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ヒカ・キャス・テメに対する煩悩かべうち

No.202, No.201, No.200, No.199, No.198, No.197, No.1967件]

#進捗
ヒカキャスペーパーはなんとかあと1枚線画やったらおしまいです。表紙の絵がどうにもこうにもうまくいかなくて落書き絵になってしまいました。ゆるして。

キャスとテメ中心(?)のやつはあと一コマで終わりです。こっちとソロちゃん中心のやつに好きボイス・好き職業シリーズの絵を突っ込もうかな?と思ってます。

#つぶやき

あ、さっきのが200ポスト目でした。200ポスト記念絵を描こうと思ってたので、描きます。

#雨に花束関連

テメをはじめ仲間を励ましたいなと思うキャスの話……それ未満の短い話でございます。



雪を踏んでいた音がぴたりと止んだ。
洞窟の入口にはつららすら張っているというのに、その中は土の地面が見え、吐く息も白く染まることはない。
しんと静まり返った洞窟。魔物が潜んでいるというのに、驚くほど生き物の音の少ないこの洞窟を通るのはひと月ぶりだ。
「ここの魔物は用心深いぞ。気をつけろ」
「ぶるる……寒くて鼻が凍るよ〜」
「オーシュット、大丈夫?」
キャスティは自分の使っていたマフラーを外し、オーシュットに巻いてやった。マヒナも温めるようにオーシュットの頭の上で体をふくらませる。
「それではあなたが寒いですよ」
「平気よ。どうせ動くもの」
いくらか元気を取り戻したのだろう。テメノスの小言を心地よく受け止めると、ソローネの後ろでアグネアがくしゃみをする。
「おいおい、大丈夫かよ」
「だ、大丈夫だべ……ぶへっ!」
薬師の服の上に更に上着を着込んでいたアグネアは、鞄の中からハンカチを取り出し、鼻をかむと共に足を滑らせる。そんな彼女を細い腕が軽やかに引き止めた。
「危ないよ」
「あ、ありがとう、ソローネさん……」
「……さっさと行くぞ」
オズバルドが最後尾から皆を叱咤する。気を引き締めるアグネアのそばに寄り、彼女にももう一枚毛布を渡すと、キャスティも皆と共に歩き出した。
既に、ヒカリに角灯を渡した。彼を先頭に据え、オーシュットの耳と鼻、ソローネの察知能力を頼りに進む。
洞窟を抜けるまで、八人と一羽の間には緊張感が漂っていた。

テメノスの方では身近な者が亡くなり、ヒカリの方は友だとしていた相手が敵に寝返り、説得のみをして終わっている。キャスティもまた、この先で惨劇が起こらぬよう急ぐ必要があり──旅の目的を果たしたはずのソローネも、未だその首にチョーカーを付けていた。オーシュットも来る緋月の夜のため、トト・ハハ島へ戻らなくてはならない。

旅の終わりが近付いている。
キャスティは苦笑いにも満たない笑みを密やかに浮かべた。こんな調子ではだめね。そう思う気持ちがあった。
旅が始まったばかりのパルテティオやアグネアも、周りを配慮しているのか、いつもより元気がない。
仲間達の身に起こった精神的な疲労を思えば、口数が少なくなるのも頷けるのだが、いつまでもこの調子ではそのうち怪我をする。
「……みんな!」
「任せろ」
オーシュットの声にヒカリが一番に反応した。着ていた上着を放り、身軽な踊子衣装で槍を構える。
現れたのはカミキリバネだ。
オズバルドが詠唱を始め、キャスティも斧を手に持つ。高く跳躍し、斧を振りかぶった。
「I'll chop you limb from limb!」
洞窟──実際は北モンテワイズ山道という──ではヒカリが踊子を、キャスティが狩人となることで役割を分担し、敵の気絶を狙っていた。舞踊なら心得があるとのこと、元々飲み込みも早いこともあり、アグネアとギルドマスターの指導の甲斐合って、ヒカリは槍と短剣での攻撃を巧みに使い分け、戦う。
見事、敵を気絶に追い込んだ。
「今だ!」
キャスティも斧の攻撃で勢いを付けたので、手持ちを弓矢に変えた。
「Rise, fierce blizzard.」
「──A clean shot.」
オズバルドの氷結魔法が展開され、敵の身動きが封じられたところにヘッドショットを決めた。
ヒュウ、とソローネが口笛を吹く。パルテティオが飛び上がった帽子を両手で掴み直すのが見えた。
たんっと着地を決め、息をつく。
「みんな無事ね?」
「油断は禁物ですよ」
回復魔法を唱え、テメノスが残る三人に警戒を促した。
ヒカリが脱ぎ捨てた上着が足下に落ちていたので拾い上げる。
「どうぞ、ヒカリくん」
「ありがとう、キャスティ」
踊りのための服装だから仕方ないとは理解しつつ、腹部や胸元など男性的特徴を見せるため肌が晒されているのを見ると、腹や肺を弱くしないかと心配になる。
「温かくしてね」
皆の様子も見ながら、角灯を預かり、先頭を代わる。
出口は、すぐそこまで見えていた。
──洞窟を抜けると、見覚えのある紅葉の景色が眼下に広がった。
夕陽が一層辺りを朱色に染め、どこもかしこも赤々と眩しい。
紅葉がひとひら舞い落ちる。それを横目に流し、キャスティはふっと角灯の火を吹き消した。
「モンテワイズで休みましょうか」
反対する者は、ひとりも居なかった。


モンテワイズに到着すると、早速宿を取りに行く者と酒場へ駆け込む者とで別れた。
キャスティは前者だ。同行するのは、足を休めたいとのたまったテメノスである。
「八人ね……。ちょうどさっき空いたところだ、そこの大部屋で構わないね?」
「ええ」
リーフを払う。キャスティが八人分の記名を終えて顔を上げると、宿のおかみはやけに冷ややかな目でこちらを見ていた。
「聖火教会の神官にも酔狂な人間が居たものだね」
「誤解です」
「? なにが」
「まあいい、いい。学者の集まりより静かに頼むよ」
手のひらであしらうとおかみはやれやれとカウンターの奥の椅子に腰掛ける。
諦めたのかテメノスは肩を竦め、奥のベッドへ向かうとすぐに腰掛けた。
「着替えてくるわね」
「分かりました。私はここで休んでいますので」
奥の水場へ移動し、個室へ入る。踊子の衣装に着替え、狩人のライセンスと服を鞄にしまい込む。
ヒカリに相談し、あらかじめライセンスを受け取っていた。キャスティと着替えるタイミングが重ならぬよう、彼には酒場の別室を借りてもらっている。
「……よし」
薬師の姿に戻り、いつもの仕事に励みたい気持ちはあるが、今はとにかく仲間たちを元気付けたい。この後アグネアにも相談し、彼女にも協力してもらうつもりだ。
髪留めが外れないように念入りに確認し、化粧を整え、部屋へ出る。
「……クリック、君が見つけた手掛かりは、無駄にはしません……」
テメノスはこちら側に背を向けていた。近くの窓へ向かって祈りを捧げている。
(ああ、そういうこと……)
宿の位置からして、部屋の奥がフレイムチャーチの方角だ。カナルブラインでの彼の振る舞いが思い出され、キャスティは近くのベッドへそっと腰を下ろし、音を立てないよう息を潜めた。
こちらの窓からは穏やかな町の様子が透けて見える。買い物を済ませ、家に帰る人。友人や仲間達と笑い合う者。熱心に議論を交わしている者など、様々だ。
この景色を、仲間と見た覚えがあった。エイル薬師団がまだ数人だった頃のことだ。
(……記憶を失って、みんなに会わなかったら、私は──どうしていたのかしら)
ぼんやりと思う。
キャスティはマレーヤに自分の記憶を預けたことで物事を俯瞰することができた。客観的に考えればそう言える自分の現状を、主観的に捉えようとすると、どうしても考えがまとまらない。
まだあの毒について何も分からない。どうして彼はあんなふうになってしまったのか。なぜ、なぜ──救おうとした先に、死を望んでしまうのか。
キャスティは未だトルーソーへ返す言葉を持たない。考える時間が欲しくて、まだ、その時期ではないのを理由に、ずっと迷っている。
背中を向け、一人聖火に祈るテメノスは物事を俯瞰できてしまえるから、こうして聖火に祈る形で己の心に向き合い、自分を慰めているのだろう。
キャスティとは真逆だ。
だから彼は進むことを止めない。
「……お待たせしましたね」
「もういいの?」
「ええ」
声を掛けられ、弾かれたように顔を上げた。
彼はローブとカソックを脱ぎ、学者のローブに身を包んでいた。キャスティが背を向けている間に着替えたのだろう。白い手袋にしっかりと指を通し、杖を持ち直す。
宿を出るとテメノスはキャスティを何気なく見下ろした。 
「治療に出かけなくて良いんです?」
「後で見て回るつもり。それより今は、みんなを励ましたくて仕方がないの」
素直に伝えればのらりくらりと躱されるだけだ。それでも別に構わなかったが、傷心の彼にこれ以上気を使わせたくなくて、事実のみを口にする。
「アグネアちゃんの歌と踊りがあれば、十分だってわかってる。でもね、私も何かしたいのよ。……この手で救う以外にも、何かできたらいいなと思ったの」
「あなたは十分過ぎるほどしていると思いますがね」
「ふふ、ありがとう」
後ろ手にして歩調を合わせ、酒場へ向かう。
すっかり日は海に沈み、空には星が瞬いていた。


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夢の通い路(ロティさんち) の「アレグロ・モデラート」を読んで触発されました。テメとキャスが好きな人は好きな話かなと思うのでよかったら読んでみてください。めちゃめちゃ仲良しな二人が見られます。

小説

#つぶやき

ヒカキャスもテメキャスも閨の姿を描きたくていけない……。煩悩…、ううっ……。

#テメキャス
#ネタメモ

教会やテメの紙芝居につられて遊びに来たキッズが、キャスに膝の怪我を見てもらった結果、ぽーっと惚れちゃって、翌日お花を持って「大人になったら追いかけるから!」ってプロポーズしに来たのを見てしまったテメの気持ちをまとめた小説読みたくなっちゃったなあ……。そういうお話を見ちゃった。いいな……。とても良い。

テメも少女に言われててほしいしキャスものほほんと見ててほしいしその夜はめちゃくちゃ仲良くしました(以下略)しててほしい。

メモ

#ヒカキャス
#ヒカキャス「花嫁探し」

粗も多いけど!おしまいです!最終回!!
お付き合いくださった方いたらありがとうございますと言わせてください。ありがとうございます。



トルーソーを止めるために、仲間達に生かされた。治療法を、調合の仕方を知っているからとマレーヤに助けられ──その先で記憶を失って。
エイル薬師団の不名誉な噂を払拭するためにも、キャスティは世界中を旅して人々を助けなくてはならない。仲間を募り、人手を増やしていけば、キャスティがそこにいなくても人を助けることができる。
エイル薬師団を始めたのは、マレーヤと出会ったからだった。彼女と出会ったときは今よりも若い頃の話であったから、誰かとどうなっていく、なんて話は考えたこともなかった。考える余裕がなかった。
記憶を失ったことで変わったことがあるとするなら、そこだろう。
今のキャスティは、誰かと結ばれることが自分の行動を制限するとは思わない。
(……私はいいのよ、私は。でも、彼は……)
ヒカリは、どうだろうか。民を思い、ク国のために剣を振るってきた彼は、これからようやく自分のために時間を使えるようになる。王としての責務もある中で、彼は──一人の人間として、どのように日々を楽しんでいくのだろう。
その意味で、きっと、家族の存在は重要になる。そう考えたとき従者ツキの親族ヨミや、友人の妹ミッカをはじめ、彼と同じ背景を持つ女性達の方が、彼を助けられるのではないかと考えてしまう。
砂漠の暑さのためか、考え過ぎのためか、目眩を覚えて立ち止まった。水を補給し、日陰で休んだあと、ク国へ続く砂道を往く。
正門の橋の前で、キャスティは立ち止まった。
覚悟を決めなくてはならなかった。同じだけ、どんな顔で会えばいいのだろうかと、迷いもあった。
顔を合わせて、なんと言えばいいのだろう。
提案を受け入れたい?
未来に嫌な思いをするかもしれないから断りたい?
言えば、ヒカリはきっと配慮してくれるだろう。そうしてほしくはないのに。
不健全な形ではなく、互いに手を取り合う形で道を歩めないか──と言えたらいいのだが、キャスティ一人にできることなど高が知れていた。
「……先延ばしにしても、意味はないものね」
結局、今のこの形を維持する方が、自分達には合っているのだ。
時折遊びに来て、彼が健やかでいる姿を見られたなら、それでいい。
足が竦むような心地で、橋を渡る。
不安の本当の理由に気付かないまま、キャスティは朱玄城を目指して城下町を進んだ。


キャスティが城を訪ねてきたと聞いて、ヒカリは急いで城へ戻った。この日はク国の東側の復興のため兵士共々出かけていて、キャスティの登城の知らせも夕方時になって届いたのだ。
「いま、帰った」
「陛下」
「変わりはないか? キャスティの話は聞いたが……」
「はっ。それ以外は至って平穏でした」
「なによりだ。それで──彼女は?」
ベンケイに訊ねる。彼は答えるより先に、あ、とヒカリの背後を見た。
「おかえりなさい、ヒカリくん」
「キャスティ」
「聞いたわ。今日は遠出をしていたのよね? 疲れたでしょう」
薬師姿の彼女は城の周辺を散歩していたのだと言った。ひとまず中で休みましょう、という言葉に従い、食事の部屋へ移る。
「あなたに話したいことがあって来たの。でも、夜も遅いから、明日にした方が良さそうね」
皿がある程度空になったところで、キャスティはク国を訪れた理由を明かした。
「まだ大丈夫だ。眠気もない」
「急ぐ話ではないから安心して。ね」
「……」
笑顔で、有無を言わさぬ圧を感じた。が、ヒカリは彼女ともう少し話がしたかった。
「なら、……寝酒に付き合ってくれ」
「あら。寝る前に飲むような人じゃなかったと思うけど」
「今日だけだ。そなたが来てくれたのに、話もせずに眠るなど、今の俺には難しい」
ヒカリが急ぎ戻ってきた理由など、単純なものだ。
会いたかったからだ。
彼女と何気ない日常の話をしたかったからだ。
これがどのような感情のものか、ベンケイに指摘されずともヒカリも理解している。手紙をしたためたのだって、居ても立ってもいられなかったからだ。
「……仕方ないわねえ」
キャスティが年下のお願いに弱いことは知っている。ヒカリが食い下がれば、本当に駄目な時を除いて、頷いてくれることも。
困ったように苦笑する彼女から目を逸らし、ヒカリは、庭へ出よう、と立ち上がった。


新月の夜だ。篝火があるので暗くはなく、星の光がチカチカと空を飾り付けている。
「じゃあ……乾杯」
酒を前に、キャスティは笑顔だった。今日も一仕事してきたのだろう。移動もあっただろうに、強い人だと思う。
「手紙を送ったのだが、届いたか?」
「ええ、この通り。……酒場に届けるなんて、考えたわね」
「そなたなら、必ず出向くだろうとな」
先日はここから他愛ない会話が続いたが、この夜はぽつり、ぽつりと石でも詰むような緩やかな会話となった。
一つ語っては沈黙し、酒を飲む。少量しかなかったため盃はすぐに空き、キャスティは空になったそれを盆に乗せると、膝の上で両手を組み、何度目かの躊躇いの後、ヒカリを見た。
「そろそろ、寝ましょうよ。身体も冷えるわ」
「話があるのだろう。聞かせてくれ」
「だめよ。こんな話は、夜更かしをしてまですることじゃないもの……」
語尾のすぼまりに合わせて視線を落とすので、どきりとする。
憂うその瞳に、彼女は何を視ているのだろう。
「キャスティ」
「……なに?」
しかし、名前を呼べばあっさりと顔を上げる。それがどうしようもなく、嬉しかった。
「やっと俺を見たな」
「──どういう意味……?」
「いや。そなたの言うことも最もだ。明日、聞かせてくれ」
先に立ち上がり、手を差し出す。キャスティはじっとその手を見つめていたが、ややあって、首を横に振った。
「……やっぱり話すわね。あなたに謝らないといけないことがあるの」
「謝る?」
「ええ。──あなたの提案はとても魅力的だったし、あなたなら素敵な旦那様になるだろうと思うのだけど、私がそれに見合わないと思って、断ったの」
何の話か言われずとも、彼女の言わんとするところは察した。ヒカリの妻にならないかという話だ。
「それに、……もし、もしもの話よ? もし私達が結婚したとしても、ヒカリくんはこの先もっと多くの人と出会うでしょう。その時になって本当に好きな人ができたら、私の存在は余計なものになっちゃうと思ったの」
旅中では穏やかで、何があっても大抵は冷静に受け流してきた彼女が、このときはやけに慌てたように言い募る。そうして言ったことを後悔したかのように視線を外すと、片腕を掴むようにして身を小さくする。
「あなたに、どう見られているのか分からないけど、私だって……嫉妬くらいするものよ。だから、そう、この話はなかったことにした方がいいと思うの」
どうしてそのように気まずそうにするのか、ヒカリには分からなかった。
ヒカリは一度断られた側ではある。それを彼女が気にして慰めてくれたのが、月を見ながら酒を飲んだときのことで。
それから手紙も一度しか送っていないし、帰る場所になったら良いとは言ったが、定住せぬ彼女なら家は複数あってもいいだろうとの思いから書いただけだ。
だが、話を総合するに、どうやらヒカリの求婚はしっかり彼女の心に届いており──妙な言い回しが気になるが、彼女自身もヒカリのことをよく思ってくれているようだ。
「……キャスティ。そなたの言いたいことは分かった」
「本当? 良かった……」
両の手を合わせてほっとしたようにキャスティは笑ったが、その手は震えていた。慰めたいと思った。その指先に手を伸ばし、軽く触れる。
「え?」
「震えていた」
多くの人を救ってきたその手は小さかった。手袋を嵌めているから体温こそ分からないが、強張っているようなので休ませたほうが良いだろうと立ち上がらせる。
「なかったことにするのは簡単だが、それで、そなたはどうするつもりだ?」
「どうって……前みたいに、あなたに会えば、近況報告でもして、」
「そなたは嫉妬するほど想ってくれているそうだが」
「ち、違うの。好きとかじゃないの」
「そうなのか?」
「ええっと……」
まだ恋愛の知識は浅いヒカリだが、キャスティから嫌われているとは思えなかった。むしろ、好かれている。おそらく彼女は好意を持て余していて、ゆえに、なかったことにしたいと言っているのだろうが、一度彼女を妻にと願ったヒカリからしてみれば、それは無理な話だった。
彼女以外を妻に娶る未来など、描けそうになかったからだ。
「好きだからって、一緒にいられるわけじゃないでしょう?」
「……そなたの思想は理解している。ク国に縛り付けるつもりはない」
「そ、そうじゃないわ。よく考えて、ヒカリくん。あなたは王様なのよ、もっと他に、……その、相応しい人がいるでしょう?」
「いない。そなた以外には思い浮かばなかった」
「う……」
キャスティが後ずさるので思わずその背中に腕を回していた。戦闘で負傷した際など、身体に触れることは多々あったわけだが、このときヒカリが感じたのはもっと触れていたい、という欲求だ。
加えて、らしくないほど困惑した彼女の顔──篝火が仄かに照らすその表情が、あまりにも可愛らしかった。
背中を支え、腕を掴む。キャスティが大げさなほど肩を竦めて、ゆっくりとヒカリを見つめた。
視線を注ぎ続けると、だめよ、と呟くように言い、逃げるように目を瞑る。
これは、良いのだろうと思った。愛おしむように頬に触れると、弾かれたように目を見開き、何かを言わんと口を開け──抱き着かれていた。
「だめって言ったのに」
「それは、今もか?」
「──それってわざとなの?」
曖昧な問答をどう対応したものか迷ったが、キャスティがヒカリの首に腕を回し、後頭部を引き寄せたので流れに身を任せた。


翌朝、目を覚ますと隣にはキャスティが寝ていた。離れがたいと言うので部屋へ呼び、口吸いだけして寝たのだ。
外は明るく、日は既に昇っているようだ。そろそろ起きて朝の稽古に出かけるところだが、気付けばそのまま肩肘をついて彼女の寝姿に見入ってしまっていた。
キャスティが寝返りを打ち、ヒカリの胸元に頭を寄せる。
擦り寄るようなその仕草が愛おしく、彼女の細い金髪に指を通して光に透かす。
身動ぎ、その目が開く。
「……ヒカリくん?」
「おはよう。目が覚めたか」
「ええ、お陰様で……なんだか嬉しそうね。よく眠れた? 私は緊張してあまり寝付けなかったわ」
「そうか。それは悪いことをした」
欠伸を片手で隠しながら、キャスティはあっさりと身を起こす。ク国の夜着に身を包んだ、白い背中を見つめてヒカリも起き上がった。
「支度をするか」
「そうね。でも、その前に」
「なんだ?」
「あら、あなたの国じゃ、しないのかしら」
笑いながらキャスティは両手でヒカリの顔を包み込む。何度もしていれば流石に覚えるというもの、慣れたように目を瞑れば柔らかな感触が唇に触れた。
「おはようのキスよ。今日も良い一日にしましょうね、ヒカリくん」
「……そうだな」
夜明けを望んだ夜のことを思い出す。──彼女は朝を連れてくる人だった、と。
「良い一日になる。そなたのお陰でな」
話し合うべきことは多くあり、この先に様々困難もある。
けれど、それでも、彼女となら夜明けを臨むことができるだろうと、温もりを抱きしめながらヒカリはようやく実感した。

なるほど、妻というのは、確かに王には必要な存在かもしれない。


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ラストのセリフに「旦那様」て入れるか超迷ったし本当ならキスさせずに終わるつもりだったんですがなんかキスしてた!!はい!
見返すのも恥ずかしい!きっとミスしまくってる!!
でも楽しかったし馴れ初め一つかけたから良し!もっと二人の心情を詰めるべきってわかってるんですが許してください。ヒカキャス仲良くしてくれ〜!!
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