#小説#お知らせ 蛸旅にCP作品を1点追加しました。が、前半はオールキャラで書いてたので、そこまでをここに置きます。前編をオールキャラ、後編をCP世界線ならの続き、で書いて別々にリンクを貼ろうと思ったのですが、続きがあまりにも短くなってしまってCPモノとしてまとめました。皆既月食を料理をしながらみんなで眺める話。続きを読むーーー最初に空を見上げたのはオフィーリアだった。あ、と小さく呟いたかと思うと近くを歩くトレサを呼び、空を指す。「えっ、なにあれ」「変……ですよね?」その様子に何だなんだと仲間たちも視線を上向かせ、それぞれ反応する。「なんだあ、ありゃ……」不思議そうに首を傾げたのはアーフェンで、その隣では、サイラスが、ほう、と感嘆の声を上げた。「月食だ。まさか見られるなんて」「知っているのか」「知識としては。私も見るのは初めてだ。月蝕とは、我々の立つこの星の影が月に重なることを言って──」「先生!講義をするなら、ここで野営にしましょっ!」オルベリクの問いに笑顔で応じるサイラスを制し、トレサは速やかに近くの木陰にリュックを下ろした。リバーランドの川辺の道を歩いており、ちょうど、馬車が行き違えるように膨らんだ場所があったのだ。木を挟んで石垣が築かれ、プリムロゼとハンイットがその上に並んで座り、リンデが二人の足元に寝そべる。アーフェンが手持ちの籠を、オルベリクが荷籠をそれぞれ下ろしてトレサの荷物の傍に置いた。「テリオンさん?」両手をズボンのポケットにしまい込み、七人の様子を少し離れたところから見守っていたテリオンは、トレサに気付かれてようやく、輪に入った。トレサが焚き火を起こし、アーフェンが食材を並べる。「テリオン、手伝え」「ああ」「それで、月蝕とはなんなんだ?」今日の調理担当はオルベリク、補佐はテリオンだ。短剣を取り出し、魔物の血が付着していないことを確認してから火で炙る。投げられた兎肉を一口サイズに切りながら、鍋の中に落としてやると、植物の種を絞って得た油がジュウと激しい音を立てた。前日の料理担当だったハンイットと補佐のプリムロゼは、同じくいまは手空きのサイラスの方を見て話の続きを促す。「星が影を落とすってどういうことなの?」「そのままの意味だよ。我々の住まうこの大陸は、大きな星の一部とする説があるんだ……」天空を研究する学者がいるのだと、彼は話し始めた。アレファンの化身である太陽は、東から上り、西へ沈む。それは太陽がこの地を回っているのではなく、太陽を基点にこちら側が周囲を回るがためにそう見えているそうで、更に、この地はある軸を中心に回転しているのだという。「初めて聞いたわ」「うん、このあたりの研究は聖火教会や十二神の神話と矛盾する部分も多い。月蝕は聖火が月から火を吸収するために起こるという説もあるし、十三番目の神が力を取り戻すためとも言われていて、要はどれが正しい事実であるのか、まだ判明していないんだ。そのせいだろう。……ただ、呼び方は統一されている。月蝕だ。月が上っている間のほんの僅かな時間、あのように欠けていくことを、そう呼ぶことにしたんだ」「おー……言われてみれば、さっきより暗くなってんな」「やだ。トレサ、焚き火を大きくしておきましょ」「そうね! 暗くなっちゃうってことだもんね」「大丈夫。星があるよ」プリムロゼとトレサが暗闇を恐れて対策を練るので、安心させるように、それに、とサイラスが付け足す。「月蝕はなかなか見られない現象でね。一生に一度の出来事かもしれないから、幸運の前触れだという言い伝えもあれば、不吉の前兆という噂もある」「ふふ、怖がってばかりではいられないということですね」オフィーリアの相槌に、プリムロゼが両頬に手をついて拗ねる。パチ、パチ、と焚き火が爆ぜた。オルベリクが香辛料と味付けの塩を振りかけると鍋の中に籠もっていた香りが外へ逃げてくる。トレサとアーフェンが歓喜の声を上げる。そうして、皿を片手に、月が欠けて満ちる様を八人でゆっくりと味わった。読んだ 2022/11/18(Fri) 15:47:15 オールキャラ
#お知らせ
蛸旅にCP作品を1点追加しました。が、前半はオールキャラで書いてたので、そこまでをここに置きます。
前編をオールキャラ、後編をCP世界線ならの続き、で書いて別々にリンクを貼ろうと思ったのですが、続きがあまりにも短くなってしまってCPモノとしてまとめました。
皆既月食を料理をしながらみんなで眺める話。
ーーー
最初に空を見上げたのはオフィーリアだった。
あ、と小さく呟いたかと思うと近くを歩くトレサを呼び、空を指す。
「えっ、なにあれ」
「変……ですよね?」
その様子に何だなんだと仲間たちも視線を上向かせ、それぞれ反応する。
「なんだあ、ありゃ……」
不思議そうに首を傾げたのはアーフェンで、その隣では、サイラスが、ほう、と感嘆の声を上げた。
「月食だ。まさか見られるなんて」
「知っているのか」
「知識としては。私も見るのは初めてだ。月蝕とは、我々の立つこの星の影が月に重なることを言って──」
「先生!講義をするなら、ここで野営にしましょっ!」
オルベリクの問いに笑顔で応じるサイラスを制し、トレサは速やかに近くの木陰にリュックを下ろした。
リバーランドの川辺の道を歩いており、ちょうど、馬車が行き違えるように膨らんだ場所があったのだ。木を挟んで石垣が築かれ、プリムロゼとハンイットがその上に並んで座り、リンデが二人の足元に寝そべる。アーフェンが手持ちの籠を、オルベリクが荷籠をそれぞれ下ろしてトレサの荷物の傍に置いた。
「テリオンさん?」
両手をズボンのポケットにしまい込み、七人の様子を少し離れたところから見守っていたテリオンは、トレサに気付かれてようやく、輪に入った。
トレサが焚き火を起こし、アーフェンが食材を並べる。
「テリオン、手伝え」
「ああ」
「それで、月蝕とはなんなんだ?」
今日の調理担当はオルベリク、補佐はテリオンだ。短剣を取り出し、魔物の血が付着していないことを確認してから火で炙る。投げられた兎肉を一口サイズに切りながら、鍋の中に落としてやると、植物の種を絞って得た油がジュウと激しい音を立てた。
前日の料理担当だったハンイットと補佐のプリムロゼは、同じくいまは手空きのサイラスの方を見て話の続きを促す。
「星が影を落とすってどういうことなの?」
「そのままの意味だよ。我々の住まうこの大陸は、大きな星の一部とする説があるんだ……」
天空を研究する学者がいるのだと、彼は話し始めた。
アレファンの化身である太陽は、東から上り、西へ沈む。それは太陽がこの地を回っているのではなく、太陽を基点にこちら側が周囲を回るがためにそう見えているそうで、更に、この地はある軸を中心に回転しているのだという。
「初めて聞いたわ」
「うん、このあたりの研究は聖火教会や十二神の神話と矛盾する部分も多い。月蝕は聖火が月から火を吸収するために起こるという説もあるし、十三番目の神が力を取り戻すためとも言われていて、要はどれが正しい事実であるのか、まだ判明していないんだ。そのせいだろう。……ただ、呼び方は統一されている。月蝕だ。月が上っている間のほんの僅かな時間、あのように欠けていくことを、そう呼ぶことにしたんだ」
「おー……言われてみれば、さっきより暗くなってんな」
「やだ。トレサ、焚き火を大きくしておきましょ」
「そうね! 暗くなっちゃうってことだもんね」
「大丈夫。星があるよ」
プリムロゼとトレサが暗闇を恐れて対策を練るので、安心させるように、それに、とサイラスが付け足す。
「月蝕はなかなか見られない現象でね。一生に一度の出来事かもしれないから、幸運の前触れだという言い伝えもあれば、不吉の前兆という噂もある」
「ふふ、怖がってばかりではいられないということですね」
オフィーリアの相槌に、プリムロゼが両頬に手をついて拗ねる。
パチ、パチ、と焚き火が爆ぜた。オルベリクが香辛料と味付けの塩を振りかけると鍋の中に籠もっていた香りが外へ逃げてくる。トレサとアーフェンが歓喜の声を上げる。
そうして、皿を片手に、月が欠けて満ちる様を八人でゆっくりと味わった。
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