと言って本当のところを明かすには、日が浅い。「番になったの?」直接的な問いを重ねられて、逃げ道がなくなる。皮肉にも、その分、回答しやすくなった。「……夫婦になった、という意味なら、違いますね。人間には番う前の段階があり、これを恋人といいます」「番わないのにコイビトなの?」「そうですねえ、そういう場合もあります。ちなみに、オーシュット」「うん」「獣人達は番うとどうなるんです?」「ん~、村のみんなでお祝いして、森に籠もって、一年くらいして子供を連れて返ってきてたかな。メスにはオスの匂いが染み付くから、すぐに分かるよ」「……なるほど」人間でいう婚姻が、獣人における『番う』という言葉になるようだ。人間語を教えたのは師匠(ジュバ)だそうだが、その辺りはよく考えて学ばせたらしい。「話を戻すと、彼女から私の匂いがしたから、そうだと思った、と……。いいでしょう、白状します」ため息をついたはずなのに、オーシュットは耳をピンと立てて迫る。彼女の聴力ならば聞き逃すことなどないだろうに、わざわざ近寄ってまで聞きたがるのは、なぜだろうか。テメノスはオーシュットの純真無垢な一面を好んでおり、旅路を経て別れた今でも信頼を置いている。だから、祝いたいだとか、喜ばしいだとか、そういった感情的な話ではなく──推測だが、誰かが番ったことで開かれる祝宴だので旨い料理が食べられるといった──食欲的な意味での好奇心だろうと期待して、続きを語った。「定期船では寝床が少なくて、どうしても一緒に寝ざるを得なかったんです。そのせいで匂いが移ったんでしょう」「なんだ~。残念」途端に耳が垂れ、渋い顔をするのでテメノスは思わず笑ってしまいそうだった。「何が残念なんです?」「新しい番ができたら、みんなでウマい肉を食べて祝うんだよねー。あーあ食べたかったなあ……」「……それは残念でしたね」マヒナが肉を啄む姿を横目に、オーシュットは、まあいっか、とどこからか肉を取り出す。「でもさ、テメノスはキャスティのこと好きだよね」可愛らしい外見とは裏腹に豪快な食べっぷりで骨付き肉の半分ほどをたいらげ、唇に付いた油を舌で舐め取る。彼女は人間よりも大きな瞳でテメノスを見つめて、揶揄するでもなく、淡々とこう言った。「私のMomを泣かさないでね」──この、風格。テメノスとは十は年が離れているはずで、体格も小柄だが、力関係で言えば圧倒的に彼女の方が上回る。例えばこれをソローネやアグネアに言われたなら、テメノスも軽い口ぶりで答えただろうが、オーシュットにおいてはそれができない。肌が緊張し、言葉を選ぶための沈黙を返してしまう。「……肝に銘じておきます」「肝?」「しっかり覚えておくという意味ですよ」ようやっと答えれば、普段通りの彼女らしい反応があった。それから肉を勧められ、食事と雑談を楽しんでいるところに、キャスティが戻ってきた。「じゃあ、オーシュットには話しちゃったのね」「隠すようなことでもないでしょう」「……まあ、そうよね」どこか言い聞かせるように頷いたのは、まだ、新しい関係性に馴染めていないからだ。好きではあるし、手を繋がれると安心するのは間違いないが、周りから見て変ではないだろうかと意識してしまう。実のところ、コテージ泊までの間、テメノスと別行動でほっとしていたのだ。恋人となった自分達の姿を仲間に見られるにはまだ緊張するし、特にオーシュットにはママだなんて言われているから、余計に気を使う。でも、その彼女に一番に知られてしまった。態度に変化はなかったから、気にしすぎだったのは間違いないとして、やはり気恥ずかしい。「慣れませんか?」気付けば、テメノスが隣りに座っていた。旅路の間ほとんど彼は学者の格好をしていたので、一層、恋人として気遣われている今の状況に照れてしまう。「……ええ……」「大丈夫ですよ。明日から嫌でも慣れます」「い、言わないで……!」「フフ」今夜はケノモ村の宿に泊まるから、二人きりにはなれない。だが、明日からのコテージ泊では間違いなく夜は二人きりとなるだろうし、あわや同衾となる可能性の方が高い訳で。(参ったわね……)キャスティは今更ながら、テメノスの言う『覚悟』の意味を理解し始めていた。畳む favorite やった〜! わーい! 嬉しいです! ありがとうございます! 感謝! 2024.12.4(Wed) 21:21:24 小説 edit
#テメキャス「貴方に溺れる」
正式タイトル「Dive Into You」の冒頭。
自分で校正をかける用に置かせてください。
友情出演:
オシュ
注釈:
ジョブ関連や戦闘・力関係の話などは基本的に実プレイベースで話をさせてもらってます。
都合良い感じに英語版の呼び名や詠唱を織り交ぜています。
余談:
キャスから見たテメがかっこいいとかより美しい人だと私が嬉しいのでそういう描写があります。
大事なこと:色々間違ってても実際には修正されるので見逃してください。
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