神様の悪戯
前書き
本作には日本語ボイス・日本語テキストの他に、英語ボイスおよび複数の言語でのテキストが存在します。
言語が違えば同じやりとりでも文脈が異なり、声質が変わればそのキャラの持つ雰囲気や口調も変化すると考えられます。
この作品は、日本語版のテリサイと英語版のテリサイは、それぞれ性格や口調は異なるが、
根っこの考え方や信念、価値観は等しいとして書きました。
何が言いたいかというと、違う言語で話す彼らが出会ってやいやい会話してさらにはちょっとえっちなことしてくれたら最高だよなあってことです。
自由行動をしていれば、町中で仲間とすれ違うことは多い。仕事や本人の性格上、人の集まりやすい場所の方が選ばれやすいためだ。無論、そうではない仲間もいて、雪豹リンデを連れ歩く狩人ハンイットはもちろん、名の知れている剣士オルベリクもまた場所を意識する必要がある。
さて、唯一そういった制限のない学者サイラスは、この日、本を取り扱う商人を探して大通りを歩いていた。
ストーンガードからそう遠くない町で、山の裾野に家並みが広がる。道は整然と造られていて、大通りには細い路地がいくつも接続していた。
(おや)
人混みの中、石造りの町を歩く彼の目に留まったのは紫のストールだ。商人ではない。仲間のひとり、盗賊テリオンである。
彼のまとう紫色は目立つようでいて、不思議と誰も視線を配らない。当たり前に景色に溶け込むことで、悠々と他人の持ち物を盗み歩く。それが彼の過ごし方だ。
紫色は大通りから路地へと消えた。──仕事が終わったのだろうか?
サイラスは思わず、後ろ姿を追う。
テリオンは八つ年の離れた青年で、驚くべきことにサイラスと恋人関係にある。好きあってもう一年は経つというのに、新鮮な気持ちで驚くことができるのはサイラスの性格ならではだが、相手の方もそれを好ましいと感じているらしく、二人の仲は
何が言いたいのかといえば、このときサイラスが何気なく追いかけたところで、テリオンは彼を咎めたりはしないし、むしろそれを聞いて苦笑すら見せるほどには甘い。
ゆえに、サイラスは自然な成り行きでテリオンの後を追い、路地へと入る。少し行ったところに、あたりを見渡すテリオンの後ろ姿を見つけた。
迷子にでもなったのだろうか。かわいらしいところもあるものだと微笑ましく思いながら、甘やかな声で恋人を呼ぶ。
「テリオン」
しかし、呼びかけたところでふと察した。
「what? you ...Cyrus?」
──彼は、自分の知るテリオンではない。
聞いたことのない発音に耳を疑い、思わずまじまじとその男を見つめる。
テリオンと同じ外見の彼は、表情こそ変わらないが大袈裟に額を押さえて天を仰ぐと、突然、大きな声で笑い出す。サイラスの知るテリオンなら、声を立てずに笑うことのほうが多いので、その違いに困惑した。
機嫌よく笑いをおさめた盗賊は卒ない動きで近寄り、面食らう学者の肩を抱く。目線を無理やり揃えるような力加減に戸惑う。
「キミは……テリオンではないね?」
「uh──そうだな。何一つ理解はできないが、俺はあんたを抱かないと元の世界に戻れないらしい」
「何を、」
言葉が分かるようになったのは、一瞬の隙に唇を掠め取られた後だ。自然な流れでそのまま顎を引き寄せられ、慌てて胸板を押し返す。
「誰だそいつは」
馴染んだ声に安堵すると共に、新たに緊張感を覚えた。おそらくこの声は、サイラスの知るテリオンのものである。
振り返れば、殺気立ったテリオンがこちらを睨んでいる。彼はずかずかとサイラスと盗賊の間に割り込もうとして、ぎょっとその動きを止めた。咄嗟にサイラスを見たのは、なにか知っているのではないかという思いからだろう。
「なにかの幻影か?」
言いながらサイラスの腰を抱いて、盗賊から引き剥がす。
「いや。間違いなく、実在する人物だ。自分と似た人間がこの世に三人存在するとはよく聞くが……まさか本当にそうだとは」
「……トレサの眉唾話だろ、それ」
盗賊は無言のままにテリオンとサイラスのやり取りを見守っていたが、サイラスと視線が合うと、にこやかに笑う。二人が困惑するほどの綺麗な微笑みだ。
「こう見ると、キミは綺麗な顔をしているよね」
「藪から棒になんだ」
「思っていたことを言ったまでだよ。……それで、改めてキミの名前を聞こうか」
水を向けると、盗賊はサイラスの手を取り、芝居がかった仕草で甲に口付ける。
「Therion」
「……薄気味悪い。魔物か?」
ベシッとテリオンがその手を叩き落とした。
「なにか事情があるようだ。名前が似て聞こえるのもそのせいだろうか」
「そのあたりはあんたのほうが詳しいだろう、学者先生」
「? なんだ、言葉が……?」
テリオンには盗賊の言葉が通じないらしい。口付けてもらえば分かると伝えると彼は嫌そうな雰囲気を醸し出した後、人差し指を軽く曲げてサイラスを呼んだ。
耳を近づけようとすると、そのまま口付けられる。人前で何をするのかと肩を掴んだが、生憎と恋人の方はサイラスの往なし方など慣れていて、あっという間に舌の奥まで咥えられた。
「消毒だ」
息も上がるほど散々凌辱されたところで唇が離れる。言い放ったテリオンはジロリと盗賊を睨んだが、サイラスの方こそテリオンを睨みそうになった。不覚にも熱を煽られてしまったのである。
二人のキスを邪魔するでもなく見守っていた盗賊は、ぱちぱちと拍手をすると口笛を吹いた。
「こっちの俺達は随分と仲が良いらしい。あの『教授』が見ていたらなんと言っただろうな」
「こちらの、というと……キミの知り合いにも似た人物がいるのだね」
「話が早くて助かる。──いい子だ」
熱を帯びた身体には、その声は毒のように効いた。
飄々とした立ち居振る舞いはテリオンと似ているようで異なり、その違いが興味を引く。
「サイラス。どうするんだ」
このままではテリオンの機嫌を損ねてしまうと判断したサイラスは、ひとまず仲間たちと遭遇せぬよう別の宿へと二人を案内した。
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「宿で寝たと思ったら町中に居て、手に紙を持っていた……と?」
「ああ」
テーブルに頬杖をついた盗賊は、それ以上の説明は無理だと言わんばかり手のひらを見せ、テリオンとサイラス二人の理解を促した。
「見知った町のようで全く違う。何を話しているか分かったものでもない。……『教授』に会わなくとも信じざるを得なかった」
古紙に記された文字はオルステラの文字に違いなく──ならばなぜ先程、発語は理解できなかったのかという疑問は残るものの──彼の置かれた状況を読み取ることができた。
曰く、『この世界の恋人と交わることで元の世界に戻ることができる』。
彼がサイラスに触れたということは、即ち彼の世界での恋人もまた、サイラスなのだろう。奇妙な話ではあるものの、その事実はテリオンの気を良くするには十分だったようで、紙を見つめるその横顔は存外明るい。その単純さは微笑ましい限りだが、文面を信じるならば、この状況はまだ楽観視できない。
「この紙の記すことが本当だとして、……この場合、キミと私がなんらかの交合をなさねばならないことになるが」
「こっちの『教授』も随分と遠回しな言葉を使う」
顔を上げたサイラスに皮肉めいた台詞を返して、盗賊が目を細めた。テリオンもそんなふうに言い返すことが多いものの、どことなく異なって聞こえるので、やはり別人なのだなと、ひとり、サイラスは頷く。
「だめだ」
盗賊が口を開く前に、事を理解したテリオンが割り込んだ。
「しかし、テリオン、彼をこのままここに置いておくわけにもいかない。キミにも影響が」
「らしくないな、学者先生。それ以外の方法があるかもしれないだろ」
恋人となってから、基本的にテリオンはサイラスのことを名前で呼ぶ。それは仲間たちのことを身内と見なしているからだろうと思っていて、故に、久しぶりに聞いた呼称にサイラスは閉口した。盗賊の前では外面を通すつもりらしい。
「方法を探す間、お前らの旅に付き合わせるつもりか?」
「ここで待っていればいいだろう」
「……気持ちは分かるが、察してほしいもんだな。俺がここにいるということは、俺の世界のサイラスはその間ひとりになる。放っておけると思うか?」
「……!」
テリオンが押し黙る隣で、サイラスもまた考える。恋人同士ということを鑑みても盗賊に『帰る世界』があるなら協力はしてやりたいが、方法がいささか奇妙だ。
交わるというのはどこから該当するのだろう。握手でも可能なのか、いや、皮膚の触れ合いはキスで確認済だ──となれば、粘膜に触れる方法を試す必要があるか。
サイラスは淡々と条件の整理を進めるが、肝心のことには思い至ってはいなかった。
「話はついたってことでいいか?」
襟首を掴まれて初めて、盗賊が近寄っていたことに気付いた。気付けたのは同じ速さでテリオンが盗賊の腕を掴み、引き止めたからだ。
「まだだ」
「……オーケー、わかった。なら、選んでくれ。特に指定はないんだ、俺は口でシてくれたっていい」
無言でテリオンが盗賊の頬を抓る。
「なんだよ」
「……クソ、痛みで消える類のものじゃないのか」
「こっちの俺は随分と用心深いらしい」
肩を竦める仕草一つとっても、こうも違うものかと感心する。このとき、サイラスの中に、彼の恋人であるらしい人物への興味が湧いていた。
「……キミに協力するとして、一つ確認したい。キミの恋人とやらは自分の恋人が他の者と交わることについて何も思わないのかい?」
「『教授』は可愛げがなくてね。意識はするが、気にしない」
僅かに伏せられた目が、仄かな寂しさを滲ませる。盗賊はサイラスの視線に気づいても、取り繕うことはしなかった。ベッドに腰掛ける。
「……恋人だなんだと思っているのも、俺だけかもしれない。決定的な単語を使ったこともないしな。お互い、別で満足できることは知ってる」
「それなら、その紙はなんなんだ」
「俺が知るか。……話ができるようになったということは、少なくとも『教授』と同じ見た目のあんたとこの条件を満たせば、元の世界に戻れる可能性があることには違いないだろ」
テリオンの問いかけに盗賊は素っ気なく答えると溜息をついた。見せないだけで不安を感じているのだろう。微かな手の震えを見て取り、サイラスはテリオンを見た。
「テリオン。キミの気持ちも分かるが、彼をこのままにしてはおけないよ」
「あんたな……少しは冷静になれ。今日会ったばかりの人間に身を預けられるような人間じゃないだろ」
「しかし、彼の言う通りなら時間制限があるかもしれない。つまり、恋人だと『互いに思っている』間に条件を満たさなければ、戻れないという可能性が」
言いながらテリオンの肩口に顔を寄せ、後半の言葉を声を潜めて伝える。何かを言わんとする彼の口の前に人差し指をかざし、言葉を続けた。
「先程聞いた通り、彼の話す言語は異なる。私とキミが彼の話を聞き取ることができるのは……キスをしたこと、即ち、皮膚の接触が要因だ。話をしたい相手ひとりひとりに身体的な接触をするとなると、彼も苦痛だろう」
「……その原理でいけば、あんたも危ないぞ」
「ん?」
サイラスの手を握り、険しい表情でテリオンも声を落とす。
「俺があいつの話を理解できるのは、あいつに触れたからじゃない。あんたとキスをしたからだ」
指摘の通りだ。顔を強張らせたサイラスを慰めるように手の甲を撫で、テリオンは言う。
「あいつの言う通りにするにせよ、しないにせよ、不利なのは──サイラス、あんただけだぞ」
盗賊が身を切らずとも、サイラスが代わりを担えば同等の事が起こる。──ようやくテリオンが反対する本当の理由に思い至り、サイラスは心の底から沸き起こる嬉しさに破顔した。
「そういうことなら、キミが私を心配してくれたという今の事実だけで十分乗り越えられるよ」
「……はあ」
「どうして溜息を吐くんだい?」
「あんたにはどれだけ言葉を尽くしたところで、意味がないと分かったからだ」
ストールを解き、上衣を壁の釘に引っ掛けてテリオンは盗賊を見やる。
「……別の世界だとして、こうも似てるんだ。俺の返答も想像がつくよな?」
「ああ、そうだな」
「テリオン?」
サイラスの肩から首の後ろへ手を滑り込ませたかと思えば、テリオンは力強くサイラスを引き寄せた。
開いた口に舌が入り込む。腰を撫でるように片手が身体に触れる。拒む理由こそないが戸惑いのままにテリオンの肩に両手で触れると、ぐ、と股を割り開くように脚が差し込まれ、下から緩く突き上げられた。一度は冷めた熱が、覚えのある動きに呼び覚まされる。
後孔から通じる、幾度となく甘い痺れを感じさせてきた内側が、もう挿入されたかのような錯覚をしたらしく、きゅうと切なく収縮する。
「あ、うぁ、んっ……」
下肢の直接的な刺激に、舌の動きが鈍くなる。テリオンは器用にサイラスの舌を唇で食むと、唾液を啜る。離れると、銀糸がつうとクラバットの上に落ちる。
「なに、を」
たたらを踏んで、口元を覆う。
「言っておくが、イエスと言ったのはあんただ。俺はあいつに触らせるつもりなんてなかった……が、どうしても帰してやりたいと言うなら、その口で満たしてやるしかないだろ」
「え」
「そういうことだ、『教授』。その口、少し借りるぜ」
「ん?」
背後と手前から問答無用で服に手をかけられ──このときになってようやくサイラスは勘違いに思い至る。
盗賊と交われば済むと考えていた己の浅はかさを、悔いることとなったのである。
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自分と似た姿をした男が好いた相手に手を出しているのを目にしたとき、自分達はそう見えるのだと言われているようで気分が悪かった。
世間一般の愛や恋とは違う形だと理解している。サイラスは決して情愛を理解しないわけではないが、強くそれを求める人間でもない。恋人のような真似事を強いているのはテリオンの方で、それが、年の差や立場の違いと相まって、時々、自分を臆病にする。
信じていないわけじゃない。けれど、信じきれていない部分は確かにある。
兄弟との時間を、思い出にしたばかりだ。きっと、コーデリアならテリオンの臆病さに共感し許すだろうが、ヒースコートは一笑に付すだろう。身近な人間を頭に浮かべて冷静さを装うのも、もう、何度目になるかわからない。
「拙いな。口ではあまりさせてこなかったのか?」
「ッ……黙れ」
「悪かった。その様子じゃ言うまでもないか。……なあ、もう少し舌を伸ばせるか?」
くぐもった声が応えて、ややあって盗賊がサイラスの黒髪に指を通す。気を良くしたらしい。サイラスの見えない表情を思いながら、白い背中に歯を立てる。
──あれから小一時間は経過しただろうか。始まりに少し揉めたものの、テリオンがいつもの手管で絆し、深く身を沈めたあたりからサイラスはすっかり大人しくなっていた。
「ッ、ん」
「……疲れたか?」
背後から額を押さえ、俯きかけていた顔を上向かせる。腰を掴んだまま、大腿にはどちらのものかもしれない白濁が垂れていて、汗と一緒にシーツに伝い落ちていた。
いくらそれが帰る条件だと言われても、別世界のサイラスがかわいそうだと言われても、テリオンは自分以外の男がサイラスを犯すなんてことは許せなかった。口淫でもいいと盗賊が言うので、サイラスが協力すると言うので、渋々──本当は身体のどこも触らせたくはないのだ──それを了承したが、ただ黙って見守るつもりは毛頭ない。
結果、恋人と見た目だけは自分とそっくりの他人と己の三人で、この奇妙な性行為に及んでいる。
知りたくなかったことだが、喉を突くと身体が防衛反応を起こすのか、内部の収縮も一層強まり、感じやすくなるようだった。テリオンとの行為で息も絶え絶えになったところに口淫を強いられ、サイラスの方は体力も厳しいだろうが、疲労が重なるほどこちらが嬉しいほどに善がるので、どうにも休めない。
胸側に手を回す。これまでの行為で散々弄ってきたおかげか、乳頭はすっかり丸くぷっくりと大きくなっていた。カリカリと指先で引っ掻くように刺激をすれば身体が微かに震え、きゅうと菊座が狭まる。根本を締め付けられる心地良さに腰を引いて、穿つ。ない乳房を揉むように手のひらで胸を支え、興奮のままに腰を揺すると、ぷは、とサイラスが大きく息を吐いた。
「そんなんじゃいつまでも終わらん。……なあ?」
「あ、ッ……ンン」
盗賊が呆れたような声を出し、サイラスの頬に触れる。猫でも可愛がるかのような手付きで、反り返った男根をその口に挿入する。
テリオンからは見えないが、快楽に溺れたサイラスの瞳は蕩けていて、その口元も盗賊の性器も唾液にまみれていた。苦しいに違いないが、それでも苦しみより気持ちよさを拾うのは、これまで幾度となくテリオンがサイラスを絆し、丁寧に花開かせてきたからに他ならず、しかし当の本人だけがそれを知ることがかなわない。
今も、盗賊の指摘に、煩い、と返しただけ。
こうも違うものかと盗賊は思い、そろそろ終わりに向かおうとサイラスの頭を両手で捉える。
「──噛むなよ」
「! お前、」
「悪いが、見逃せ」
盗賊が喉奥を犯し始めると、とうとうテリオンは身体の動きを止めてしまった。やめろと言ったところで、終わらなければ意味がない。苦しげな声を出すサイラスの頭に、項に、テリオン以外の男の指が這う。
ちりちりと脳が焼きつくような強い怒りを抱いたその刹那、ビク、とサイラスの身体がしなった。息を止めて興奮の波をやり過ごし、ゆっくりと吐く。
ふと顔をあげると、そこにはもう、盗賊の姿はなかった。
「……サイラ、!」
後ろ手にテリオンの手首を強く握ったと思えば、すぐに左手で口元を押さえて咳き込む。涙や唾液や白濁で汚れた顔を隠しながら、しかしその頬を朱に染めてサイラスはテリオンを振り返る。
開きかけた口から、こほ、と軽い咳が出た。
「テリオン、その……これ以上焦らされるのは、流石に、私もつらくてね」
恥ずかしそうな苦笑に、ふと思い至る。前半はともかく、後半はサイラスとの行為に集中しきらなかったあまりに、ただただ彼の身体を火照らせるだけで終わっていた。
疲れたか、上半身をぺたりとベッドに沈めたサイラスの片腕を掴み、半身をこちらに向けさせる。鼻筋に唇を寄せて、悪かった、と謝った。
「いや、私も……」
「これからは遠慮なくできるしな。任せろ」
「え、あッ」
左脚を抱え、萎えかけていた自分のものを無理矢理に中に押し込んだ。サイラスの性器に触れる。テリオンと同じく中途半端に勃ち上がったままのそれを握り込むと、肉壺も適度な締め付けでテリオンのものを昂らせた。
「ああッ! うあ……っい、〜〜〜ッ!」
母音だらけの嬌声に満足しながら男根を扱いて、吐精させる。休む暇を与えず、気分を持ち直した自分の性器で隘路を割り開いた。
「や、まだ、イ──っひぁ、テリ、お、待っ……!」
小刻みに奥を突いて、腕をひっかくようにしがみつかれても、背中に爪を立てられても、肩に噛みつかれても止めてやらない。サイラスが数度身体を震わせてもまだ、この気持ち良さを味わっていたくて揺すり続ける。
「やめ──テリオン! お願いだ、……っ休ませ、〜〜ッうぁ、ん!」
じたばたと涙目で暴れ出したサイラスに口付け、黙らせる。顔を背け、はあ、と大きく息を吸ったサイラスの、その、どうにもできずに困り果てつつも快楽に蕩けた崩れた泣き顔に、あんたが悪い、と呟いた。
片脚ごと腰を抱きしめて、奥へ射精する。散々こらえてきた分、思い切り、気が済むまで出して更に奥へ擦り付ける。
うるさいほどの短い呼吸を繰り返してもたれかかると、
「……こ、んなの、知らな、」
はあはあと荒い呼吸の最中にそんなつぶやきを聞く。
「教えてないからな」
男に犯される心地良さを教えたのはテリオンだ。他人に身体を開くのも、触れ合うのも初めてだという彼に少しずつ手管を教えて、予習をしてくるなと言って、ここまできた。いつどんなときだって初めての表情は自分のものにしたいし、初めての感覚だと言うならテリオンも味わいたい。
他人にやれるようなことは、何もないのだ。
「……もう二度と、軽々しく応えるなよ」
涙を舌で舐め取りながら囁く。分かっているのかいないのか、潤んだ瞳にテリオンの顔を写してサイラスはぎこちなく頷いた。