No.192, No.191, No.190, No.189, No.188, No.187, No.186[7件]
#ヒカキャス
#ヒカキャス「花嫁探し」
予定と違う感じになったけど、今はこの形でまとめていこうと思います。
オズと会話して恋心を認めるしかなくなってきてるキャス。
ちょっと修正。
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#ヒカキャス「花嫁探し」
予定と違う感じになったけど、今はこの形でまとめていこうと思います。
オズと会話して恋心を認めるしかなくなってきてるキャス。
ちょっと修正。
ヒカリに見送られ、ク国を発ったキャスティは、オズバルドとエレナの様子を見るため、コニングクリークを目指した。
元々彼らの様子を見る予定だったのだが、ヒカリに呼ばれたので、その前にク国へ向かったのだ。
「元気そうね」
「君もな」
オズバルドは相変わらずの無愛想な態度で、けれど角の取れた態度でキャスティを迎えた。自宅を焼失した彼は、ここでは研究室を拠点とし、日中は娘と共にクラリッサに世話になっているという。
「ごきげんよう、キャスティさん」
「エレナちゃん。ごきげんよう、最近はどう?」
「随分いいわ!」
はじめはぼんやりとしていた彼女も、すっかり年相応の反応を示すようになってきた。
記憶のすり替え──対象物の混乱とでもいうのか、一時はオズバルドの存在がハーヴェイに書き換えられていたエレナだが、キャスティの記憶喪失の知見とオズバルドの調査の成果により記憶が戻りつつあった。
治療を急げば、悲しい過去をたくさん思い出すことになるかもしれないので、それには極力配慮しつつ、まずはオズバルドとの記憶を取り戻すことを優先している。以前に会ったときはオズバルドのことを父親だと認識できていなかったが、今は顔を出すたび、おかえりなさいと呼びかけてくれるという。経過が良いことは明らかだった。
オズバルドとは積もる話もあるからと、夜、酒場で待ち合わせとした。キャスティは町の様子を見て回った後、待ち合わせよりも早く酒場へ向かった。
なんだか久しぶりに酒場を訪れた気がする。
話したいことがあるから、ク国に来てほしい──そう言われて向かったキャスティを待ち受けていたのは、予想外の話だった。
カウンターに座り、メニューを選びながらこれまでのことを振り返る。
「エイル薬師団の方ですか」
「ええ。知っているの?」
「あなたの姿は以前から何度か。ではなく、エイル薬師団のキャスティという方へ、手紙を受け取っていまして」
「まあ……そうだったのね。ありがとう」
旅をしていると手紙のやり取りというのはなかなかに難しい。数ヶ月滞在する場合は宿屋や酒場を宛先として送ってもらうこともあるが、コニングクリークへはつい昨日来たばかりで、滞在の期間もそう長くは考えていない。
「誰から……ヒカリくんだわ」
確かにキャスティの行き先を知っているとすれば、彼以外に居ない。キャスティより先に届いたということは、早馬を使ったか、鳥を使ったか、ともかくキャスティが発って直ぐに出された手紙であることは間違いなかった。
(もしかして、何か怪我でも──)
ク国はまだ復興の途中で隣国との親交もこれから温め直すところだ。その手伝いの過程で怪我をすることはあるはず……とさっと手紙を開き、二度ほど目を通したところでオズバルドがやってきた。
「待たせたな」
「ええ……」
顔を上げ、オズバルドに気づくと慌てて手紙を折り畳み、鞄の中へしまった。
会うのは、アグネアの舞台以来だ。彼の娘のこともあり、舞台で再会する前にも一度様子を見に来たことがあるので、仲間のうちでは比較的よく会っている方。
「これが、東を旅していて見つけた書物だ。テメノス、パルテティオ、アグネアを連れて、巨壁の地下洞を探索していたときに見つけた」
「そんなところにあったの?」
「研究に来た学者が落としたんだろう」
出会った頃とはすっかり見違え、オズバルドは身だしなみを整え、仲間とも頻繁に交流しているようだった。特にソローネのことを彼なりに気に掛けているようで、パルテティオやアグネアと連れ立っていたと語る彼の横顔は柔らかく、娘を見守る父親の姿に似ていた。
食事は各々食べたいものを頼んでいたので、皿が空になるとキャスティは酒を、オズバルドは珈琲を頼んだ。
「君の方はどうしている。ヒカリに呼ばれたと言っていたが」
「ああ、それね──……」
ここでふと彼に話してもいいのでは、という考えが過った。唯一の既婚者であり、彼自身は無自覚でも愛や恋の経験はある。
「その前に聞いてもいいかしら。あなたと奥さんってどうして結婚したの?」
「……急に何だ」
「後で話すわ。ね、教えてくれない?」
キャスティが訊ねるとオズバルドは深く溜息をついた。
「どうもなにも……リタが一緒に住もうと言うから、それなら結婚するかと返しただけだ」
「まあ。大胆ね」
「……同じ家に暮らすとなれば、すり合わせも必要だ。そしてその話をするなら、結婚を考えてもいいだろうと」
「奥さんは? なんて言ったの?」
ふうと小さなため息をついて、オズバルドはキャスティとは反対の方へ顔を背けた。
「もういいだろう」
「もしかして、照れちゃった?」
「……君に酒を飲ませるべきではなかったな」
「そんなこと言わないで。一杯だけにするから」
ようやく機嫌を直してオズバルドが珈琲を飲み始めたので、キャスティは鞄の中から手紙を取り出した。
ヒカリがしたためたのだろうその手紙は、いくつか大事なことが書かれていた。
「ヒカリくんがね、お嫁さんになってくれる人を探したらどうかって言われたそうなの。でも、彼はそこまで必要とはしていないみたいで、……最初は彼の考えに賛同してくれる人を探していたみたいだったのに、何故か急に、私を口説いてきて」
「そうか」
「そんなに急がなくてもいいと思うのよね。彼は若いのだし、これから色んな人に……それこそ他国のお姫様だって会うことになるでしょうし」
オズバルドは黙って珈琲を飲み続けた。彼が何も言わないから、キャスティは沈黙を埋めるように話してしまう。
「……彼の提案してくれた話は、とても魅力的だった。でも、きっとその条件なら他の人だって頷くはずなのよ。──たまたま私がそこにいたから、口説かれただけなの。なのに、」
手元の手紙を見て、苦笑する。
「どうしてこんな手紙が届くのかしらね」
すぐに会いたいなどという殊勝な話は書いてなかった。呼び寄せておいて大したもてなしもできなかったことと、ヒカリの発言で戸惑わせたことへの謝罪。
それから──
『帰る場所は、いくつあっても困らぬはずだ。近くを通ったなら、必ず顔を見せてくれ。楽しみにしている』
「……本当は、数カ月ク国に滞在して、カンポウについて学ぼうかと考えていたのよ。でも急に私を口説いてきたから……居づらくなっちゃって」
「嫌だったなら、そう言えばいい。彼は聞く耳を持たぬ男ではないだろう」
「そう……そうなのよね」
両手で頬杖をつき、ため息をつく。オズバルドの言う話は最もで、キャスティもまた、ヒカリなら話を聞いてくれるだろうという自信はあった。
でも、止めてほしい、とは言えなかった。ただ、聞かされ続けると迷う気がして、逃げてしまった。
「答えは出ているのか?」
「分からないわ。だって、国をまとめる立場の人よ。好きだから一緒にいられるわけでもないでしょう」
「……話が見えん。それはヒカリに話すことだろう」
キャスティは残り少ない酒を呷った。それからオズバルドに聞いてみたかった問いを、もう一つ、口にする。
「あなたって、嫉妬したことはある?」
「……それが何かはわかる」
「なら、話が早いわね。女の嫉妬は怖いものなのよ。ヒカリくんなんて、たくさんの人を口説いちゃうから大変……」
かちゃ、とティーカップを受け皿へ戻し、オズバルドは机上に置いていた本を開いた。
「ここに蓄音機があれば、ヒカリに聞かせてやれたんだがな」
「やめて。彼には秘密にしてちょうだい」
「君はさっさとク国へ戻れ」
「うう……! 店主さん、エールをもう一杯お願い!」
オズバルドがため息をついて嘆いたが、キャスティは気にしなかった。
『ク国に定住しなくともいい。帰る場所にしてくれたなら、それで』
『民の中にも薬師を目指す者がいるはずだ。彼らをエイル薬師団のたまごとして育てるのはどうだ』
ヒカリの話は本当に魅力的だった。彼が好意ではなく信頼からキャスティに声をかけたことも分かっている。
信頼関係だけでいえばアグネアやソローネ、オーシュットだっているのだ。キャスティは一番歳が離れているし、それに、恋や愛の経験はなくとも、ヒカリがこの先誰かを好きになったとき、自分がどう感じるかの想像はできる。
それがヒカリを好きという感情ではなく、嫉妬だということも、理解している。
だから、ヒカリが月を見ながら、口説いたのは本意だと口にしたとき、はぐらかしたのだ。彼は素直に信頼を向けてくれているのに、綺麗に同じものを返せないどころか、自分の我儘だけを聞いてもらうような形の婚姻など、不健全だと思ったから。
「……明日休んだら、ヒカリくんに謝るわ」
「それがいい」
「振られたら、慰めてちょうだい。オズバルド」
返事はなく、ページを捲る音だけが返った。キャスティは二杯目の酒をゆっくりと飲みながら、どうしてこうなのかしらとオズバルドを真似たような長いため息をついた。
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#つぶやき
は〜……原作振り返ると忘れてること勘違いしてることたくさんあって幻覚見ててすみませんってなりますね……。
にわかなのは自覚してるので、あまり設定には触れないようにしてるんです。
原作が好きなので。原作あってこそなので。
加入編や短いシーンが多いのもそのせいで……うぅ~色々許してほしい!
この状態で色々書いててごめんなさい!
もっとしっかり頭に叩き込んで描いていきたいですが、叩き込むまでは、ゆるふわなやつ、やらせてもらいます。私が許せなくなるその時まで。
てことで(?)ネタメモです。
#ヒカキャス
キャスが水たまり怖がってくれないかなとか、ヒカくんはク国の外に出たら全部物珍しくてそれ食べられるのか?っていちいち聞くし、キャスにいる?って言われてそのままパクッて食べてほしいし、それが定着しててほしさすらあるんですわ……!!
あとキャスによる一人暮らし指導的な。こう、生活の仕方教示とか。こう、な。あるんや。畳む
#テメキャス
やっぱり何度見ても4章の「なんでも言って」がオタクだから引っかかっちゃう。それテメノスだからなにもないけどテメ以外に言っちゃだめですからね!
この手を差し出すから、がどういう意味なのか分からないけど救うって言わないあたりがキャスからのテメへの配慮を感じるしテメもとなりにいてくれるだけで心強いって思ってくれそうなので、この先、穏やかに過ごしててほしさで胸が千切れそうです。
もういっぺんテメキャス旅の中で恋心芽生えちゃう世界線描きたい。ソロちゃん編でキャスがクロードに口説かれてた話のあとにテメの話があって全て落ち着いたあとに「なんでもするって言ってくれましたよね」って甘えてほしい。テメにはキャスに甘えてほしい〜!私が見たい。
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あとそうだパティチャもう諦めて二人のやつは全部見てきます。情報めちゃある!
は〜……原作振り返ると忘れてること勘違いしてることたくさんあって幻覚見ててすみませんってなりますね……。
にわかなのは自覚してるので、あまり設定には触れないようにしてるんです。
原作が好きなので。原作あってこそなので。
加入編や短いシーンが多いのもそのせいで……うぅ~色々許してほしい!
この状態で色々書いててごめんなさい!
もっとしっかり頭に叩き込んで描いていきたいですが、叩き込むまでは、ゆるふわなやつ、やらせてもらいます。私が許せなくなるその時まで。
てことで(?)ネタメモです。
#ヒカキャス
キャスが水たまり怖がってくれないかなとか、ヒカくんはク国の外に出たら全部物珍しくてそれ食べられるのか?っていちいち聞くし、キャスにいる?って言われてそのままパクッて食べてほしいし、それが定着しててほしさすらあるんですわ……!!
あとキャスによる一人暮らし指導的な。こう、生活の仕方教示とか。こう、な。あるんや。畳む
#テメキャス
やっぱり何度見ても4章の「なんでも言って」がオタクだから引っかかっちゃう。それテメノスだからなにもないけどテメ以外に言っちゃだめですからね!
この手を差し出すから、がどういう意味なのか分からないけど救うって言わないあたりがキャスからのテメへの配慮を感じるしテメもとなりにいてくれるだけで心強いって思ってくれそうなので、この先、穏やかに過ごしててほしさで胸が千切れそうです。
もういっぺんテメキャス旅の中で恋心芽生えちゃう世界線描きたい。ソロちゃん編でキャスがクロードに口説かれてた話のあとにテメの話があって全て落ち着いたあとに「なんでもするって言ってくれましたよね」って甘えてほしい。テメにはキャスに甘えてほしい〜!私が見たい。
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あとそうだパティチャもう諦めて二人のやつは全部見てきます。情報めちゃある!
#ヒカキャス
#ヒカキャス「花嫁探し」
四話かな?
多分あと5000〜1万文字以内で終わる。
微調整入れる必要があるかもですが、一旦これで置きます。
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Q.一度振られる攻めが好きなんですか?
A.好きです。
#ヒカキャス「花嫁探し」
四話かな?
多分あと5000〜1万文字以内で終わる。
微調整入れる必要があるかもですが、一旦これで置きます。
その後、キャスティを部屋まで送り、ヒカリも寝床についた。
話すことで気が和らいだのだろう、頭を寝かせるとすぐに寝入り、次に目覚めたときには朝だった。眠る時間は普段より遅かったはずだが、妙にスッキリとしている。髪を結い、整えられた服を着替え、小手を付ける。
部屋の外へ出ると、向かい側の扉も開いたところだった。
目が合う。彼女は着物ではなく、いつもの空色の服装だった。
「おはよう、ヒカリくん」
「おはよう。……キャスティ」
朗らかな笑みを向けられ、ヒカリも釣られるように口元を緩める。
──胸にしっくりと来るものがあった。
「朝餉は皆で取ることにしている。そなたもどうだ」
「いいの? いただくわ」
「ああそれと、宿の者にはあの後言伝を頼んでおいた。今回の滞在は城を使ってくれ」
「ありがとう。とっても助かるわ」
宿や酒場でも十分だが、それでも調合するために道具を広げやすかったとキャスティはほのぼのと語る。
仕事熱心な彼女の話に耳を傾けながら、ヒカリは一つ決意を固めた。
信頼のおける相手で、自分のしたいことをもっと叶えられるなら──
民が一番とはいえ、国の境を越える越えないがヒカリの行動に制限をかけるかというと、そんなことはない。多くの民が困窮せず、共に明日を生きるためには、それ以上に多くの人との関わりが必要だ。
一人でも多くに、救いの手を差し伸べたい。ヒカリの見据える先は、彼女の行動を制限せず、文字通り一人でも多くに辿り着く手伝いになるだろう。
(……驚くだろうな)
彼女の希望も満たせるだろうと、ヒカリはどこか晴れやかな気持ちで食卓に付き、皆と和やかに朝食を取った。
ヒカリがキャスティに告げたのは、翌朝のことだった。
この日を最後にキャスティが旅立つと言うので、言ってしまう前に話しておきたかったのである。
「キャスティ、話があるのだが……」
「あら、なに?」
「……。……こちらに来てくれ」
臣下達からの妙な視線が気になり、城の外へ促す。見張りの兵士も遠く、町中の声があるのでここならヒカリ達の話し声も聞こえぬだろう。
「妻の話だが、」
「ああ、大丈夫よ。また話を聞くことがあったら、聞いておくわね」
「……そうではない」
はっきりと言えばいいだけのことが、照れくさい。ク国男児ならば、恥じらいを捨てろと言い聞かせ、キャスティを見据える。
「そなたに、……妻になってくれと言うのは、どうだろうか」
「え?」
「そなたも言っていただろう。信頼の置ける相手で、できることが叶えられるなら考える、と」
「え、ええ……」
相談をされていたのに、急に婚姻を申し込まれては戸惑うのも当然だ。ヒカリは考えられる限りの彼女の願いを叶える形の提案を唱え、それから、軽く息を吐くと胸を張った。
「俺はそなたのことを十分に信頼しているし、そなたからの信頼も感じている。もしそれでも足りぬと言うなら諦めるが……どうだ?」
「まあ、ヒカリくん。あなた」
一通り話を聞いてくれたキャスティは、ヒカリの差し伸べた手を取るのではなく、口元へ寄せ、驚いてみせた。それからビシ、と人差し指を立てる。
「ちょっと考えが甘いわね」
「な、そうか?」
「そうよ。だってあなた、婚姻は『あなたと結婚します』だけじゃないでしょう? ……あなたの暮らしのことも掛かってくる」
慰めるようにヒカリの肩をポンと叩くと、キャスティはいつものほほ笑みを浮かべた。
「あなたの提案はとても魅力的だけど、それだけじゃ受けられないわ。ごめんなさい」
「そ……そうか」
「……じゃあ、少し、出かけてくるわね」
「ああ」
片手を触り合って別れる。キャスティはこの夜まで城に泊まることになっているので、また帰ってくる。戻ってくる。
分かってはいるのだが。
「ヒカリ様ー! そろそろお休みになられては?」
剣の稽古をすると言って正門前の修練場に向かい、鍛錬をしていた。兵士に声を掛けられてようやく自分が何時間も剣を振り続けていたことに気づき、水をもらう。水分補給を怠ってはならないと、キャスティからも厳しく言われていた。
城下町の安全を確かめながら城へ戻り、ベンケイ、ライ・メイ達から各地の報告を受ける。
そうして気付けば、再び稽古用の木刀を掴んでいた。
「酷い汗ですな」
いつからそこにいたのか、ベンケイが手ぬぐいを差し出す。
「何か考え事でも?」
汗を拭いながら、彼の問いをぼんやりと聞いていた。
元はといえば彼の提案から始まった話だ。ヒカリも思わず愚痴の一つでも言いたくなる。
「……キャスティに」
「はい」
「妻にと話をしたら、断られた」
「なんと!」
ベンケイはライ・メイの雷槍を受けたかのように驚きよろめくと、ヒカリに詰め寄る。
「そ、それは……なんとお伝えになられたのです?」
身体を休ませるついでに今朝のことを語ると、ベンケイはつるりとした頭を撫でて唸った。彼ですらそんな反応をするのなら、当人のキャスティも余程困るものだったのだろう。
「それほど変な話だったか……」
「……いやはや、流石はヒカリ様のお仲間。手強いですな」
「ベンケイ?」
「このベンケイ、助太刀しましょう」
そうしてまずは場所を移しましょうと城の中へ促された。着替えを済ませ、座らされたのは玉座だ。
「非礼を承知で申し上げますが、陛下──ヒカリ様には残念ながら恋に疎く存じます。妻を娶るとはどういうことか、今一度、よくお考えください」
「……そなたが言い出したことだぞ」
「左様。そうでもしなくては、いえ、そうまでしても鈍いことが今明らかではありませんか」
む、と口を閉じたヒカリは先の問いについて考える。が、ベンケイの言わんとすることはさっぱり分からない。
「……なにを考えるんだ?」
「夫婦という言葉がございますように、」
最早ベンケイは何も言わず、説明を始めた。王が妻を娶るということはすなわち、王妃を据えるということになる。これまでク国は男性が主権を握ってきたので、実質的な権力が王妃に発生する訳では無いが、緊急時や王不在の際に王と同様の対応を求められる。
さらに、王に妻が求められる最大の理由は、世継ぎを産むためだ。
共に育み、ク国の未来を子に委ねる──ヒカリがどう思おうと、戦に苦しんできた民にいきなり全て一人で立てと言うのは現実的ではない。その時が来るまで庇護者が必要だ。
話を一通り聞き入れたところでヒカリは腕を組んだ。ク国の歴史は、ヒカリも継いだク家の血が築いてきたものでもある。闇の力が血によって継がれるものなら、事情を知る者の方が良さそうだ。
「ク家に嫁ぐとなると、それだけの制約と責任が課されるわけです。それを乗り越えるには信頼だけでは足りませぬ。互いを思い合う心があってこそ……!」
熱く語るベンケイの姿をよそに、ヒカリは思う。
彼女だから、考えたのだ。彼女とならどのような困難があっても乗り越えられるだろうし、何があっても任せられる。
人を助ける為に世界を歩き回りたいというなら、そうすれば良い。自分はこれまで通りク国で彼女の帰りを待つだけ──そう、彼女の帰る場所がここであればいいと思ったから、声をかけた。
「時に、ヒカリ様」
「なんだ」
「物事には順序というものがあります。いきなり妻になってくれというより、どうして妻に願うのか思いを伝えられては?」
「……なるほど。一理ある」
キャスティも『それだけでは受けられない』と言っただけだ。話を聞けば、考えを変えてくれるかもしれない。
「それと、これは忠告ですが」
早速彼女に伝えようと立ち上がったヒカリに、ベンケイはニヤリと口角を上げた。
「焦りは禁物、相手の気持ちを考えねば、逃げられますぞ」
「そうか。気を付けよう」
呼び寄せられ、嫁探しは急ぐ話ではなかったと聞かされ、その上で妻にと請われた彼女のことを思う。確かに、ヒカリの行動は急なものだった。
「ヒカリ。キャスティ殿が帰ったぞ」
「ああ、今行く」
ライ・メイに呼ばれ、部屋を出る。
まずは彼女と話をしよう。鼓動が早くなる中、ゆっくりと歩き、ヒカリは食事の間へ移動した。
食事の時間はこの日の出来事などを語り合い、湯浴みをするため一度別れた。
それから少しした後、ヒカリは酒と盃を二人分用意し、キャスティの部屋の前まで来ていた。
「外で酒を飲まないか。月も綺麗に見える」
「素敵ね。いいわよ」
今朝のことなど気にも留めていないように、キャスティはしとやかに応じた。寝間着はク国仕様の白地の浴衣で、こちらもよく似合っていた。
縁側に出て、互いに注ぎ合う。乾杯を唱えて、くい、と揃って酒を呷った。
「……美味しい!」
「にごり酒だ。口当たりが柔らかく、飲みやすいだろうと思ってな」
「ええ、本当に。これなら何杯でも飲めちゃうわ」
すぐに盃を空にしたので、ヒカリも小さく笑って追加を注ぐ。
「良い夜」
じっくりと酒を味わっていたキャスティが、しみじみとそう呟いた。
「ねえ、ヒカリくん。私、思うのだけど……そんなに焦ってお嫁さんを探さなくてもいいんじゃないかしら」
「なぜだ?」
「だって、あなたは若くて、これから多くのことを経験するでしょうし、色んな人に巡り会うと思うから」
月を見ていた目が伏せられる。
その横顔は美しかった。
「きっと、素敵な人と出会えるはずよ」
「……もう出会っている可能性もある」
「そうね」
「キャスティ」
「なあに?」
呼び掛けると、素直に彼女はこちらを見た。一仕事終えた後の酒が格別だと言う彼女は、すでにほんのりと頬を染めていて可愛らしい。
「今朝の話は、焦って口走った訳ではない」
「──え?」
「そなたとこうして話ができるなら、……そなたにとってここが安らぎの場となるなら、それがいいと思っただけだ。無理を強いるつもりもない」
「……ヒカリくん」
まじまじとキャスティが見つめる。ヒカリは空になった盃に自ら酌をして、酒を一口飲んだ。
「あなた、もう酔っちゃったのね」
「いや、酔ってないぞ」
「酔ってるわよ。このお酒、思ったより度が強いのね? さあ、立って。早く部屋へ戻らないと」
「酔ってないのだが……」
盃を奪われ、背中を押される。世話焼きの彼女にこうして構われるのは初めてのことで、少し楽しい。
それに、酔ったせいにされたところで、ヒカリの思いは変わらないので気にしなかった。
「しっかり寝てね。おやすみなさい」
「キャスティ、待て」
寝台に横になるまで見守り、ヒカリが布団を被ったところで彼女は立ち上がった。その指先に指を絡めるように引き止める。
「明日は、見送らせてくれ。先に行ってくれるな」
「分かったわ」
苦笑するので、大丈夫だろうと思った。おやすみなさい、の言葉に従い、目を瞑る。
襖の閉まる音が響いて、静かに人の気配が遠ざかった。
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Q.一度振られる攻めが好きなんですか?
A.好きです。
#ヒカキャス
#ヒカキャス「花嫁探し」
三話目続き。
キャスが和装もといク国の服装が似合うという幻覚は、剣士の衣装がかわいすぎると思っている作者による私欲と願望です。
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少し前に公開していた記事と合体させました。
ところでベンケイの、王になったあとのヒカリくんの呼び方って何なんだろう。間違えてる自信しかない。どこかで確認して直します。
ちょいちょい日本語おかしいところも直します。
#ヒカキャス「花嫁探し」
三話目続き。
二人で酒場へ入る。以前、ムゲンが謀反を起こす前にヒカリが助けた酒場だ。ムゲンの支配下にあったときも、戦の間も、店主が必死に守ってきたおかげで、こうしてまた酒の席に着くことができる。
「ここにはあなたが王子だった頃からの歴史があるのね」
話を聞いてくれる。朗らかに相槌を返してくれる。それはキャスティがこれまでにも多くの人を助けるために、話を聞く必要があったためだと理解していたが、ヒカリはこの時新たな思いで話を聞いてくれたことを感謝した。
酒とつまみが運ばれる。店主とも話を交えながら、料理を楽しむ。
「これ、なんの料理?」
「麦を発酵させたものだ。味噌といって湯に溶いても美味いし、野菜に付けても美味い」
「へえ……見た目はあまりいいとは言えないけど、まろやかな味」
ク国もといヒノエウマは環境のためもあってか、他地方と異なる料理も多い。調理法自体は珍しくなくとも、何をどのように用いるかの部分が変わるので結果的に違う味付けになるのだ。
「そうだ。そなたの好きそうな話を一つ思い出した。この国には薬膳料理というものがある」
「気になるわ。聞かせてちょうだい」
研鑽に励む彼女のためになるならと城で読んだ話と実際に食しての感想を語り聞かせる。
人を治すこともそうだが、彼女は健康を維持するためのノウハウにも興味を持つので、ヒカリの話を熱心に聞いていた。カンポウの話になると、トト・ハハで採取した時の話も出て、会話は弾んだ。
酒は進む。彼女が上着を脱いだので引き取る。
その手がボタンに手を掛けたので、ヒカリはそれとなく視線をそらした。もとよりク国男児として、未婚の女性の肌を見るものではないと教育されている。それにも増して、この時は見てはならないという強い思いから顔を背けた。
「あら、ヒカリくん。お酒、注ぎましょうか」
「あ、ああ」
「ほら、持って」
ボタンを外す手を止めたのだろうか。キャスティは手を伸ばし、ヒカリの手に盃を持たせる。手が触れる。
すぐそばに、彼女の体温を感じた。
「どうしてそっちを向いてるの?」
「これで十分だろう」
「まだ注いでないわよ。ちゃんと見て、落とすと危ないわ」
「いや、キャスティ──」
ぐい、と肩を掴まれ、振り向かされる。思うより近い位置に顔があった。
「いい子ね」
にこ、と仄かに頬を染めた顔で笑う。
キャスティが酌をする間、ヒカリは盃の向こう側、彼女の姿をじっと見ていた。エプロンこそ付けているが、その襟元は一つどころか四つほどボタンが外され、細い首の下──白い素肌が覗いている。
ガタ、と席を立っていた。
「あ」
キャスティが声を発し、それに合わせてヒカリも盃を持ち直したが、遅かった。酒を少量、彼女のスカートにこぼしてしまう。
「す、すまぬ」
「いいわよ。手巾を借りるわね」
「俺が取ろう」
自分の膝を汚すならまだしも、彼女の衣服を濡らしてしまうとは。ヒカリは急いで手巾を借り、キャスティに渡す。
胸元から足元までまんべんなく酒が垂れてしまい、そこだけ色が濃くなった。これでは汚れが目立つ。
「着替えを貸そう。城まで行けるか?」
「このくらい平気よ。エプロンにかかっただけだし……」
「ならぬ」
女性の服を汚しておいて対応しないなど、ク国男児の風上にも置けぬ。店主にはすまぬがと声を掛け、ヒカリはキャスティに上着を羽織らせると、その手を取って急ぎ足で城へ向かった。
ライ・メイが見張りに出ていた。彼女に事情を話せば、倉庫に女物の着物がしまわれてあったと教わる。キャスティの案内を彼女に任せ、ヒカリは倉庫へ向かった。倉庫番の兵士に頼み、いくつか着物を見繕わせ、着替えとして持って行く。
キャスティが着替える間に、城の部屋を一室開けさせる。
「陛下の近くの部屋になされては?」
「そなた、本気ではあるまいな?」
「こればかりは私には決められませぬ」
「何を言って……」
王と親密な関係であれば部屋を近くに配置することがもてなしの一つであるが、未婚の女性が相手となればまた別だ。親密の意味も変わってくる。
ヒカリは一つため息をついて、それ以上の問いを避けた。
「冗談はさておき、空いている部屋自体はあるか」
「あるにはありますが、客人を招くとなると陛下の向かいの部屋ほどしかありません」
「……城の整備も急がなくてはな。分かった、キャスティにはその部屋を使ってもらおう」
「は!」
やけに嬉しそうに返事をする。ベンケイのつるりとした頭を一睨みして、ヒカリはライ・メイの呼び出しを待った。
「ヒカリ」
「ライ・メイ。着替え終わったか」
「ああ。こちらへ」
「……ごめんなさいね、夜分にこんな大事にして」
篝火の焚いた庭先に出てきたキャスティは剣士の職の時と同じ神の結い上げ方をしていた。緋色の着物を着たその姿はあまりにも目にしっくりときて、つい、言葉を忘れる。
「ヒカリくん?」
「……似合っている」
「そう? 剣士の服装と似ているからかしらね」
袴姿で剣を振るう姿は勇ましいものだったが、このときの服装はどちらかといえば凛とした、上品な雰囲気があった。
月明かりの下でなら、彼女の金髪も、翡翠の瞳も美しく見えるのだろう。旅中で見てきた彼女の姿を思い返していると、ベンケイが城の奥から顔を見せた。
「部屋の用意ができましたぞ」
「宿は取っているわよ?」
「濡れた服を干すには、広い方が良いだろう」
「それはそうね。ありがとう、ヒカリくん」
ワンピースと違い、着物姿ではいつものようには歩けない。キャスティが足をつんのめらせたので、慣れるまではと片手を取って部屋を案内する。
「前にも来たけど、奥に広いお城ね」
「そうだな。ク国は木材が少なく、固い地盤も狭い。城を建てるにはこの形を取るほかなかったのだろう」
襖や掛軸など、調度品の珍しさもあったようで彼女の部屋へ案内するまでに少し時間をかけた。
部屋には休めるように寝床が整えられ、彼女の荷物も揃えてある。
「じゃあ、今日はこのまま休ませてもらうわね」
酒も飲んでいたことだ。ヒカリもその提案に頷き、何かあれば呼ぶようにと言付け、自室へ戻った。
それからヒカリも寝支度を整え、寝台に横になった。髪結いも解き、剣や服、小手も置いて寝られる。この平穏な夜を迎える度、ヒカリの旅も無駄ではなかったなと思う。
──ここへ連れて帰れなかった仲間の姿が過り、意識的に頭の中から振り払う。
忘れるつもりはない。ただ、剣を交え散っていったリツと違い、最期は言葉もまともに交わせなかったことだけが、いつまでもヒカリの胸にわだかまりを残していた。
おそらく、これすらも、かの鷲は見透かしている。その上で、あのように命を燃やしたのだ。ヒカリの目の前で。
(……眠れん)
目を瞑って身体を休ませていたが、眠気はなかった。髪を下ろしたまま、一枚上着を羽織り、剣を提げて廊下に出た。
欄間からあふれる光が、廊下を仄かに照らす。向かいの部屋、キャスティの休む部屋は暗く、彼女が休めているならそれでいい、と両裾に手を差し入れるように腕を組み、玄関口を目指した。
からりと戸を開け、庭へ向かう。宝物庫の見張りをしていた兵士が、ヒカリに目を留めた。
「ヒカリ様」
「どうした」
「先程、ヒカリ様のお連れになった方が、庭先へ出られました」
「……そうか。様子を見てくる」
寝ているのかと思えば、起きていたとは。
ヒカリは兵士の示した方へ足を向けた。
今夜は、月が明るい。火が無くとも不十分なく歩くことができる。
庭へ出る。縁側に腰掛ける人影があった──キャスティだ。
髪を下ろし、ぼんやりと空を眺めているように見える。
砂を擦る音を立てて近付けば、警戒するようにこちらを振り向き、ややあって、肩の力を抜いた。
「どうしたの? こんな夜更けに」
「そなたの方こそ。やはり、宿の方が良かったか?」
「とんでもない。寝心地は良かったわ。ただ……なんだか眠れなくて。今夜は月が綺麗だとライ・メイさんが言っていたから、見に来たの」
「なるほどな。……確かに、見事な満月だ」
穏やかな風が吹いていた。キャスティに誘われるままに隣に座り、二人、空を眺める。
「ヒカリくんは、どうしたの?」
「……少し、旅の頃を思い返していた」
「私もよ。どうしてかしらね……安心できる場所だから、考えちゃうのね」
さらりと告げられた言葉から、彼女の信頼を汲み取る。
「そうだと嬉しい」
「本心よ」
志を違えたことは問題ではない。それでも道を譲れぬから選び、進んだだけ。──カザンもきっと、そうだった。
「……なんだかね。助けられなかった人の分まで、私がやらなくちゃいけないって、思うのよね」
おもむろにキャスティが口を開いた。
「この手で救えなかったことがあるから、次に進もうと思うの。それを嫌だなんて思ったことはないし、これからも続けるつもりだけど、……時には立ち止まってもいいのよね」
それはヒカリに語るというより、自分に言い聞かせているように聞こえた。旅の頃のことを振り返っていたなら、彼女が思い描いているのは──ティンバーレインで手にかけたあの男のことだろうか。
『団長。あなたのことも、救ってみせますよ』
紫の毒雨を降らせたあの青年は、エイル薬師団の仲間だったという。キャスティが育て、誰よりも期待していた、未来ある若者だったと。
仲間を奪われ、生き残ったのが彼女だ。ヒカリは常に仲間と共に戦を生き延びてきたから、彼女が何を感じたのか、想像することは難しい。
「……そなたが休めるなら、いくらでも部屋は貸そう」
「ふふ、ヒカリくんたら」
「友のためだ。それに、俺も隣に居る」
「──……そうね」
ニューデルスタ停泊所で、記憶を取り戻した彼女がとぼとぼと歩いて戻ってきたとき、出迎えたのはヒカリだった。何も言わぬ彼女が、酷く傷ついていることだけは理解しつつも、慰めることが助けになるとは思えず、ヒカリは励ましの言葉を贈った。
彼女の言葉がヒカリの道標となるように、ヒカリの言葉が彼女の背中を押すものであればいい。
「ねえ、ヒカリくん」
「なんだ」
「……少しだけ、肩を借りてもいいかしら」
「お安い御用だ」
一人になった彼女が、その後エイル薬師団としてどうしているのか、深く聞いたことはない。仲間を増やしているのかもしれないし、一人でここに来たということは、まだ仲間を探している途中なのかもしれない。
肩に、わずかに重みが乗る。もう少し寄りかかっても良いと思ったが、ヒカリがそれを口にすることはなかった。
キャスが和装もといク国の服装が似合うという幻覚は、剣士の衣装がかわいすぎると思っている作者による私欲と願望です。
畳む
少し前に公開していた記事と合体させました。
ところでベンケイの、王になったあとのヒカリくんの呼び方って何なんだろう。間違えてる自信しかない。どこかで確認して直します。
ちょいちょい日本語おかしいところも直します。
#ネタメモ
はじめキャスの様子から「ミントのときみたいにわからない人だと思われてるんだろうな」て思ってたテメ。
でも旅をする中で全然疑われることも敵意を示されることもなく、むしろ無防備に頼られるので、心配だなあこの人……と思ってたら、旅のあととかで「ああこの人はちゃんと私のことを見てくれる人なんだなって思えたから、全然そんなふうに思ったことはなかったわ」ていわれて、それがクリティカルヒット決まってほしいなって……思いました。隣でオシュが見てる。(いた)
……入るわけないだろ!(理性)
でもそれがきっかけになるかもしれないじゃん!(願望)畳む
memoでね、こういうつぶやき をしましてね……。