カテゴリ「小説」に属する投稿[65件](3ページ目)
#ヒカキャス
#ヒカキャス長い話
第二話的な。
キャスがテメとアグちゃんとよく話し、その後ヒカとキャス二人きりでお話しています。
好きな女に肩を貸しても不埒な事をしないク国の王子様最高だと思う。
畳む
#ヒカキャス長い話
第二話的な。
キャスがテメとアグちゃんとよく話し、その後ヒカとキャス二人きりでお話しています。
誰かを思うことは素敵なことだ。
誰かを助けたいと思う自分だから、そう思うのかもしれない。
これは、何かをしてあげたい、なんて献身的な思想ではないのだ。
誰かを笑顔にできたら。のびやかに生きていけるのなら、それがいいと自分が思うだけ。
治療者は自分までもを駒のように俯瞰する。そうすれば自分が何をすれば明確になるから、自分の感情や思いは踏み出す一歩のエネルギーにしか使わない。
だから時々、自分に立ち返ったとき──自分の気持ちや考えで頭が一杯になってしまうと、どうして良いのか分からなくなる時がある。
「休む時間なのでは?」
治療記録や旅の記録を書き留め、身体を伸ばしがてら甲板に出ると、からかうように声が掛けられた。
「……そういうあなたもでしょう?」
「私は小腹が空いてしまったので」
正当な理由があると言ってテメノスはすまし顔をしたが、キャスティはこの時間まで彼が何をしていたのか知っていた。ソローネとパルテティオに酒に誘われていたのだ。酔いを覚ましがてら抜けて来たのだろう。
食堂兼団らん室からはアグネアとパルテティオの楽しげな笑い声が響いている。
「まあ、どちらでもいいわ。夜更かしはだめよ」
「やれやれ。あなたの前では私まで子供にされてしまいますね」
「ふふっ……」
「なんです?」
「子供の頃のあなたを想像してしまったの。背だけ小さくしてね」
呆れたように肩を竦めるので、ごめんなさい、と口先だけで謝る。
「お酒、私の分も残ってる?」
倉庫へ向かうテメノスの背中に呼びかける。乾物は場所を取るので倉庫の片隅にまとめている。中に入ったテメノスは、少ししてから両腕にいくらかの布袋を抱えて出てきた。
「ありますよ。なんなら私の分も差し上げます」
そのうちの二つを拾い上げ、荷物持ちを分担する。
「残念。あなたとお酒を飲もうと思ったのに」
「……遠回しに面倒を見ろと言ってます?」
「あら、どうして?」
「いえ……」
明るい銀髪を今だけは星空の色に染めた彼は、ややあって苦笑した。
「いいですよ。一緒に飲みましょうか」
キャスティは仲間の女性達の中で一番年上だ。それは記憶を取り戻す前からなんとなく察していたことでもあるし、記憶を取り戻してからも自分の年齢について深く意識したことはない。
鈍いのだろうと思う。何かをしたいと思う気持ちが強いから、自分がどうであるかなんて、制限にさえならなければ何歳でも関係ない。
ただ、話しやすさだとか、関わりやすさにはそういった部分が影響しているような気がする。子供たちから見れば年の離れた女性であり、初老の者から見れば若い女性と括られる。
自分はどうだろう。テメノスには話しやすいと感じる。年の近さゆえか、感覚的なところが言語化せずとも伝わるような、そんな錯覚をよくするのだ。一方で、オズバルドやパルテティオにも話しやすさを感じるし、ソローネ、アグネア、オーシュットは同性であるからそもそも話しやすい。
ヒカリは、どうだったろうか。
話しかけたのはキャスティだったが、その時は彼の傷を心配していただけなので覚えていない。
「キャスティさん、そろそろ眠くなってきた?」
「ううん、少し考え事をしていたの。ありがとう、アグネアちゃん」
グラスはすでに空だ。隣のテメノスはソローネ、パルテティオと談笑している。
スターになるためにと旅の資金を稼ぎ、ようやく旅に出て、ついこの間トロップホップで夜のひとときを盛り上げた。アグネアのたゆまぬ努力と舞台の上での輝きは仲間なら誰もが理解していて、年の近いヒカリも真っ直ぐに褒めていた記憶がある。
「……アグネアちゃんって、誰かを気になったことってある?」
「えっ?」
女性としての魅力をどこに感じるかは、人それぞれだ。それでもキャスティは仲間の中で自分が一番そういった話から縁遠いと思っている。化粧は肌に悩む女性のため、スカートを履くのは何かの折に端を切れば当て布にできるからで、髪の毛だって邪魔にならなければいいと思ってまとめているだけだ。
「え、ええ……うーん、あんまり考えたことなかったべ……」
「あら、そうなの? でもアグネアちゃんならすぐにいろんな人から声を掛けられるわよ。デートに行こう、一緒にお茶でもしよう、……色々言われるから覚悟しておかないと」
「そ、そうなんだべ……?!」
「なになに、何の話?」
ソローネがアグネアの様子に興味を持ったか、グラスを掲げて話に割り込む。パルテティオとテメノスも含め、話が膨らむ。
「じゃあさ、キャスティもそうやって言われたことがある?」
「さあ……治療のお礼にって言われたことはあったかしらね」
皆が皆、揃って視線を逸らすので気になった。が、何気なく壁の時計を見て、キャスティはあっと立ち上がる。
夜の航行は危険が伴うので船は錨を下ろして停泊する。しかしそうなると魔物の脅威に晒されることになるため、船夫達とは別で交代で見張りをすることにしていた。
いくら温暖な海でも、夜風を浴びていると身体が冷える。
だからキャスティは就寝時間の前に見張りをする仲間たちへ温かい紅茶を差し入れることにしていた。
その時間が、まさに迫っていたのだ。
「今夜の見張りって誰だ?」
「ヒカリだよ」
仲間達の会話を何気ない素振りで聞き流し、紅茶の準備をする。
「キャスティさん。私も手伝います!」
「ありがとう」
アグネアと並んで誰かのために準備をする。そういったことはこれまでにも何度かあった。もちろん、彼女が怪我をしないよう気をつけながらだ。
「アグネアちゃん、そこの袋を取ってもらえる?」
「はーい。これだね」
紙袋を受け取り、ナッツにチーズ、薄くスライスしたパンを追加する。本当なら彼の故郷の食事も作って上げたいところだが、東ではコメの入手が難しいので諦めた。
「ヒカリくんは見張りの時も鍛錬をしがちだから、栄養補給をと思って」
うんうんと頷くアグネアを見ていて、ふと、彼女に頼めばいいのではと考えが過った。年が近く、仲は良い。今はそう見ていないだけで、この先彼女が恋をする相手がヒカリになる可能性だってある。
なんて、そんなふうに思うのはお節介が過ぎるだろう。
人の心は移ろうものだし、相性だってある。仲間だからといって、結ばれたら幸せになれるとは限らない。
紅茶を水筒とカップに注ぎ、皆にも振る舞う。
「ありがとう。行ってくるわね」
「うん。いってらっしゃーい」
(ごめんね、変なことを考えて)
心の中で謝罪を唱えて、差し入れを手にキャスティはヒカリの立つ見張り台へと向かった。
夜の見張りは退屈だとソローネは言う。
だが、ヒカリは良い時間だと思う。鍛錬もできるし夜の凪いだ海の音は存外、耳に心地よい。
見渡す限り砂塵ばかりの国で育ったからか、水の音が聞こえるだけで身体が潤う気さえするのだ。
「──」
人の声を聞きつけ、ヒカリは素振りを止めた。
下方を見れば、角灯を片手に誰かが話をしている。
(……キャスティと、テメノスか)
端々に聞こえた声の高さから男女二人組だと分かり、角灯の照らす色と影の形から相手を推測した。
間もなく一人が離れ、部屋へと戻っていく。眠るのだろう。
もう一人はさらにヒカリの居る見張り台に近付く。
コンコンと柱を叩く音がしたので、梯子の方へ顔を出した。
「どうした」
「温かい飲み物と、差し入れよ。引き上げてもらえる?」
「ああ、助かる。いま……、」
荷籠を上げ下げできるよう縄の仕掛けが作られており、これを使ってキャスティは見張り番へ差し入れをしていた。いつものことだと知っていたから縄を下ろそうと手に取ったわけだが、ヒカリは不意に手を止め、呼び掛けた。
「そなたも来ないか。……少しだけでいいから」
キャスティの反応を伺う前に縄を下ろす。
返答がなんであれ、ヒカリは縄を引き上げるだけだ。キャスティが縄に水筒や紙袋をくくりつけたので、縄を引く。
「ありがとう」
「どういたしまして」
思うより近い場所から声が響いて、驚いた。
見張り台は大きな帆を支える柱の中腹にあり、一人二人座ることのできる広さがある。
そこに二人肩を並べて座り、ヒカリはキャスティから差し出されるままに水筒を受け取った。ちょうど喉が渇いていたので紅茶を飲み、紙袋を受け取る。
「もう休む時間だろう。引き止めて悪かった」
「いいのよ。まだ起きていたい気分だったから」
彼女からは仄かに酒気を感じた。それでテメノスか。
「飲んだのか。知らずに呼び付けてすまなかった」
「いいのよ。一杯しか飲んでないもの。それに、少し熱を冷ましたかったから」
「……顔色は特に変わっては見えないが」
「そうかもしれないわね」
角灯に照らされたキャスティの頬は、暖色を帯びていて、赤らんでいるのかどうかは分からない。ヒカリは何気なく見つめたつもりだったが、キャスティは片手の手袋を外すとヒカリの頬に手を伸ばした。
「ほら、あったかいでしょう?」
確かに彼女の手のひらは温かかった。
「……そうだな」
彼女の方から触れてくれたことを喜びたくて、ヒカリも思わずその手に触れていた。ようやく迂闊な行動を取ったと気付いたのか、キャスティが腕を引くので、軽く握り締めてから離す。
「酒を飲むと、隙が増えるのだな」
「さあ、どうかしらね」
ヒカリに握られた手を庇うように隠す、その仕草が彼女らしからぬものに思えて、ふ、と笑う。
「ヒカリくんは飲まないでしょう? 確かめようがないわよ」
「ク国を取り戻した暁には、流石の俺も酒は解禁する。カザンも飲みたがるだろうからな」
「……ふふ、そんな時でも仲間のことを思うのね。あなたは」
余裕を取り戻したらしいキャスティが、柔らかに微笑み、空を見上げた。それからおもむろに角灯の火を消す。
「どうした?」
「見て」
言われるままに見上げた空には月が浮かんでいた。
「二人で旅をしていたときのこと、覚えている?」
リューの宿場町からウィンターランドでオズバルドと出会うまでであるから、ひと月は二人で居ただろうか。覚えている。
「私、記憶を失ってはじめて頼った人が、あなたなのよね」
関わった人間で数えれば、ヒカリなど何番目かも分からない。だからそんな言い方をしたのだろうと思うが、彼女の言葉選びが妙に気にかかる。
「……カナルブラインで見上げた夜空の美しさを、誰かと共有したかった。だから当時も、野営の時に星空の話をしたのよね。それで、」
空を見上げていた瞳がヒカリを捉えた。灯りはなかったが、それでも月の光が淡く彼女の形を象り、その瞳の輝きまでもがよく見えた。
「今でも思い出すの。あなたもこの空を見て、綺麗だと言ってくれたこと……とても嬉しかったわ」
「……そうか」
なぜ、そんな話を始めたのか、しようと思ったのか、聞こうと思ったヒカリの肩に軽い衝撃が走る。
キャスティがもたれかかったのだ。
「眠いのか?」
「そうね、そうかもしれない。……少しだけ、休んでもいいかしら」
「ああ……」
好意を寄せる相手に頼られている。そうでなくとも彼女は大事な友であり、仲間であるので、肩を貸さない理由はなかった。
仮眠用の毛布を引き寄せ、彼女に掛けてやる。
彼女は気付いているだろうか。
あの時と違って、自分達は今の距離でも穏やかに寝られるということを。
(……他に大切なものがあるから、か)
ヒカリとて一つに選び取るつもりはない。大切なものは大切なまま、その上で彼女との関係を築けたらと思うだけだ。
仲間でなくなっても、顔見知りの友人となっても、それでもいい。助け合える存在で居られるなら構わない。
構わないが、できることなら、彼女がこうして眠る時に傍に居られるなら、嬉しいと思う。
「……よく、寝るといい」
頭を傾けて彼女の髪の柔らかさを頬に受けることもできたが、ヒカリはそのまま不動を貫き、見張りに徹したのだった。
好きな女に肩を貸しても不埒な事をしないク国の王子様最高だと思う。
畳む
#ヒカキャス
#ヒカキャス長い話
前からの続き。「友呼ぶ」シリーズからさらに恋愛色を強めたお話で、漫画で描こうと思ってたせいでヒカ→キャスの流れを端折ってますがそのうちその話も出てきます。
セリフ少なめですがトラベラーズはみんないます。
ヒカ4章後、キャス3章後の時間軸で船を手に入れた実プレイからの妄想で……定期船じゃなくなったので、プライベートな時間も多く取るようになったんじゃないかなあみたいな、そんな雰囲気をこれから出していくと思います。
畳む
ヒカキャスに落ち着くのがextraED再会後なので「長い話」としてまったりまとめていきます。
#ヒカキャス長い話
前からの続き。「友呼ぶ」シリーズからさらに恋愛色を強めたお話で、漫画で描こうと思ってたせいでヒカ→キャスの流れを端折ってますがそのうちその話も出てきます。
セリフ少なめですがトラベラーズはみんないます。
ヒカ4章後、キャス3章後の時間軸で船を手に入れた実プレイからの妄想で……定期船じゃなくなったので、プライベートな時間も多く取るようになったんじゃないかなあみたいな、そんな雰囲気をこれから出していくと思います。
ヒカリ達八人の旅人が海を行き来することに慣れた頃、使い慣れた定期船に別れを告げるときがやってきた。
トト・ハハ島の造船所にてパルテティオが買い付けた大きな船がこの度完成したのだ。
青い帆に、青い蛸の紋様。定期船をも凌ぐ大きさの船は、八人が乗るにしてはやや豪華だ。
「おお……!」
「見事だな、パルテティオ」
「な! いやあ、見事なもんだよ」
テリーとの契約書のやり取りを終え、帽子を片手で押さえながら歩いてくる彼と感想を言い合う。ヒカリは女性陣達が梯子を登り終えるまで仲間の白い帽子に視線を注ぎ、オーシュットに呼びかけられてようやく頭を動かした。
「パルティ〜! 海渡ろう!」
「おうよ! ヒカリ、俺達も乗るか」
「ああ」
賑やかな仲間達の声が甲板から響いてくる。縄梯子を上り、船の上に立つと、なるほど感嘆の息が漏れるほどの景色が広がっていた。
「すげえ〜……遠くまで見渡せるぜ」
アグネアとオーシュットが軽やかに駆け回り、ソローネは海を見渡し、キャスティは船の内部を物珍しげに見て回っている。オズバルドとテメノスが上船したところで、パルテティオが一通りの部屋を案内すると言って皆を呼び寄せた。
「こっちが男部屋で、こっちが女部屋だ。食堂はこっちだ……キッチンもあるから食料さえ買い込めば問題ねえだろ」
「助かるわ。航海中は壊血病になりやすいから。料理で防げそうね」
キャスティが気に入ったのは治療室とキッチンだ。
ぶつぶつと船に乗せる食材や調味料を確認し始め、その隣でオーシュットが肉を強請り始める。隣で調理器具を物色していたソローネが、包丁に指を添え、いいね、と呟いた。
「良いものが揃ってる。これもあんたが?」
「まあな。貴族様向けに着工されたものらしくてよ。装飾一つ一つに技巧が凝らしてある。安モンの包丁も悪かねえが……長く使うなら、揃えておいたほうがいいだろ?」
「へえ……。やるじゃん」
口笛を吹くソローネの背後、壁掛けの小棚を見ていたオズバルドが部屋の隅の樽を見つけて渋いため息をつく。
「……酒はあるのにコーヒー豆はないのか」
「挽く道具もありませんし、買い出しに行かれては?」
戸口で仲間を見守っていたテメノスが苦笑と共に提案する。
「倉庫もそれなりの広さでしたね。一ヶ月分の食料は保管できるのでは?」
「じゃあいっぱい買い込もう!」
楽しみを隠さずアグネアが両手を握りこぶしにして意気込む。彼女のまばゆい明るさに負けじとパルテティオが白い歯を剥き出しに笑い返した。
「それなら安心してくれ。船を動かすには人が必要だろ? ついでに食材も頼んでおいた。──一時間もしねえうちに、出航だぜ!」
グランド・テリー号は西へ向かって舵を取った。
ソローネが海図を手に入れ、目指すべき離島を決めたためである。
風が吹き、夕暮れ時の空は朱に染まっていた。この分なら夜も晴れるだろうと航海士が天候を読む。
「おーおー、アグネアも大興奮だな」
パルテティオが口笛を拭いた。その音を上書きするようにアグネアの高らかな歌声が船上に、空に響く。
「素敵ね」
ヒカリがパルテティオと同じくアグネアの舞と歌に感心していると、キャスティがやってきた。食事の準備のためにケープを脱いだだけなのに、夕陽に照らされたその身体の細さが目に焼き付く。
儚く倒れるようなひとではないと理解している。それでも、風に揺れる金髪や薄青の服の裾から覗く四肢がどうにも気になった。
「ご飯の時間よ、って呼びに来たのだけど……歌が終わってからにしましょうか」
「そうだな。お疲れさん、キャスティ」
「ふふ。ありがとさん、パルテティオ」
笑顔が交わされる。二人の仲の良さはこれまでにも見守ってきたので今更何かを思うことはなく、しかし、キャスティがこちらを見て瞬きをしたのでヒカリは軽く首を傾げた。彼女が何かに驚いたように見えたのだ。
「どうかした?」
「いや?」
「あら、そう。……じっと見ているから、話したいことがあるのかと思ったの」
歌を邪魔しないようにと思ったのか、キャスティは言いながら肩と肩が触れ合いそうな距離まで近付き、後半のセリフは一層声を潜めて言った。
姿をみとめるだけで鼓動が早くなる我が身だ。それだけでどうしようもなく緊張を覚え、落ち着き払って返せるまでに数秒時間を要した。
歌が終わる。パルテティオが手を鳴らし、船首で同じく耳を澄ませていたらしいオーシュットが指笛を吹いた。
「見惚れていた」
「え?」
「それだけだ」
心地よい風が顔に集まる熱を冷ましていく。
それからすぐキャスティはご飯のために呼びに来たと皆に声をかけた。ヒカリとは一度も視線が合わなかったが、それが普段と違う行動だと分かるからこそ、先程の言葉が彼女に響いたのだと理解でき、晴れやかな気分で仲間達の後に続いた。
畳む
ヒカキャスに落ち着くのがextraED再会後なので「長い話」としてまったりまとめていきます。
#テメキャス
#テメキャス短い話
何処かに載せた気もするんですが思い出せないので掲載。
なおまだ酔ったパティチャは見てない。
畳む
#テメキャス短い話
何処かに載せた気もするんですが思い出せないので掲載。
なおまだ酔ったパティチャは見てない。
酒はまだ三杯目だ。いや、三杯も注文を許してしまった自分を叱るべきだろう。
「ふう……。やっぱり暑いわね」
「窓際へ移ります?」
「ううん、大丈夫。ボタンを外せばいいだけだし」
近くのテーブルから視線が集まる。ローブでその視線を遮るように身を乗り出し、二つどころか三つ目を開けようとするその手を止めさせた。
「ふふ、あなたの手って冷たいのね。気持ちいい……」
少し触れただけなのに、そんな事を平気でのたまう。
「はあ……。頭が痛い」
「あら、頭痛? 薬を出しましょうか?」
「構いません。あなたが宿へ戻れば解決しますので」
畳む
#ヒカキャス
#ヒカキャス長い話
その恋が終わるまで、みたいな二人の始まり。冒頭。
数行抜けていたので追記。
これはヒカくんに恋の自覚があるから、同軸じゃないな……って思い直し、ヒカキャスに落ち着く方向でまとめることにしました。
最後はそれでもどうしてもあなたがいい、になる二人でいってもらう。書き終わるかはわからない。
畳む
#ヒカキャス長い話
その恋が終わるまで、みたいな二人の始まり。冒頭。
数行抜けていたので追記。
「そうね」
白波が、夜明けの光を反射し、真珠のように宙に飛ぶ。
「──だから私は、あなたの問に答えられない。だって私達には、他に大切なものがあるもの」
「……それは、そうだが」
ロストシードの酒場でテメノスと三人で飲んでいたときのことを思い出した。内なる陰の存在をどう取り扱ったものか迷っていたあの時、彼女達は変わらず寄り添ってくれた。
そこに親愛こそあれど、それ以上のものはない。
分かっていたはずのことだが、いざそれに答えが返らなかった今、ヒカリの胸は満たされるどころか砂漠のように渇きを覚えるほどに飽いていた。
「ヒカリくん。あのね」
そこへ、水を一滴垂らすように、彼女は続けた。
「嬉しくないわけじゃないの」
残酷なほど優しい言葉だ。だが、不誠実だとは思わなかった。彼女に限って、問いをはぐらかし、答えを曖昧にすることはない。裏を返せば、この曖昧にも思える返答こそが、彼女なりの誠意であり、ヒカリの問に対する回答なのだと分かる。
「……可能性はあるのか?」
一握りの希望でも構わないと問いを重ねれば、キャスティは困ったように微笑んだ。聞き分けの悪い子供を宥めるような穏やかな顔つきだった。
「じゃあ、こうしましょう。旅路の間だけでいいから、怪我をしたら必ず私に診せて」
「それは……いつもと変わりないように思うが」
答えはある種出ているも同然なのではとヒカリが返答を悩めば、彼女はゆるく首を振った。
「あなたの傷が治るその時まで、ずっと隣に居るということよ。……二人でゆっくり話し合っていきましょう。ね?」
凪いだ海のように、その声はどこまでも穏やかで、ヒカリの傷をも慰めるように響いた。
これはヒカくんに恋の自覚があるから、同軸じゃないな……って思い直し、ヒカキャスに落ち着く方向でまとめることにしました。
最後はそれでもどうしてもあなたがいい、になる二人でいってもらう。書き終わるかはわからない。
畳む
#コンビ以上カプ未満
#テメキャス短い話
何回告白しても伝わらないやつの派生。
通常なら好きって言わないんだよなあ……とおもったので、カプタグをつけて逃げます。雰囲気はコンビ寄りです。
畳む
#テメキャス短い話
何回告白しても伝わらないやつの派生。
通常なら好きって言わないんだよなあ……とおもったので、カプタグをつけて逃げます。雰囲気はコンビ寄りです。
好きですから」
「あら、嬉しい」
いつからかそんなやり取りが定番になった。嬉しい、と返すのは、実際に荷物を持ってくれただとか、手を貸してくれただとか、そんな理由からであって、時と場合によっては「からかわないで」と返す時もある。
「また始まったよ」
ソローネが笑う。アグネアは毎度新鮮な反応を示し、オーシュットにおいては「テメノスはほんとMomが好きだな」なんて言って流している。
「軽く受け流して良いものなのか?」と狼狽えていたヒカリですら、今日も元気そうで何よりだと頷いていた。
「テメノスも飽きねえなあ」
パルテティオもアグネアと同様初めは照れていたというのに、最近は苦笑いを隠さない。オズバルドに至っては、何回目だ、とコメントをするばかりだ。
「それはいいから、みんな、朝ごはんはしっかり食べてね」
だからキャスティもこうして受け流すしかないのだ。
だって、テメノスが「好きですよ」なんて直接的なことを言うのは、みんなの前だけと決まっているから。
最後のキャンプ地を決めてから、キャスティはこのことについて頭を悩ませていた。彼のその発言が冗談であれ、何であれ、受け止められないなら断るべきだし、そうでないにしても、確かめた方がいいと考えていた。
旅が終われば、きっともう、こんなふうに言い合うことはなくなる。
雪が降り積もっていけばその重みを段々と感じるものだ。しかしそれが溶けて流れていってしまえば、積もった想いは思い出に変わる。
そのどちらを選ぶのか、成り行きに身を任せるにしても、予感を抱いていたかった。
コニングクリーク近くのブドウ畑にて、キャスティはぼんやりと小屋の傍のベンチに腰掛けていた。
町を臨む丘の上にあり、海沿いであるから風がよく吹いて、水平線の向こうまで見渡せる。この景色が好きだった。
(……一等星)
暮れなずむ空ながら、輝く星を見つける。オズバルドの友人曰く、星はいつだってそこにあるものと、季節ごとに位置を変えるものとがあるらしい。
パルテティオに促されて眺めた望遠鏡の向こう側は、肉眼で見てもやはり美しいなと思う。
「こんなところにいたんですか」
遠目に見えていたから、近付いて来るのを待っていた。ふう、と一息ついたテメノスは首筋の汗を軽く拭い、決まっていたかのように隣りに座る。
「飲む?」
「いただきます」
水筒を渡すと彼は何口かまとめて飲み干し、大きく息を吐いた。
「おじいさんみたいね」
「まだおじさんでありたいものです」
ふふ、と笑って水筒を受け取る。
「なにかあった?」
キャスティがブドウ畑に出かけたことは、ヒカリとオーシュットにしか伝えられていなかった。どちらかまたは二人に聞いてここに来たというなら、なにか理由があったのだろうとおもったわけだが。
テメノスはゆるく首を振り、特に何も、と呟くように応えた。
「ここはやはり、眺めがいいですね」
「そうよね。好きなの」
「私もですよ」
何気なく感想を口にしたつもりだったのに、穏やかに返す、その横顔を見つめていると、もう一度言ったほうが良い気がしてしまった。
「ねえ、聞いてくれる?」
「なんでしょう」
「私も好きなの」
「? ええ、はい……」
景色が、と言いかけたのだろう口が何も言わなくなった。
瞬きを一つ。驚く顔はいつにも増して若く見え、苦笑した。
「そんなに驚かなくてもいいじゃない」
「……驚きますよ」
「いつも言われる気持ちがわかった?」
「そうですねえ」
彼は壁にもたれるようにして背筋を伸ばし、藍色に染まりつつある空を見つめた。
「嬉しいものですね」
彼の目にも見えるだろうか。太陽の光が残るこの時間でも、その輝きが分かるあの星が。
あとで、教えてあげてもいいかもしれない。
カナルブラインで見た星空に感動したあの時のように、きっと今夜の星空は一層美しく目に映るだろうから。
畳む
#雨に花束関連
ヒカくん視点の、キャスの記憶の話。
パティチャ3章でなぜ彼がああ言ったのか?の理由付け的な感じです。ダイジェストメモ。
「水たまりに写る彼女は」を読む
タイトルについて
なぜ「水たまりに写る彼女は」としておいて、終わりが砂漠の場面で水たまりなんて無さそうな環境にしたのか?というとですね、
冒頭の水たまりを避けるキャスの描写から、記憶のある頃のキャス=水たまりに写った彼女を暗喩してるつもりなんですね。(暗喩なんでわかんなくて大丈夫だしダイジェストの書き方は不親切なので気にしないでください)
それで、そこから雨を経由して水に関連するキャスの振る舞いについて違和感を募らせるヒカくんですが、
彼自身は記憶を取り戻したキャスについては言及しないことが原作で明らかなので(プレイヤーに委ねられてるともいう)、
私は、違和感の正体をサイで見ていて、あらかじめ何らかの予測を立てており、その結果あのように「記憶については聞かない」という発言に至ったのなら物語としてもヒカくんとキャスの関わりとしても美味しいなーと思ったので、
タイトルは「水たまりに写る彼女は」として、本編ではヒカくんは自分が接してきたキャスを信じる(記憶のあった頃のキャスには言及しない=水たまりに写る彼女の姿を見ない)という形を取りました。
ヒールリークスに先に行ってたからこその妄想ですねこれは。行ってなくてもヒカくんは聞かない気がしています。そういう人だよ、過去に何があったかより、今何をしているかを尊重してくれる人だよ……自分もそれで生きてきたと思うから……。
畳む
ヒカくん視点の、キャスの記憶の話。
パティチャ3章でなぜ彼がああ言ったのか?の理由付け的な感じです。ダイジェストメモ。
「水たまりに写る彼女は」を読む
タイトルについて
なぜ「水たまりに写る彼女は」としておいて、終わりが砂漠の場面で水たまりなんて無さそうな環境にしたのか?というとですね、
冒頭の水たまりを避けるキャスの描写から、記憶のある頃のキャス=水たまりに写った彼女を暗喩してるつもりなんですね。(暗喩なんでわかんなくて大丈夫だしダイジェストの書き方は不親切なので気にしないでください)
それで、そこから雨を経由して水に関連するキャスの振る舞いについて違和感を募らせるヒカくんですが、
彼自身は記憶を取り戻したキャスについては言及しないことが原作で明らかなので(プレイヤーに委ねられてるともいう)、
私は、違和感の正体をサイで見ていて、あらかじめ何らかの予測を立てており、その結果あのように「記憶については聞かない」という発言に至ったのなら物語としてもヒカくんとキャスの関わりとしても美味しいなーと思ったので、
タイトルは「水たまりに写る彼女は」として、本編ではヒカくんは自分が接してきたキャスを信じる(記憶のあった頃のキャスには言及しない=水たまりに写る彼女の姿を見ない)という形を取りました。
ヒールリークスに先に行ってたからこその妄想ですねこれは。行ってなくてもヒカくんは聞かない気がしています。そういう人だよ、過去に何があったかより、今何をしているかを尊重してくれる人だよ……自分もそれで生きてきたと思うから……。
畳む
#テメキャス
#テメキャス「キスしないと出られない部屋」
書けないかと思ったけどなんとかまとまりました。
2025/3/31修正しました。
畳む
#テメキャス「キスしないと出られない部屋」
書けないかと思ったけどなんとかまとまりました。
2025/3/31修正しました。
用事を思い出したから、後で聞くわね」
キャスティが席を立った。
引き止める隙もなく、早足で去っていく。酒場の扉の鈴が鳴り、テメノスは中途半端に浮かせた手を大人しく引き戻した。
「これで何回目だ?」
一つ空席を挟んだ隣に座っていたオズバルドが指摘する。耳の痛いそれに、ため息を返した。
「数なんて数えていませんよ」
「俺の見る限りで、十三回目だ」
「……十二回目です」
「……数が合わんな」
「答え合わせは遠慮します」
紅茶を含み、それ以上の問いかけを拒む。カウンターへ置いた紅茶の水面に写る酒場の照明を見つめて、思う。
──まさか、ここまで手こずるとは思わなかった。
ソローネの見つけた地下道を探索する途中、不可思議な部屋に落ちたことからテメノスとキャスティの関係は『少々』変化していた。
これまではソローネも含めて冗談に乗っかる間柄だったというのに、あれからぴたりとキャスティがテメノスに関わってこなくなったのである。無論皆の前ではいつも通りに振る舞い、先程のように言葉を交わすこともあるが、そのまま話し込もうとすると断られる。
ヒカリやパルテティオはいつもと変わらないだろうと言っており、オーシュットは変化にこそ気付いているが「ニンゲンも大変だな〜」の一言で片付け気にしていないようだ。残る女性二人はテメノスよりもキャスティに味方をしているようで、アグネアは申し訳なさそうに話しかけてくるが、ソローネはだから言ったのにと肩を竦めるだけで匙を投げている。
つまり唯一の既婚者であるオズバルドがテメノスの味方とも呼べる訳だが、彼においては変化を記録しているだけで、アドバイスを求めようものなら市政の本を読めと言われるばかりだ。
「──手強いな」
密室で二人きりという、通常なら有効活用するべき場面で、密室の謎を解くという方向に頭を傾けてしまったことが良くなかった。
いや、あの場面でなぜ口付けで鍵が開くのかという疑問を持たないことなど無理だ。鍵師や絡繰師など機会があれば、話を聞いてみたいものだ──と考えてしまったところでテメノスは肘をつき、組み合わせた両手に額をつけるようにして吐息した。
(……やはり、このままがいいのだろうか)
謎が何物にも代えがたいものであるから、惹きつけられる。人に向ける興味関心とは別のものであるので、こればかりはどうしょうもない。
これまではそれで良かったはずだ。それなのに、どうしてこんなにも彼女に焦がれてしまうのだろう。
「……」
茶器を見下ろして、思う。
──彼女の淹れる紅茶を、久しく飲んでいない。
それから最後の夜を経て、二人の関係は再びもとに戻っていた。謎を解き明かす過程で、壮絶な闘いがあり、気まずいなどと言っていられない状況だったことも理由だろう。
仲間を慰め、ときに慰められる側に立ちながら、死闘を乗り越え皆で待ち望んだ朝日を見た。──あの時の光景は、目に焼き付いて今も離れない。
金色に輝く朝日を浴び、文字通り世界を救った彼女は、これからも多くの病や怪我に悩める者を救い、救う者を育てていくのだろう。その彼女が、どんな理由であれ自分を意識しているというなら?
取り組む理由としてはそれで十分だと開き直った。
もとより叶うはずもないと考えていたのだから、今更何を恐れよう。
旅の目的も終え、世界を救い、共に旅をする理由は失った。カナルブラインに戻ってきた八人は、このままここで別れるのも寂しいから、というアグネアの提案に乗り、再び、あのキャンプ地へ向かうことにした。
ここしかない、と思った。テメノスは静かに時を待った。
腹を満たしたオーシュットがもう寝る、と言って地面に丸くなったとき、頃合いだと考えた。ヒカリが笛を鳴らし、アグネアが踊り始め、オズバルドが感嘆の息をこぼして二人を見守っている。パルテティオが注いだ酒を手にソローネに呼び掛けたのを見て、テメノスもまたオーシュットに持たされた干し肉を片手にキャスティの傍へ移動した。
「食べませんか?」
「有り難いけど、お腹はいっぱいなの。誰かに食べてもらいましょう」
両手を上げて断る姿が妙に可愛らしい。
地面に置かれた木皿の上へ肉を置き、よいしょ、とキャスティの隣に腰掛けた。
「……いい夜ね」
「ええ、本当に」
キャスティがヒカリ達の方へ視線を向ける。その横顔を見守っていたかったが、テメノスは意を決してキャスティの手を取った。
「散歩に行きたいので、付き合ってもらえませんか」
「え?」
断らないでほしいと願いながら、手を離す。キャスティはさして気にした風もなく頷いた。
「じゃあ、ついでに水も汲みにいきましょうか」
バケツを手に近くにある小さな湧水池を目指す。キャスティが事前に毒性について調べており、この池の水は飲んでも良いということになっていた。
彼女は何も言わなかった。静かにテメノスの後をついてくる。
「……長いようで、短い旅でしたね」
「ええ、本当に」
月の光が落ち、池の水面はキラキラと輝いていた。穏やかで、静かな水の音に耳をそばだてるように少しの間沈黙し、ややあって、キャスティに手を差し伸べる。
「貸してください。掬いますよ」
「ありがとう。お願いするわね」
以前ヒカリと当番になったときは重く感じた水だが、旅を経て多少は筋肉がついたのだろうか。一つ程度ならふらつくこともなく、水を掬う。
キャスティは直ぐ側に立っていた。水面に反射する彼女の顔色は伺えない。
「私に話したいことがあるのでしょう?」
顔を合わせると、キャスティはどこか苦笑するように言った。
「ええ、まあ」
バケツを置き、立ち上がる。
「……聞いてくれますか?」
「最後だもの。わだかまりを残したくないのは私も同じ。……覚悟はできているわ」
「覚悟、ですか」
妙な言い回しが引っ掛かり、テメノスは首を傾げた。
「ちなみに、どうして覚悟が必要なんです?」
「あなたの話を聞いてから答えるわね。どうぞ」
そう言われると先に話したくなくなるものだが、キャスティの顔色は真剣そのものであったので、逡巡の末、ようやく時間を得られたのだからと思い直し、小さく息を吸った。
「順番を間違えてしまったことを、反省していたんです。……いくら密室から出るためとはいえ、女性に乱暴を働くなど合ってはなりません。すみませんでした」
「……私は早く出たかったから、気にしなくていいのよ」
「それでも、ですよ。不本意な状況であれ、先に伝えるべきでした。……あなたと二人きりでいることも、口付けることも私にとっては幸運であり、不運などではなかった。私はあなたとだからあの状況を楽しめたのだと」
「そう……。それなら、良かった」
段々と俯きがちになる彼女の様子を見て、テメノスは言葉に迷った。
「キャスティ。もう一度、私に機会をもらえませんか。──あなたの笑顔を一番近くで見られる人になりたいので」
返答は、なかった。
衣擦れの音がした。キャスティが握り合わせていた両手を顔に押し当てる。
「どうしました?」
「ごめんなさい、火照っちゃって。……まるで告白されたみたいに聞こえて、照れちゃったの」
すぐに冷ますから、とこちらに背中を向け、氷柱を生み出そうとするキャスティに近寄り、両の手首を掴む。
「え?」
「……今のは告白のつもりだったので、熱を冷まさないでください」
「えっ、ええっ?!」
手を離し、代わりに後ろから抱き締める。思うより華奢な身体は想像以上に柔らかく、腕が吸い付いて離れない。
「て、テメノス……ねえ、離れて……」
「返事をくれるのなら考えます」
ああ、だの、うう、だとキャスティは母音をブツブツと唱えて片手で額を押さえていたが、大きく深呼吸をした後、テメノスの腕を軽く引っ張った。
「顔を見せてくれない? 見たいわ」
「……いつもと変わりありませんよ──」
腕の力を緩めるのと、頬に手が添えられたのは同時だった。リップ音と共に口端に触れた感触に目を瞠り、困ったように笑うその顔が月光に照らされてよく見えたとき、同じようにその下顎に手を添え、唇を触れ合わせていた。
「……本当はね、忘れないといけないと思っていたの」
バケツを片手に、もう片手にキャスティを引き連れ、テメノスは森の中を散歩していた。このまま仲間達のところへ戻っても良かったものの、まだお互いに話し足りない部分もあったからだ。
「あなたの顔を見るたび思い出しちゃって……あなたは私のことをなんとも思っていないと思っていたから、余計に、気にし過ぎる自分が嫌だったのよね」
「考え過ぎてしまったわけですね。……おかげでやきもきさせられましたよ」
「悪かったと思ってるわ。でも、あなたは恋愛なんてしないのだと思っていたから」
子供のように軽く手をゆすり、キャスティが近寄る。顔を覗き込むように彼女はその清らかな目にテメノスを写した。
「謎は、何物にも代え難いごちそうなのでしょう?」
「……ええ、否定はしません。なので考え直すことにしたんです」
上体を屈め、キャスティの額に唇を寄せる。逃げることなく受け止めてくれた喜びをしっかりと味わい、薬草の香りと共に記憶する。
「どちらも私には必要なものかもしれない、とね。……あなたにとって重荷とならないことを願いますよ、キャスティ」
「あら、優しいのね」
「私はいつでも優しいので」
「うふふ。……そうだったわね」
腕を組むように身を寄せてくれたことが何よりも喜ばしく、足を止める。少しの間、離れていた分の想いを分かち合うように二人静かに身を寄せ合っていた。
畳む
#雨に花束関連
サブストを3つほどやりまして。
メリアのサブストにおける私の煩悩感想です。
修正:メリアが全部メアリになってたので直しました。

以下
#ネタメモ
グラヴェルの姉妹の方々の話。これをキャス・ヒカ・テメ・パルでやりまして、なんやかんやでキャスが全部いいところを決めてくれたのと、その後連れて行く流れをテメが引き取ってくれたので、実プレイ妄想として書き留めておこうと思いました。
パルは傭兵呼びをして物攻ダウン係でした。良いダメージを入れていくヒカ・テメで倒せずキャスのねらい撃ち(修正)で倒すという……ね!ブレイクもキャス(またはパル)でした。
この話が切なすぎるというか、いいお話だったというか……ヒカ・キャス・テメが関わるいいお話っぽさがあったので、思い出に残ってしまいました。
畳む
#テメキャス
#テメキャス短い話
メリアのサブスト後。付き合ってる二人の妄想。
冗談でも娼婦してたら通うとかは言わんか……言わんなあ……と思い。
きっと向いてないと思うわと、のほほんとのたまうキャスにいや向いてはいると思……思……となりつつもそれを言いたくはないし他の男が触れるなんて考えたくもないテメがいたらいいなって思った私でした〜
畳む
サブストを3つほどやりまして。
メリアのサブストにおける私の煩悩感想です。
修正:メリアが全部メアリになってたので直しました。

以下
#ネタメモ
グラヴェルの姉妹の方々の話。これをキャス・ヒカ・テメ・パルでやりまして、なんやかんやでキャスが全部いいところを決めてくれたのと、その後連れて行く流れをテメが引き取ってくれたので、実プレイ妄想として書き留めておこうと思いました。
パルは傭兵呼びをして物攻ダウン係でした。良いダメージを入れていくヒカ・テメで倒せずキャスのねらい撃ち(修正)で倒すという……ね!ブレイクもキャス(またはパル)でした。
この話が切なすぎるというか、いいお話だったというか……ヒカ・キャス・テメが関わるいいお話っぽさがあったので、思い出に残ってしまいました。
畳む
#テメキャス
#テメキャス短い話
メリアのサブスト後。付き合ってる二人の妄想。
娼婦にならずに済んで良かった、と思っちゃったのよね……」
「当然です」
メリアの話が落ち着いたその夜のこと。仲間達との穏やかな晩餐を終え、テメノスはキャスティと共に宿へ向かっていた。
仲間達には明かしていないが、二人はいわゆる恋人関係にある。
旅の目的を果たし、報告なども終えて、仲間達の旅路に残された謎でも追いかけようかと散歩に出かけたはずが、運命の相手と出会ってしまったというわけだ──言うほど運命とやらを信じてはいないが。
いや、実のところテメノスもさほど強い気持ちを持っていなかったはずなのだが、ティンバーレインで一躍、時の人となったキャスティが、仲間を増やすためと言って早々に離脱しようとしたので、それを引き止めるうちにいつの間にやら傾倒してしまったのだ。
「記憶喪失という弱みに付け込む人間も居たはずなのですから、あなたは相当に運が良い。パルテティオが言っていたのも頷けます。……日頃の行いが良いのでしょうね」
「あら、褒めてくれるの? ありがとう」
暖かな宿へ戻ると、どちらからともなく吐息がこぼれる。
キャスティは何も言わず、そのまま大人しくテメノスについてきたので、部屋の中まで導いた。
仲間達の泊まる宿とは別で確保した部屋で、余計な気を使うことはない。
「……部屋も暖かいですね」
「そうね。暖炉を焚いてくれていたみたい」
扉を閉じても他愛ない会話を続けていると、キャスティはおもむろにテメノスを見上げる。応じて顔を寄せ、唇を軽く重ね合わせた。
「おかえりなさい。疲れたでしょう?」
「ただいま戻りました。歩くだけで済みましたので、そうでもありません」
細腰に手を回す前に腕を掴まれ、押し戻される。衛生面を配慮したい彼女の意見に従い、軽く着替えを済ませ、手洗いを終えてようやく抱擁を交わした。
二人きりになることなど、旅の最中ではありえない。男女であるから配慮こそしてもらえるだろうが、お互い、仲間達に明かすつもりがないので、こんなふうに宿が複数ある町でない限り、触れ合うことはほとんどなかった。
キャスティも軽く汗などを流しており、その身体は温まっていた。肩口に鼻先を寄せると、いい香りがする。髪はほどかれ、滑らかな金色の髪が肩に落ちている。指通りが良く、後頭部に手を添えるだけで満たされるものがある。
額を重ね合わせ、小さな笑い声を交換するように口付けた。
肌を重ね合わせているから余計に思うのだろう。彼女のこんな姿を知るのは、自分が最後でいい、と。
冗談でも娼婦してたら通うとかは言わんか……言わんなあ……と思い。
きっと向いてないと思うわと、のほほんとのたまうキャスにいや向いてはいると思……思……となりつつもそれを言いたくはないし他の男が触れるなんて考えたくもないテメがいたらいいなって思った私でした〜
畳む
#テメキャス
#テメキャス「キスしないと出られない部屋」
終わり。あと1話だけ書きます。
この話はテメ→←キャスだったみたいです。
畳む
#テメキャス「キスしないと出られない部屋」
この話はテメ→←キャスだったみたいです。
(本当なのにね)
離れていくテメノスを見上げながら思う。
彼にとって、キャスティの持つ感情などただの信頼でしかない。分かっていたことなので苦笑一つで受け入れられた。
「これからどうするの?」
「……それを一緒に考えてもらえると助かります」
「分かった」
どうやらテメノスは戸枠に書いてあるだけのことに大人しく従うつもりはないようだ。試す価値はあるのに、と思いつつ、キャスティも改めて室内を検分する。
ベッドの下もしっかりと確認し、ソローネなら使えそうな針金も見つけた。
「これで開けられないかしら」
鍵穴に差して手を動かしてみるが噛み合うような感触はない。もう一度錠前を確かめたが、やはり鍵はかかったままだ。
「上へ戻ることができればいいのですがね」
共に頭上を見上げ、沈黙する。
天井には固く閉ざされた鉄の門があり、見るからに、押し開くことは難しそうだ。
「棚と……他に痕跡がないか調べるか」
独り言を呟いてテメノスが検証を始める。
こころなしかその横顔が楽しそうに見えたので、キャスティは密かに納得した。
すぐに部屋を出たいわけではないのだろう。目の前に出された美酒をとことん味わいつくさねば気が済まない──。
(困った人ね)
彼自身の性格と嗜好が一致しているからの行動なのだから、勝手に悲観しては失礼だし、どのみちここから何かしらの手段で出られるならそれに越したことはない。
テメノスが棚を動かしたいというのでそれを手伝い、家具の類が一切動かせないことを確認しても、キャスティはあまり深刻に考えてはいなかった。しかしある程度調べるために動き回ったことで、気付くことはあった。
「……空気が足りるといいのだけど」
ポツリと、ほぼ無意識に呟く。この部屋に落ちてから三十分は経過しただろうか。窓がないので外の様子は伺えず、砂時計を取り出し、時間の目安とする。
「なにか分かりましたか?」
「そうね。あまり悠長に構えていると、酸欠になって二人とも死んじゃうかも……ということなら」
「……恐ろしい話だ」
「あなたは? なにか分かったの、名探偵さん」
ベッドに腰掛け訊ねるとテメノスは両手を天井へ向けて首を振った。
「お手上げです。調べようにも痕跡も何もない。……調べるほどこの空間の異質さを感じるだけです」
「そう……」
大人しく彼も隣りに座った。
「せめてお湯を用意できれば、紅茶でも淹れてゆっくり考えられたのでしょうけど」
「構いませんよ。こんな場所で飲むより、宿でくつろぎながら飲むほうがずっと味わえるはずです」
「……それで、結論は出た?」
キャスティは早々に彼の行動意図も理解していたからそう訊いたわけだが、テメノスは返事を渋った。ため息をつく。
「このような形で、行為に及ぶのは不本意ではありませんか?」
「あなたと閉じ込められたことが不幸中の幸いだったから、あまり気にしていないわ。知らない人だったら困ったでしょうし、アグネアちゃんやソローネだったらそれこそすぐに出ていると思うし……」
「……そのくらいのことだと」
「命と比べたら、そうかもしれないわね。──ごめんなさい、あなたの気づかいを有り難いとは思っているのよ」
彼の顔が真剣味を帯びたので慌てて付け足した。
「でも、ここで足踏みをしてはいられないから」
「……分かりました。あなたに従います」
「本当?」
「なので、あなたからしてもらえますか」
にこやかに言うと、テメノスは目を閉じた。
「どうぞ」
「え?」
意図を捉えきれず戸惑う。
(なんだか……妙ね)
彼がこうも素直に応じる背景は、一体なんだろう。本当に出られる手が他になかったからなのか。どうなのか。
「なにか隠してる?」
「いいえ? 何も」
キャスティの問いかけを彼はフフと軽く笑い流す。片目を開けて、茶目っ気たっぷりにこちらを見た。
「先程のあなたを真似しただけです」
「……あらそう」
やはり、ずっと二人きりというのは良くない。キャスティは表情を変えずに立ち上がり、鞄の中から小瓶を取り出した。
「……何をする気です?」
「私からしていいのでしょう? 大丈夫、扉が開いたら手を借りて運ぶから」
安眠草を乾燥させ、煎じたものだ。軽く吸い込むだけですぐに眠気に誘われ、意識を手放す。
手巾を水筒で軽く濡らし、そこへ安眠草を振りかける。水を吸って布に色が沈着したのを見て、テメノスへ差し出した。無理やり押さえつけては先程の彼と同じになってしまうので、あくまで選択を委ねる。
「……」
ジロリと睨まれたので微笑み返す。
少しの間膠着状態が続いた。テメノスは黙ってこちらを見上げるばかりで、キャスティが僅かにでも動けば杖を振れるよう片手に握り込んでいる。
手袋の先に湿り気を覚えて、ため息と共に折りたたむ。
「……目を瞑って」
素手で触れると逡巡の末、薄青の瞳が瞼の奥に閉ざされた。前髪を払い除ける。僅かに痙攣を示した眉間を軽く笑って、緊張しなくていいのよ、と囁いた。
こめかみに触れて駄目だったとして、挨拶に使われる場所が駄目とは限らない。額に触れて、すぐに扉の状態を確認しようと身体を離したとき、手を掴まれた。
「まだ開いていないと思います」
確信を持った声に、キャスティも勘付いた。
「その口振り、何か見つけたのね」
「……そうですね。ええ、白状しましょう──もう少し屈んでくれます? そうです、こちらに」
「なに──」
そんなに大きな声で話せないことなのかと眉を潜めながら肩を近付けた。相手が目を閉じているから問題ないと思った。
それが悪かった。
柔らかいものに触れた。それを実感したときには天地がひっくり返り、自分の身体はベッドの上にあった。
瞬きをする。視線が一瞬重なって、名前を呼ぼうとしたその時になって、何をされたのか、されようとしているのか理解し、動けなかった。
「──ッ、テメノス」
触れ合わせているだけなら唇を動かすことはできる。どうしたかったのか自分でも分からないが、名前を呼んだ途端、口の中を埋めるように何かが入り込んできて喉が震えた。
肩を押したが男性の身体を押しのけることはできず、服を引っ張るがローブのせいで引き剥がせない。
(息が、)
呼吸の仕方など分からない。目眩を覚え、それが酸欠によるものだと気付いてとにかくもがいた。
「はあっ……は、っ」
彼が離れてくれたので肩で息を繰り返し、慌てて彼から起き上がる。
「キャスティ」
とにかくここから出たかった。外からやって来る足音に気付き、引き止められる前に扉へ向かう。
ドアを押し開けると、見覚えのある仲間の顔がそこにあった。
「キャスティ、テメノス──」
付き合いの長いヒカリが目の前にいたから、思わず抱きついた。
「助けにきてくれたのね、ありがとう」
誰かに触れると落ち着いた。オーシュットに問われる前にぱっとヒカリからも離れ、仲間の顔を見上げる。
「キャスティさん! テメノスさんも無事?」
「ええ。でもちょっと空気が薄くて、眩暈がするの。先に地上へ戻りたいわ」
アグネア、ソローネ、パルテティオが土の階段を下りてくる。
「おいおい大丈夫かよ、キャスティ」
「あら、手を貸してくれるの? パルテティオ」
「いいけどよ」
仲間達の体温に触れて、熱を忘れる。心配顔のソローネには大丈夫、と微笑みかけて、パルテティオ、オーシュットと並んで地上へ出た。
残されたテメノスは部屋の外で交わされる仲間達の声を聞きながら、ゆっくりと腰を上げた。
衣服を整え、ローブのシワも伸ばして部屋の外へ出る。
「テメノスさん!」
「心配をかけましたね、二人とも」
「……」
オズバルドは何かあったことを察したのだろう。テメノスをじっと見定めていたが、おもむろに背を向ける。
「中は部屋だったのだな」
「ええ。おかげで腰を痛めずに済みました」
「それなら良かった……!」
アグネア、ヒカリの素直な心配を受け止め、地上へ促す。
一人、テメノスが歩き出すまで動かずにいたソローネだったが、声を掛けると静かについてきた。階段を上り、外へ出る。地下にいるのと、森の中ではこうも空気が変わるのかと深呼吸を通して実感した。
「……悪かったね」
「気にしないでください。楽しんでいたのは事実なので」
「ならいいけど」
自分が見つけた地下道だったから、余計に気負わせてしまったのだろう。テメノスは穏やかに、次はもう少し慎重にいきます、と念を押して慰めた。
「あのさ」
ソローネは甘えるようにテメノスの腕に肩を寄せたかと思えば、ニヤリと口角を上げた。
「二人、何かあった?」
「何もありませんよ」
「ふうん……」
つまらないと言わんばかりに離れ、彼女は細い肩を竦めた。
「ま、手を出すときは気を付けることだね」
「何もありませんから」
「はいはい」
本当は、あの部屋に手がかりなど何もなかった。
刻まれた文字の不可解さも、文字に従えば開くという鍵の仕組みも謎に包まれていた。最終的にあの部屋の中だけではどうにもならないと判断したから、キャスティの意見に賛成し、行動に移したわけだが──もしかしなくとも自分は順番を間違えたのだろうと思っている。
はじめは揶揄われているのだと思った。
ほんの少し冗談を言い合い、気分を解すためのものだと。しかし、どうやら存外彼女は真剣に言っていたようで、テメノスがそれに気付いたのは口付けを終えてからになる。
好かれているとは思っていなかった。仲間としての信頼しか向けられていないのだと思っていた。
テメノスの知る彼女なら、驚くだけで、すぐに逃げはしなかっただろう。
普段焦りを見せないからこそ、酒や熱以外で簡単に頬を染めないからこそ、その理由に期待してしまう。
「……次はもう少し場所を選ぶか」
「なにか言った?」
「いいえ」
この際、酒の力を頼ってもいい。
答えを得るには、多少の犠牲はつきものだ。
テメノスは杖をついてソローネの隣をのんびりと歩く。
先頭を歩くキャスティと目が合った。
その表情がさっと変わったのを見て、早々に決着をつけなくてはならないなと、テメノスはゆるやかに微笑んだのだった。
畳む
#ヒカキャス短い話
アグちゃんとヒカくんでは何も始まらないためソロちゃんが入り、やっと始まるヒカキャス……みたいなやつ。
ここからヒカくんのターン!という感じで……?
なんかそういう誤解から始まる話を読みたくなりました。
畳む