テリサイネタメモ
サイラスの初恋の話

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「悪いが、キミに応えることはできない」
珍しくまともな返答をする学者を見かけたのは、ほとんど偶然だった。クオリークレストの酒場裏で、女は涙声で何か告げ、去っていく。
「……ふう」
テリオンはそのまま回れ右をして隠れるつもりだった。だが、サイラスが角より出てくるほうが早く、そして、テリオン、と彼は己の名を呼んだ。
「学者先生でも、まともに断ることがあるんだな」
「……。……ああ、もしかして、聞かれていたのかな。どうしてそのように言われるのかは分からないが、ああいう話には未練を残さずはっきりと示す方が優しさだろう」
「そんなものか?」
「……私はそんなものだろうと知っているし、経験則だ。キミも、いつか恋をすれば実感するときがくる」
まるで自分は初恋に未練が合ったのだと言うような物言いで、テリオンは少しばかり反応が遅れた。学者の女たらしも、鈍いところも、生来のものだと思っていただけに、恋だの愛だのを知っているとは思わなかったのだ。
「まるで、自分には未練があるように言うんだな」
「あるよ」
だから、すぐの返答にも驚いた。
「今はもう、ほとんどないけれど。……キミは、厠かな? 足元に気をつけるといい、板が劣化している」
こちらが聞いてもいないことを付け足して、サイラスは酒場へ戻る。
肩越しに見たその横顔が、この日、どうしてかテリオンの頭から離れることはなかった。



……から始まるサイラスの初恋を終わらせる旅と、その過程でテリサイになる話読みたいな〜。
ちなみにサイラスの初恋はとある書物の作者さんで、今はおばあさんで、既にお亡くなりになられているといいなあと思います。



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