#ボツ
踊子4章を書いてて、めちゃくちゃ好きなシーンなんですけど、蛇足かなって思ってしまったので(展開的に)供養します。
踊子と商人のパティチャのシーンです。

なんで出したあとに文のおかしなところに気がつくんだろう……。




過日に父から聞いた話と、似ている。幼い頃に母親を亡くしたプリムロゼに、父はよく生まれたときのことを話してくれた。母親が亡くなったのはプリムロゼのせいではないと言いたかったのかもしれない。
プリムロゼは、母親がどのようにして亡くなったのかも、いつ亡くなったのかも知らない。だから父の話が全てであり、それと類似した劇はどうしても彼女の目を引いた。
そして、彼女が視線を舞台へ投げたということは、必然的に仲間たちの目もそちらに向かうわけで。
「これ……もしかしなくてもプリムロゼさんのこと言ってない?!」
その場にいた全員の雰囲気が、一瞬にして冷えた。誰よりも早く険しい表情を見せ、拳を握ったのはトレサだ。
「女の敵だわ……見世物にするなんて! プリムロゼさん、今回は私がいるからね。全面的に擁護するわ」
ノーブルコートで刺されたことをきっかけに、プリムロゼの目的は既に仲間たち全員の知るところとなっていた。そして、親を殺されたからとはいえ、積極的に人を殺めようとする行為を止めようとするものも、居なかった。それぞれ心の内でどう思っているかはわからないが、少なくともプリムロゼの覚悟を思い遣ってくるていることだけは理解できた。
ハンイットの手を離して、トレサの方へ近寄った。
「……ねえ、トレサ」
だから、それに甘えてはいけない。復讐はあくまでプリムロゼ一人で完結しなくてはならない。
彼らの前に見せ続けた自分を裏切りたくないから、彼らの期待に応えたいから──そんな理由で、この先へ進んではいけないのだ。
劇から視線を外す。サイラスとテリオンが戻ってくる。
「あなたは、いい人を見つけてね」
「な、なに、急に」
トレサの髪に触れ、それから頬を撫でる。
「あなたって可愛いんだもの。純粋で、可憐で、頼もしくて……私が男だったら、きっと夢中になってたわ」
「っもう、プリムロゼさん! こんな時にからかわないでっ!」
「ふふ、ごめんなさい」
音が聞こえそうなほどパッと顔を赤くしたトレサを見て、ほんの少し自分を思い出した。

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