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ヒカ・キャス・テメに対する煩悩かべうち

No.385

#同軸妄想
#テメキャス
#テメキャス短い話

鎮魂祭でアグちゃんが踊ったあとにヒカくんがhotだった、て褒めてるのを、遠くから眺めてしまうキャスと、たまたま近くに居てそれに気付いてしまったテメ。
これまでのネタとは別軸の妄想。

キャスティ」
名前を呼ばれてからようやく、見つめすぎていたことに気付いた。
「なに? テメノス」
互いに物思いにふけって周りが見えなくなるたちなので、聞き返すことはよくある。
「散歩に出かけませんか。二人で」
「……どうしたの? 急に」
「あちらの方に、見晴らしの良い高台があるそうです。この──提灯でしたか、これは高いところから眺めても綺麗に見えるのではないかと思いましてね」
「誘う相手を間違えているんじゃない?」
くす、と軽やかに笑いながらキャスティは言葉を返した。
事実、彼と仲が良いのはソローネやオーシュットだ。年が近いせいか、キャスティとは付かず離れずの関係を築こうとしているように見え、こちらもそれに応じるつもりで言葉を交わしてきた。
テメノスは肩を竦めて、しかし微笑みを浮かべたまま踵を返す。
「それは来てみれば分かることです。行きますよ」
珍しく強引に話を引き取るので、仕方ないわね、と後をついていく。
風にク国の旗がはためく。篝火の灯りを頼りに高台までやってくるとテメノスは先程までアグネアが踊っていた舞台を指した。
「いい眺めですねえ」
「そうね」
確かに美しい景色だ。橙や朱色の灯火が町を照らしている。赤い屋根や土壁に暖色の色が反射して、目に優しい。
長い黒髪に緋色をまとうヒカリの姿をその中心にみとめた。民に慕われ、仲間に囲まれた彼は、凄惨な戦の傷をも受け止め、穏やかな表情でそこに立っている。
「ここからなら、誰を見ていても分からないと思いまして」
「……そんなに分かりやすいのね、私」
咄嗟に跳ね除けたくなってしまった心を制して、静かに返す。
「あなたにしては珍しいことをするものね、テメノス。……そんなに見ていられなかった?」
「というより、悟られないように気にしているからこそ、分かりやすかったといいますか。……私には分かりませんが、無理に抑えつけない方が良いとも聞きます」
キャスティはため息をついて、塀の上に頬杖を付いた。
不躾に恋心に触れられたことへの反抗心は既に失われ、反対に理解してほしいと甘えたくなる心が芽生えつつあった。
「ありがとう……。あなたの優しさに甘えることにするわ」
だからこそ、意識して口を閉ざす。
いくら多くの人達の悩みを聞いてきた神官だからといって、仲間相手にこのような悩みを打ち明けられるほど、分別がないわけではない。
テメノスは静かに塀に背をもたれ、空を眺めていた。立ち去ってくれても良かったし、そう言っても彼は怒らないだろうと思ったが、言ってしまうとそれだけ恋心が強いのだと伝えてしまいそうな気がして、何も言えなかった。


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