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BONNO!
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ヒカ・キャス・テメに対する煩悩かべうち

カテゴリ「小説」に属する投稿57件]4ページ目)

#ヒカキャス
#ヒカキャス「花嫁探し」

漫画で描こうとしてるなれそめの話。
小説で書いてみます。
第一話。




アグネアから舞台の知らせと手紙が届いたのは、ヒカリが仲間達と別れて数ヶ月が経った頃だった。ベンケイから受け取った手紙はこれ以外にも二つあり、一つはキャスティから、もう一つはパルテティオからの鉄道の進捗の知らせだった。
「……相変わらずだな」
三人とも、文章から各々の様子が伺え、ヒカリは笑みを浮かべた。息災で何よりだと頷き、ベンケイへ手紙を返す。文箱へ片付けるよう頼んだわけだが、彼はやや神妙な面持ちでヒカリを見つめていた。
「どうかしたか」
「は。……いえ、陛下はこの先どうされるおつもりでいるのかと」
「? アグネアの舞台だ。そなた達も観に行くだろう?」
「それはもちろんではありますが!」
鎮魂祭の一件もあり、ヒカリの臣下達はアグネアの踊りにすっかり魅入られていた。特にベンケイはミッカの着物を繕ってくれたブリスターニ家に恩義を感じており、その感謝の力強さはヒカリも驚くほどだ。
「例えば、その……差し出がましい話ではありますが、どなたかを娶られては如何と」
「ベンケイ。ク国はまだ復興の途中だぞ」
「めでたい話は、民を勇気付けます。ご一考を」
ク国のために粉骨砕身で生きてきたが、まさかその延長で妻を娶れと言われるとは。
ヒカリはうんざりとして、稽古に出ると言って外へ出た。
庭で剣を振る。こうして稽古の時間を取れるようになったのも、民と手を取り合って助け合って来たからだ。
(それがまさか、夫婦の話にまで飛ぶとは……)
急な変化は民を混乱させるからと、ヒカリはク国が落ち着くまでは王の座に居るつもりだ。だが、ゆくゆくは町ごとに自立できるよう、整備しなくてはならないとも考えている。
ヒカリがこの世を去ってもク国が穏やかでいられるように──自分と友の行く末が明るいものであることを願うからこそ、そのように考えているわけだが、臣下達にもそれぞれ思いがあるようだ。
ヒカリは今年二十歳になる。父ジゴはどうであったかと振り返り、首を横に振った。
正室と側室と。女性を複数人娶るような真似はしたくない。
それよりは親を失った子供達を城で育て、その中で後継者を選んだほうが──と考えたところでソローネのことが思い浮かび、これもまた、単純な話ではないなとため息をついた。
どうしたいかを考える。妻を娶らず一人で生きるにせよ、ヒカリが年を取ればどのみち誰かに国を委ねる日が来る。
その時に、どうであってほしいか。──一人でも多くの民が、ク国を思い、共に助け合える道を選べれば良いと思う。
『一人でも多く、この手で救うために』
この時過ったのは仲間の一人、救いの手とまで呼ばれた薬師の姿だった。
(……そうだな。これは、彼女の考えと似ている)
同じ思想を持つ者で集まり、一人でも多くを助けて回る。彼女はその中で知識や経験を継承し、多くを救えるようにと今このときも旅をしている。
最後の一振りを終え、汗を拭う。
アグネアの手紙によれば、仲間全員に声を掛けているようなので、彼女にも──キャスティにも会えるだろう。
彼女ならば、どう答えるだろうか。話をしてみたくなり、ヒカリはそこでこの話について考えることをやめた。



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#テメキャス
#テメキャス「嘘から出た」

災い転じて〜のテメ視点。



人は見かけによらないとはよく言う。
真面目な人間ほど裏であくどい仕事をしていたり、口やかましい厳しい人間ほど親切で情に厚かったりと様々ある。なら、自分という存在すら曖昧な──記憶のない人間ではどうか?
答えは『分からない』だ。なにせ、照らし合わせるべき答えがないのだから。
「もう一杯いかが?」
「いいえ、これ以上は無理です」
「あらそう。じゃあ私がいただくわ」
ほんのりと頬を染めてはいるが、酒を飲むペースも話し方も何一つ変化がないキャスティの隣で、テメノスはアルコールで痛み始めた頭の片側を押さえた。
一緒に飲まないかと誘われ、これまでの事情を語り合っていた。共に旅をするのだから多少は事情を明かしておいた方が都合が良いだろうと、今後の滑らかなコミュニケーションのために酒に付き合ったわけだが、キャスティの方は過去の自分を探すために酒を選んだらしい。
ヒカリは目的を果たすまでは控えるといい、オズバルドにおいては酒が嫌いだという。
テメノスがうっかり了承をしたからこの酒の席は設けられ、そしてキャスティの思わぬ酔いっぷりに、既に後悔をし始めていた。
普段はしっかりとしている者が、酒が入ると弱る、なんてことはある。男性の多い今のメンバーで、彼女の中に不満や困りごとがあるなら、新たに来たテメノスが対応することも可能だと──キャスティには異端者たちをしりぞけてもらった恩がある──考えていたのだが。
「興味深いことではあるの。記憶を思い出したということは、深い関わりのある人だったのかもしれないし……」
カナルブラインで出会ったマレーヤという女性が、彼女の記憶を取り戻すきっかけになったという話だった。記憶喪失の状態を記録し、オズバルドという検証者も立て、彼女は記憶を取り戻す過程を書き留め、今後の治療に役立てるという。
記憶を失ってこれだというなら、記憶を失う前の彼女はどうだったのだろう。知識の量からしてもそれなりに人を助けてきたことが伺え、真剣に耳を傾けていたテメノスだったが、限界は近づいていた。
「すみません。頭痛もするので、帰りたいと思います」
「大変! そういうことは早めに言って。頭痛薬ならすぐに出せるけど……お酒が抜けてからのほうが良いわね。帰りましょう」
二つ返事どころか彼女の方から率先して立ち上がり、テメノスを部屋まで送るというので、驚いた。そこまでの痛みでもなかったので、余計にだ。
「一人で歩けますから」
「そう言ってつまづくものよ。安心して」
「……あの」
子供のように手を引かれ、宿へ連行される。
ここに仲間が通りがかってくれたなら、すぐに助けを求めたのだが、あいにく廊下を歩く人もいなければ受付も不在となっていた。キャスティは迷いなくテメノスの部屋を目指し、鍵を開けて、と一歩下がる。
「ここまでで構いませんが」
「だめよ。ベッドに横になって、容態を確認しないと」
「……はい」
酒の勢いもあるのだろう。やけに熱心に言うので、まさかこれが彼女なりの誘い文句なのかとひやりとしつつ、部屋の扉を開けた。
「ベッドに寝て。水は……ここにはないわね。私の水筒をあげるわ。明日には新しいものに変えるから」
ローブを外してベッドへ横たわる(流石にそれ以上、服を脱ぐことは躊躇われた)。テキパキと動き、鞄の中から薬草や調合道具を取り出したキャスティは、細かな症状を確認した後、ごりごりと調合を始めた。
それから小瓶に詰め、蓋をする。
「明日になっても痛むなら、これを飲んでね。……さて、他になにか手伝うことはある?」
「もう十分ですよ」
「遠慮しないで。でも、その前に、暑くなってきたから上着を置かせてもらうわね」
「あの、キャスティ」
もうそのまま部屋へ戻ってくれと言う前に、話が進んでしまう。宿の調度品に触れ、他にすることがないことを確認すると、キャスティは部屋を出るのではなく、椅子を持ってきてベッドの隣に腰掛けた。
「寝ないの?」
「……」
寝られないのは彼女のせいだ。しかし心配してくれていることは明らかなので、指摘しにくい。
テメノスはため息をついた。
「では、おやすみなさい。鍵は開けておいて構いませんので」
「分かったわ、おやすみなさい」
眠ったふりをしてやり過ごし、キャスティが部屋を出た後に落ち着けば良い。テメノスはそう考え、瞼を閉ざした。
──少しの間、眠ってしまっていたようだった。蝋燭の火も消えた暗い室内を見渡し、起き上がる。
「……!」
足元に人の塊があり、心の底から驚いた。
キャスティが眠っていたのだ。
「やれやれ……」
ここから彼女の部屋へ移すにも骨が折れる。仕方なく自分のベッドに寝かせたわけだが、ここで一つミスをした。シーツの上に引き上げたので、上に掛けてやれるものがなかった。
何かないかと部屋を見渡し、自分のローブを見つける。これなら寒くはないだろうと背中にかけてやり、静かに部屋を出た。もちろん、鍵をかけて。
ヒカリとオズバルドに事情を伝え、相部屋にしてもらう。部屋の隅にあったソファで眠らせてもらったテメノスは、翌朝、キャスティが部屋を出られるようにと扉の鍵を開けに向かった。
最後に中の様子を見ておこうとそっと開くと、彼女は既に起きていた。
「……テメノス?」
目が合う。
「起きましたか」
「え、ええ……」
戸惑っている様子が気になり、部屋へ入る。
ついでにローブを返してもらう。
「貸してくれたのね、ありがとう」
呑気な発言だと思った。ここで寝落ちたことを気にしていないようだ。
ローブを羽織るでもなく、テメノスは椅子に座る。
昨晩のことで、一つだけ忠告をしておこうと思ったのだ。無闇に男性の部屋で寝てはならない、と。
「さて、部屋を出る前に確認といきましょうか。あなたはどこまで覚えていますか? キャスティ」
「……昨晩のことよね?」
聞き返されたことで肩の力が抜けた。
「……覚えていないようですね」
「お、覚えているわよ。昨晩はあなたとお酒を飲んで──話をしたのよ……。いつ帰ってきたのか、覚えてないけれど」
キャスティはそれからぽつりぽつりと昨晩のことを語り出した。どうやら彼女は、テメノスとの時間を楽しんでくれたらしい。楽しくおしゃべりしたわよね、と笑った後、急に表情を戻して首を傾げる。
「……それだけじゃなかった?」
「ここまで運んだのは私です」
「あ、そうだったの。ごめんなさい、ありがとう……重かったわよね」
そんなことはなかったが、それを言えば彼女を抱き上げたとでも勘違いされそうなので黙っておく。
それよりも、だ。
「……あなたには警戒心というものがないことを理解しました」
しみじみとテメノスは呟いた。旅を始めて、一週間が経過したかどうか。野営で雑魚寝をすることがあるとはいえ、こういった密室にもなりかねない場所までついてきておいて眠ってしまうのは危険だ。
仲間達への信頼があるのだろう。それ自体は素晴らしい。しかし、そうではない人間も中にはいるはずなのだ。
テメノスが相手であったことが、彼女にとっては幸いだった。ヒカリはそのような卑怯な真似を考えぬだろうし、オズバルドはそもそも忠告しない。
仲間になって浅い自分なら、さほど大きな歪にはならないだろうと──どのみち旅が終われば解消される関係なので──自ら悪役を買って出た。
「昨晩のことを覚えていないとは、本当に残念です」
「……え、」
「覚えてないあなたに言うのは可哀想なので、これ以上は言わずに置きますが……」
「ま、待って。どういう、」
「──おや、聞きたい?」
頭の良い彼女に考えさせてはボロが出る。テメノスは笑いかけ、彼女に警戒心を持たせるためにわざとらしく近い場所に身を寄せた。
「聞くより再現した方が早いかもしれません。本当に、知りたいですか?」
昨日の酒の席と違い、テメノスが近寄れば同じだけキャスティは後ずさる。それで良い。
「……ということになりかねませんので、気を付けてくださいね」
正しく警戒してくれたなら、十分だ。
にこやかに微笑み、さっと立ち上がる。
「では、先に行ってますので。支度が終われば来てください」
「いまの、嘘よね?」
「さて。どうでしょうね」
嘘だといえば彼女は気を緩めるだろうと思い、敢えて曖昧に言葉を返した。


テメノスの諫言は、てきめんに効いたようだった。
記憶喪失なんて、悪い人間からすればこじつけやすい弱点でもある。警戒心を正しく持ち、仲間と共に旅をする限り、彼女は守られるだろう……そう考えていた。
しかし、旅に同行する人間が増え、別行動の機会を得たことで、その思惑は外れた。効果は予想に反して局所的なものでしかなかった。──キャスティは、テメノスとの酒の席を避けていただけだった。
ソローネ、オズバルド、オーシュットとクラックレッジを見て回ったあとのことだ。酒場で待つのはアグネア、パルテティオ、ヒカリ、キャスティの四人で、外で鍛錬に勤しんでいるはずのヒカリの姿がなかったので、おや珍しいなと開いていた窓から中を覗いた。
そこで、見てしまった。酒を片手に楽しそうに飲んでいるヒカリとキャスティの姿を。
アグネアは舞台に、パルテティオは酒場の常連たちと話をしていて──ヒカリとキャスティは最も付き合いの長い二人であったからか、余計に、仲間達の前で見る姿よりも親密に見えた。
ヒカリはキャスティとは反対の方ばかりを見ているが、たいして彼女は構わず彼に絡んでいる。
「見てよ、あの二人」
ソローネが楽しげな声を出した。
「仲が良いよね」
オズバルドがため息をつき、オーシュットはそれよりも漂う料理の匂いによだれを垂らしている。
「……そうですね」
何をそこまで驚くことがあったのか分からない。テメノスはソローネと雑談をしながら酒場に入り、それから、カウンターに座る二人に声を掛けた。
「あら、おかえりなさい」
「戻りました。随分、楽しそうですね」
「そうね。あなた達を待っていたの。ヒカリくん、ありがとう」
「ああ」
残る酒を一息に呷り、キャスティは席を立つ。ソローネが引き止めたが、ごめんね、と申し訳なさそうに言うと宿へ戻っていった。
「……酒、好きだって言ってたのにな」
残念そうに呟くソローネの言葉が、耳に残った。

仲間達にそれとなく話を聞くと、キャスティはどうやら酒を好んでいるらしい。だが、時折ああやって、それまで楽しそうに飲んでいても席を立ってしまうことがあった。
そしてテメノスの知る限り、キャスティが酒を飲む姿はあれ以来、見たことがない。つまりは自分が不在のときに彼女は酒を飲んでいるということになる。
そういう意味では無かったのだが。
頭を抱えそうになった。忠告したことは覚えているが、なんと言って脅かしただろうか。
(……彼女ならそれこそ、まともに取り合わないような)
男の対応にも慣れている風であるから、その真意を図り兼ねる。なにより、正しくテメノスを警戒するなら二人きりの時だけで十分では。
(まあ……どこかで誤解を解くとするか)
旅も終わりが見えていた。
解消されれば、彼女の負担も減るだろう。安易にもそう考え、自分から動かなければいいだろうと、テメノスはこれを放置した。


旅を終えて、フレイムチャーチに戻り。
一度だけ、キャスティが町を訪ねてきた。
何かを決めたような顔付きだったが、その夜の食事時は旅の頃と変わらなかった。
二人きりだという意識があるのか、彼女は酒を飲むこともない。
「このあとはどうするんです?」
「患者がいないか診て回って、次の町へ行くわ」
「そうですか」
小さな町だが、住人は多いので数日は滞在するだろう。その中で話をすればいいかとテメノスはこの夜、酒場の前で彼女と別れた。
ところが、予想は外れた。翌日空色の姿が見えないので宿を訪ねると、彼女は宿に泊まらなかったらしいことがわかった。
腑に落ちなかった。何かを急いでいた素振りはなかったし、手が足りぬと言うなら頼みそうな彼女だ。警戒するなら、それこそ夜間の移動の方を危険視するべきだ。
(……まあ、元気ならそれで、)
それでいい、と思いたかったが、思えなかった。
この違和感はなんだろうか。
それから仕事で出掛けることが何度かあり、エイル薬師団の話を聞くことはあったが、それはテメノスの期待する話と少し違っていた。武勇伝を聞きたいわけではなかった。彼女がこの日もどこかで健やかでいる──そういう安心の得られる話が聞きたかった。
アグネアから手紙とチケットを受け取ったとき、テメノスが気にしたのは、キャスティは来るだろうか、ということだけだ。
仲間を大切にする彼女だから、きっと来てくれるだろう。
けれど、もし何らかの理由で来られないことがあったら、そのときは──。
(……皆で、助けに行くことになる)
皆の中の一人でいる限り、テメノスは彼女と話ができる。それがもどかしく感じた。
抱えている感情が、仲間に対するものとは異なりつつある。それを自覚しながら、ニューデルスタへ出かけた。


キャスティは、町に来ていた。夜、仲間達と集まって食事をすることになり、その中で、彼女はパルテティオから酒を受け取った。
いつも通りだった。テメノスが初めて見るだけで、皆は酔いで気を緩めたキャスティを、朗らかに見守っていた。
──今更、警戒を促した自分はやり過ぎだったのでは、と気付いた。
なぜ、気を付けたほうがいいと考えたのか? どうして非難されるだろうと思いながらも、忠告したのか。

彼女がとても魅力的な人物だと、あの夜に理解したからだ。

他の男なら、自分のように理性的に対応しないだろうと思い込んだ。そんな輩に汚されてほしくなかったから。
我ながら、浅ましい嫉妬をしたものだ。
明日も皆で集まり、食事をすることになった。それなら彼女もすぐにいなくならないだろうと思ったが、万一の可能性もある。
テメノスは皆がアグネアに目を奪われている隙に、キャスティの隣席に移った。紅茶を飲む間だけ話をしたが、目が合うことはなかった。気まずそうにも見えた。
それから、宿へ戻る間にどうにか謝罪を試みる。
「もういいの。気にしてないわ。……あなたじゃなければ、大変なことになっていたかもしれないもの。助けてくれてありがとう」
彼女は全てを聞くこともなく、礼を口にした。非難すべき場面で、なぜ他人を思い遣るのか──彼女の気づかいを受け取るほど、自分の卑怯さが身に沁みた。
「……キャスティ、」
「ごめんなさい。ちょっと酔ったみたいだから、もう寝るわ。おやすみなさい」
「……分かりました。おやすみなさい」
ここで引き止めると更に追い詰めることになるのではと危惧し、テメノスは渋々従った。けれど、部屋で眠る気にはなれず、ロビーのソファにぼんやりと腰掛け、窓から外を眺めた。
それから少しして、やはりもう一度話がしたいと思い、不躾だと思いながらも、キャスティの部屋を訪ねることにした。受付には怪しまれたが、神官の格好であったことが功を成し、部屋の番号を教えてもらえた。
扉の前で躊躇う。
また気づかわせてしまうことは承知の上で、ノックをする──
「テメノス?」
扉が開き、中から髪を下ろしたキャスティが出てきて、驚いた。が、その目元が赤く染まり、瞳が潤んでいることから泣いていたのだろうことが察せられ、胸を痛める。
おそらく、泣かせたのは自分だ。
「何があったんです?」
「なにが?」
「……目元が赤いので」
「ああ……そうね」
彼女は否定しなかったが、事情を話す気はないようだった。
「あなたの方こそ、どうしたの?」
「……気になってしまったもので」
「あ、そうよね。ごめんなさい、さっきは私も良くなかったわ。疲れていたみたいなの」
まるでそれが当然のことのように、キャスティは柔らかに微笑む。
「心配してくれたのね。ありがとう」
「──」
なぜ、そこで感謝する。
テメノスの考えすぎなのか。だとしても、ここで何もなかったかのように引き返すことはできない。
フレイムチャーチでも、明日また会えるだろうと思っていたのに、会えなかった。
彼女のその涙の理由も、この夜が明けてしまえば無かったことにされる気がした。
「少し、話しませんか」
「……夜も遅いし、明日じゃだめかしら」
困ったように言われた。最もな話だった。
それでも食い下がる。警戒しろと言っておいて、その警戒心を無視させるようなことをしている。
「気持ちは分かります。少しだけで構いませんから、お願いします」
「……少しだけよ。紅茶を飲もうと思ったのだけど、あなたも飲──」
「おやすみ~」
その時アグネアの声が響いた。いい理由だった。
キャスティに迷惑をかけてはならないと思いながらも、部屋に入れてほしいと懇願する。少し早口に唱えれば、あっさり彼女は受け入れた。
廊下の人気がなくなるまで、気は休まらなかった。むしろ声の大きさにすら気を付けないといけない。
「……また今度でもいいわよ?」
「いえ。ただ、紅茶は諦めます……残念ですが」
「そう……」
キャスティは曖昧に応え、居心地悪そうに視線を落とした。それもそうだ。彼女には嫌な思いをさせてきた。
「夜分に女性の部屋を訪ねる無礼さは理解しています。それでも、話をしておかなくてはと思いました」
「お酒のことなら、もう十分よ」
「いいえ、違います。その件ではなく、……私的な感情の話になりますが」
卑怯な真似をしておいて、今更何を言うのだろうと思ったが、ここで頬の一つでも殴られておかなくては気が済まなかった。
「この先、あなたに会えない気がしたので、言わせてください。……ずっと、あなたのことを一人の女性として気にかけていました」
「……それって、どういう意味?」
「分かりませんか?」
テメノスは視線を一度逸らした。彼女から軽蔑の目を向けられようものなら、堪えられそうになかったからだ。
だが、それも全ては自分の軽率な行動ゆえだ。ここに来て何を逃げているのだと思い直し、彼女の顔を見る。
予想していた、どの表情とも違っていた。異性からの好意に疎い彼女の姿は何度も見てきたから、それとは違う様子であったことが、ほんの僅かな希望をテメノスに抱かせた。
手を、掴む。どうか、この期待を裏切ってほしくないと懇願するように。
「──あなたのことが、好きだと言っています」
一拍の後、彼女が泣きそうに顔を歪めたので、思わず抱き締めていた。震える肩の儚さを、柔らかな髪や自分よりも細いその身体をもう二度と取りこぼさぬよう、支える。
「わ、……私、も」
長いようで短い沈黙だった。あの紫の雨の中、かつての仲間をその手で殺めたときの、あの悲しげな声とも違う、本当にささやかで、小さな声だった。
ゆっくりと腕の力を緩めると、キャスティも応じて顔を上げた。その顔は泣いてこそいなかったが、これまで見たことのない愛しい顔付きであることは間違いなかった。
壊さぬように、慰めるように触れる。甘んじて受け入れてくれた温もりに感謝をしつつ、許されたことで堪えていた感情が溢れ出て、どうしても受け止めてほしくなった。
引き寄せると首に腕が回された。
「……いいんですか?」
「ええ、」
了承されたので、そのまますぐそばのベッドまで──一時も離れることが惜しく、口付けをしながら──連れ込んだ。


文字通り夢のような時間だった。
朝を迎えるのが惜しいほどで、先に目覚めたものの、眠る彼女の姿を見守っていたくて、ローブを被せ、頭を寄せて寝直す。
キャスティは真面目な人間であるので、目覚めると素直にテメノスを揺すり起こしてくれた。
それがどれだけ幸福なことか知っていたので、すぐに起き上がる。欠伸が出た。
「昨晩のこと、覚えています?」
聞かずにはいられなかった。もしここで忘れられていようものなら、思い出すまで再現してやるつもりで、答えを待つ。
けれど、キャスティは穏やかに笑ってこう言った。
「ええ。──もちろん」
顔を寄せると目蓋を下ろす。大人しく受け入れてくれるところがまたテメノスを調子づかせるわけだが、これに関しては彼女に言うことではないと思ったので、いまは言葉にするより行動で返すことにして、仲間達との集合時間まで彼女を堪能することにした。


畳む


言い訳なんですけど小説を書く以外のことができない時間があってですね……それでね……小説で書きやすい話がね、増えるんですね……。

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#テメキャス成人向け

サンプルを支部に上げてきました。
リンク

サンプルは全年齢なのですが、中身が成人向けなので成人向け設定&ログイン限定公開にしてます。
表紙を気に入ってるのでイラスト版のサンプルもまた後で上げます。


追記。
あげました。漫画のサンプルを少しだけお披露目してます。
イラスト版のリンク

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#テメキャス
#テメキャス「災い転じて」

洋ドラチックに書いたやつ。ハピエンです。




目を覚ますと宿にいた。
キャスティは怠い頭をもたげて室内を見渡す。一人部屋、だったろうか。ああそうだ、珍しく宿の個室が取れて、しかし四人分はないとのことで、くじ引きで決めたのだ。
シーツには香水が振りかけられていた。ニューデルスタは人々の装いも派手であるので、利用者から移ったか、あるいは洗濯時に振りかけているのだろう。それはいいとして。
「そのまま寝ちゃったのかしら」
カチューシャを頭部から外し、皺を伸ばす。
よく見ると脱いだのは上着とエプロンだけのようだ。
(……記憶がない)
そんなに飲んだだろうか。
昨晩のことを思い返そうと頭に触れたとき、ノックの後、扉が開いた。
「……テメノス?」
「起きましたか」
「え、ええ……」
返答もなく扉を開けるのは失礼なように思うが、彼はもしかしてそういった部分に無頓着なのだろうか。キャスティが戸惑いを隠さず様子を見守っていると、目が合った。
「それ、返してもらっても構いませんか?」
「それ?」
「私のローブです」
毛布だと思っていたものはどうやら彼の外套だったらしい。白地であるので気付かなかった。
「貸してくれたのね、ありがとう」
香りについてとやかく思ったことは忘れよう。軽く折りたたんで渡すと、テメノスは何も返答せずに受け取った。羽織ることもなく、近くの椅子を引いて腰掛ける。
「さて、部屋を出る前に確認といきましょうか。あなたはどこまで覚えていますか? キャスティ」
「……昨晩のことよね?」
「……覚えていないようですね」
「お、覚えているわよ。昨晩はあなたとお酒を飲んで──」


剣士ヒカリはク国が落ち着くまで酒を飲まないといい、学者オズバルドは酒を好まないと言うので、酒場で酒を頼むのはキャスティだけだった。そんなところにフレイムチャーチから神官テメノスがキャスティの一行に加わった。
ニューデルスタに到着した夜のことだ。酒場で食事を取ったあと、キャスティはいつものように酒を頼むことにした。
『あなた達はいいとして、テメノスさんは?』
『テメノスで構いませんよ。……そうですね、一杯いただきましょうか』
聖職者であるので、やはり酒は好まぬのかと思いきや、意外な返答だった。
彼は酒が届くと、少しいいですか、と言って静かに祈りを唱えた。それが彼の身近な人を思っての祈りだと思ったキャスティは、そのまま彼に乾杯の言葉を強請った。
『……では、旅の幸運を祈って』
『乾杯』
記憶を失ってから、誰かと酒を酌み交わすのは初めてだ。
記憶がないのでなんとも言えないが、自分がよほどの酒乱でない限り、多少飲んでも問題ないだろう。
『酒はお好きですか』
『多分、そうみたい。こうやってお店に来るとどうしても……飲みたくなっちゃうのよね』
『へえ、それは』
テメノスが言葉尻を笑い声に変え、酒に口をつける。
『なにかしら?』
『身体が覚えている、というものなのかと思いましてね。あなたが人を助ける知識を忘れなかったように』
『言われてみれば』
そういう考え方もあるかとキャスティもこくりと酒を飲む。この独特の苦みと炭酸がたまらない。
これから旅に同行するというなら、彼について知っておいてもいいだろう。キャスティはテメノスが拒まぬ限りの彼についての話に耳を傾け、自らはヒカリ、オズバルドと出会うに到った経緯を語った。


「……それだけじゃなかった?」
「ここまで運んだのは私です」
「あ、そうだったの。ごめんなさい、ありがとう……重かったわよね」
彼は旅を始めたばかりで軽装だ。斧や旅の荷物も多いキャスティを運ぶのは骨が折れたことだろう。
「……あなたには警戒心というものがないことを理解しました」
深いため息を吐くとテメノスは立ち上がり、ベッドに座るキャスティの前へ歩み寄る。手を伸ばせば届く距離まで近付くと、立ち止まった。
何を言われるのだろうかとじっと彼を見上げる。冷ややかなその眼差しに緊張を強いられていたが、急に、彼は目元を和らげた。
「昨晩のことを覚えていないとは、本当に残念です」
「……え、」
「覚えてないあなたに言うのは可哀想なので、これ以上は言わずにおきますが……」
「ま、待って。どういう、」
「──おや、聞きたい?」
テメノスは笑うと身を屈め、隣に腰を下ろす。
「聞くより再現した方が早いかもしれません。本当に、知りたいですか?」
こちらに身を寄せるようにして艶めいた低めの声を出す。キャスティはそれが言わんとするところをすぐに察して、同じだけ後ずさった。
「……ということになりかねませんので、気を付けてくださいね」
にこやかに微笑むと、テメノスはさっと立ち上がり、ローブを羽織る。
「では、先に行ってますので。支度が終われば来てください」
「いまの、嘘よね?」
「さて。どうでしょうね」
かろうじて問い返せたが、彼を引き止めることはできなかった。


旅を続ける中で彼の人となりを理解するにつれ、あの件は嘘だろうと思うようになった。ほとんど初対面の男性に気を緩めすぎだという、彼なりの諫言だった。そうに違いない。
「ねえ、ヒカリくん。今日は飲みましょうよ」
「分かった。いいだろう……そなたは本当に酒が好きだな」
それでも、テメノスが酒場にいない時しか、酒を気軽に飲めなくなっていた。ク国が落ち着き、ヒカリが酒を飲むようになってからは特に、キャスティは決まって彼と飲むことにしていた。
なぜって、年下の男性相手なら多少気が緩んでも羽目を外すなんてことはしない自信があったから。
その日はアグネアとパルテティオが酒場にいた。酒を飲まないアグネアと、酒を片手にテーブルを渡り歩くパルテティオと、そんな二人をカウンターから眺める自分達と。
穏やかな夜だった。キャスティはいつも通り、テメノス達が酒場に戻る頃、入れ違いに宿へ戻った。

我ながら、どうしてそんなことをするのか、説明ができない状態が続いた。一度の過ちを掘り返すような人ではないと分かっているし、酔ったところで自分はそこまで奔放にならないと思っている。

旅が終わって、テメノスが胸のうちに留めておくと皆の前で告げたとき、キャスティは曖昧な気持ちでそれを聞いた。
彼の優しさを正確に理解しつつも、優しいならばどうして嘘なんてついたのだろうと──もうその話が彼の中で些事に片付けられてしまったのだろうことを、ひどく残念に感じていた。
一人で旅をしている間も、酒を頼むと殊更そのことが思い出され、流石に気付いた。
これは、あまりに彼に囚われすぎている。
自分の過ちを認めて告白すれば、彼は赦してくれるだろう。そう思い、一度はフレイムチャーチを訪ねたキャスティだったが、
「おや、懐かしい顔だ。ようこそ、フレイムチャーチへ」
穏やかに迎えられると言い出すにも言い出せず、そのときは食事だけしてすぐに町を出た。
そんなものだから、アグネアからチケットと手紙が届いた時、キャスティは腹を決めたのだ。
今度こそ、この思いを断ち切る。
そう意気込んで、ニューデルスタへ向かった。
舞台のあと、皆で食事をすることになった。酒も飲むだろとパルテティオに言われ、ええ、と笑顔で頷く。
テメノスも同席していたが、彼のことは気にせずにいようと何度も言い聞かせ、酒を飲んだ。

アグネアがギルのピアノに合わせて踊り、歌う。
皆がそれを見ている中、テメノスが席を移ってきた。
ぎくりとしたが、ここで席を立っては怪しまれる。大人しく歌の終わりを待ち、酒を飲む。
「よく飲みますね」
「そうね。これで終わりにするわ」
「紅茶でも飲みます?」
「……一杯だけもらおうかしら」
それを飲むまでならいいか、と。
これで最後なのだし、とキャスティはグラスを空け、温かな紅茶をもらった。
近況報告をし合ううちに、紅茶もなくなる。
「名残惜しいけど、そろそろ宿で休むわね」
皆とはまた明日朝食を共にする。それじゃあ、と席を立つとテメノスも立ち上がった。
「散歩に出かけようかと思いまして」
「そうなの。気を付けて」
店の前で別れるのかと思いきや、彼はそのままキャスティの後をついてくる。
「……ついてきてる?」
「そちらの宿なものですから」
「なら、隣を歩けばいいじゃない」
くす、と笑って促せば、彼はゆっくりと並んだ。
「……一つ、謝りたい事があります」
「なにか悪いことでもしたの?」
「ええ。それはもう」
靴音が響く中、静かに彼は口にした。
「あなたの好きなものを制限してしまったことを、ひどく反省しています」
「……」
坂を進めば、その先には宿ムーンデルスタがある。
二人の横を睦み合うカップルが行き違い、その間、テメノスは話を止め、再び人が少なくなってから口を開こうとした。
──ここで彼の謝罪を聞いてしまえば、すべてが終わってしまう。
「テメノス」
それを防ぎたくて、名前を呼んだ。
「もういいの。気にしてないわ」
嘘だったが、そういうことにしなくては、彼はずっと気にするだろうと思った。自分と同じように、とはいかなくとも、キャスティ自身、それが引っかかりとなっていたことを良いとは思えなかったので、テメノスが同じことにならぬよう、自分がケアをしなくてはと考えた。
「あなたじゃなければ、大変なことになっていたかもしれないもの。助けてくれてありがとう」
「……キャスティ、」
「ごめんなさい。ちょっと酔ったみたいだから、もう寝るわ。おやすみなさい」
ここで話を続けても、互いに傷を慰め合うだけだと思い、早々に話を切り上げる。
テメノスは少し迷った末、おやすみなさい、と応えた。
彼に怪しまれぬようゆったりとした足取りで自分の部屋へ向かう。
そうして部屋前まで来るや、急いで鍵を開け、扉を閉めた。
「っ……」
こらえきれなかった涙を慌てて手のひらで受け止めて、大きく息を吸う。

彼のことが、好きだった。
なぜ、今になって気付いてしまったのだろう。

喉が震える。泣き喚いてしまいたかったが、隣の部屋に響くのも困る。手袋を外して、指先で雫を拭う。
そうして、溢れるままに涙を流してキャスティは感情を全て外に出すことにした。

カチューシャを外し、髪を梳かす。ケープもエプロンも外して肩を楽にした。
眠ってしまいたかったが、この夜を終えてしまえばこの恋心もなくなってしまうのだと思うと惜しかった。そのくらいには想っていた。
(……きっと、気にしていたのはそのせいなのね)
もしかするとテメノスも何かを察していたから話そうとしてくれたのかもしれない。そうだとすれば、先程の自分の対応は、良くなかった。
明日、気分を落ち着かせてから話をしよう。そうすればこの想いも忘れられる。
喉の渇きを覚えて、宿に頼もうと考えた。ケープだけを羽織り、部屋の扉を開ける。
「おっと」
「……テメノス?」
まさに部屋を訪ねようとしていたのだろう、テメノスがノックをしかけた手を止めた。驚いたのも一瞬のことで、彼は顔をしかめる。
「何があったんです?」
「なにが?」
「……目元が赤いので」
「ああ……そうね」
鏡で変ではないか確認しておけばよかった。否定しようにも無理があるので、素直に頷く。
「あなたの方こそ、どうしたの?」
「……気になってしまったもので」
「あ、そうよね。ごめんなさい、さっきは私も良くなかったわ。疲れていたみたいなの」
認めてしまえば平気だった。なにも恐れることはなく、穏やかな気持ちで彼の顔を見上げる。
「心配してくれたのね。ありがとう」
「──」
こんなふうに仲間の様子を気遣える、優しいところが好きだった。そんな思いから感謝の微笑みを浮かべると、テメノスは何かを言いかけ、口を閉ざし、ややあってキャスティの名前を呼んだ。
「少し、話しませんか」
「……夜も遅いし、明日じゃだめかしら」
「気持ちは分かります。少しだけで構いませんから、お願いします」
彼は食い下がる。口調はあくまで平然としていたが、どことなく焦っているようにも思われた。
「じゃあ……少しだけ。紅茶を飲もうと思ったのだけど、あなたも飲──」
「おやすみ~」
その時だった。アグネア達の声が廊下に響いた。
女性達の部屋はキャスティの部屋と同じ三階にあり、男性陣は二階になる。階段を上る音はそこまで迫っていた。
「すみません、中に入れてもらえませんか」
「ええまあ、どうぞ」
テメノスが焦ったように懇願するので部屋の中へ入れてやる。足音が複数、それから、おやすみ、と言い合う声を最後に、廊下から人気がなくなった。
ほ、とテメノスが息をつく。
そこでようやくキャスティも理解した。
──二人で居るところを見られたくなかったのだ。
それは、そうだろう。彼は真っ当な聖職者であるし、仲間を心配してきただけだ。
「……また今度にする?」
「いえ。ただ、紅茶は諦めます……残念ですが」
「そう……」
テメノスは扉から背を離すと、キャスティに向き直る。
まるでこれから審問でも始めるかのような顔つきだ。
「夜分に女性の部屋を訪ねる無礼さは理解しています。それでも、話をしておかなくてはと思いました」
「お酒のことなら、もう十分よ」
「いいえ、違います。その件ではなく、……私的な感情の話になります」
テメノスはそこで止め、一度深呼吸をしてから、言葉を続けた。
「この先、あなたに会えない気がしたので、言わせてください。……ずっと、あなたのことを一人の女性として気にかけていました」
「……それって、どういう意味?」
腹のあたりで両手を組み、彼に問う。これこそ嘘なのではないかと疑いたい気持ちと、嘘でもいいから聞きたいという僅かな期待とが鼓動を早める。
「分かりませんか?」
じっと見つめる先でテメノスは視線を一度逸らし、次にキャスティの顔を見つめると、手を掴んで引き寄せた。
「──あなたのことが、好きだと言っています」
最初に、耳を疑った。
言われたことを反芻して、目を瞬く。それから、抱き寄せられるままに、その胸に飛び込んだ。
しばらく何も言えなかった。静かに互いの心臓の音を響かせ合って、初めて抱きしめ合った、その感覚を味わう。
私も、と声にするだけで、沢山の勇気が必要だった。震える声で、けれど、確かに聞こえるようにはっきりと言い直すと、腕の力が緩む。
何も言えなかった。目が合ったその瞬間に、何をしたいのか、すればいいのか、不思議とすぐに理解できた。
首筋に手が回る。背中に腕が回り、抱き寄せられる。こういうときは目を瞑るのだとぎゅっと目蓋を閉ざしたわけだが、唇に柔らかな感触が触れたとき、堪えきれずに目を開けてしまった。
は、とテメノスが掠れる声で笑う。
応えるようにその肩に手を回し、あとは誘われるままに身を委ねた。


翌朝、廊下を歩く人の足音に目を覚ました。
「あのまま寝ちゃったのね……」
ぼんやりとした頭を起こす。衣服は乱れ、起き上がった自分の上には白いローブとシーツが掛けられている。
「……起きて、テメノス」
隣で眠る彼を揺すって起こす。眠そうに欠伸をしながら起き上がった彼は、痩身を照らす朝日も構わずキャスティを見て微笑む。
「昨晩のこと、覚えています?」
ふ、と今度はキャスティもしっかりと笑い返した。
「ええ。──もちろん、ちゃんとね」


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漫画で描きたいな。

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#つぶやき
2周年記念もそうですが、明日から暫く更新頻度落ちるかもしれません。小説の更新はあるかも。イベント前にまた色々動き出すと思います。

#雨に花束関連
ソロちゃん中心の本に、実プレイベースの妄想を詰めたので、それをサンプルがてらこのあと公開します。→公開しました。

ソロ3章前後妄想リンク
キャス、テメとのやり取りや演出が多めです。ヒカくんもいます。

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#コンビ以上カプ未満

オルトくんサブクエをするテメとキャス。
前半。書きかけ。この2倍くらい書いてるけど先が見えなくて、書き終わるか不明になってきました。


テメとキャスの年上組の冗談についていけない年下オルトくんの図がかわいいなって……。



紅葉舞い散る山道を歩く者は多い。
商人、狩人、聖堂騎士に神官、それから、旅人。立ち寄る人間は大抵どこかしら目的を持ち、その道中ないし目的地としてフレイムチャーチに立ち寄る。
「久しぶりね、テメノス」
では、彼女はどうだろう。
誰かを救うために手を差し伸べ続ける彼女が、ここへ立ち寄った理由は一体。

聖火の蝋燭が灯り、邪気の祓われた巡礼の道を往く。険しい坂だ。仄暗い洞窟を抜け、階段を上り、季節によっては多少の汗をかきながら道を進む。
でからこそ、道の先で待つ、青空の下の大聖堂は荘厳で美しく目に映るのだと言っていたのは親友だっただろうか。それとも、若い聖堂騎士だったろうか。
「足元に気を付けて」
「ありがとう」
心配は要らぬと分かっていても相応の配慮をしない理由にはならない。テメノスは杖を片手に坂を上り、石階段の手前でキャスティが追いつくのを待った。
落ち葉の少ない場所を選ぶという、普段ならばしない道の歩き方をしたために、軽く息が乱れる。ようやく大聖堂前の広場が見えると、はあ、と大きな息をつくとともに背筋を伸ばした。
「久しぶりにここまで来たわね」
こちらが呼吸を整える間を待ち、キャスティが歩き出す。
彼女の顔に汗は一つもなく、息も乱れていない。旅を続ける彼女に体力で敵うはずもなく、テメノスは大人しく彼女の後を歩いた。
キャスティは聖火の前で立ち止まった。
「良かった、今日も燃えてるわね」
「……心配していたんです?」
「そうね。そんなところかしら」
彼女からすれば、これもまた様子を見るべき対象なのかもしれない。曖昧な返答を訝しみつつ、そうですか、と後追いを避ける。
「ねえ。案内してくれない?」
大聖堂の方を見つめて彼女が誘う。
「構いませんよ。……以前とさして代わりありませんがね」
「だからいいのよ」
大聖堂は珍しいが、大きな建物というと、ニューデルスタの劇場も負けていない。だが、特殊加工で作られたガラスやレリーフ……歴史を感じさせる外壁と青を基調とした絨毯が敷かれた、落ち着いた室内はここ以外にはないだろう。
テメノスが大聖堂の説明を掻い摘んで行えば、へえ、そうなの、とキャスティは頷いた。外に出て、今度は町の端から端までをゆったりと案内する。
ふと、見覚えのある顔を認めた。同じく相手も立ち止まる。
「テメノスさん」
「君は……もう怪我は治ったんですね」
「はい。こうしてここへ旅ができる程には……自己紹介が遅れました。聖堂騎士、オルトです」
暗色髪の野暮ったい髪型の騎士は、外見に反して丁寧な敬礼を示した。彼の顔には見覚えがある。ストームヘイルでのクリックの葬式、それから、カルディナと対峙する前、虫の息となっていた一人である。
「なにか調べごとでも?」
「ああ、違うのよ。あまりゆっくり過ごしたことがなかったから、案内をしてもらっていて……」
キャスティが慌てて返答する。テメノスの方を様子見て言うことには。
「お仕事なら、席を外しましょうか?」
「いえ。仕事というよりこれは、個人的な調べごとといいますか」
「調べ事?」
「ええ、建築士ヴァドスについて……」
声の大きさを落としたということは、彼もまた事情を知る一人なのだろう。
「伺いましょうか。話してください、オルトくん」
彼は聖堂機関に残り、調査を続けていた。そしてヴァドスの手記を見つけ、そこに記載されていた文言を頼りにここまでやってきたのだという。
確かに彼の言う通り、カルディナの口振りからも黒幕は別にいると察せられた。テメノスはそれが誰なのかは知っているが、彼女一人だけが成せたことかといえば、違う気もしていた。協力者がいたはずだ。
「オルトくん、君はいい『鼻』をお持ちのようですね」
「は……?」
「興味が湧きました。私も同行しましょう」
「……よろしいので?」
「え?」
なぜかオルトは、テメノスではなくキャスティに確認を取る。彼女も困り顔だ。
「お二人で予定を楽しまれていたのでは?」
「違うけど」
「……」
「これは失礼。構いませんか? キャスティ」
即座の返答には思うところがあったが、テメノスはそれをおくびにも出さず、大げさな物言いながらそうは思っていないと伝わる声音で彼女に許しを請うた。
「いいわよ。こうなるとてこでも動かないでしょう?」
「あなたの寛大な心に感謝します」
「あなたが即答したこと、覚えておくから」
「おや、怖いことを」
冗談に二人で乗っかっただけなのだが、当のオルトだけが困惑してしまったので、応酬をやめて向き直る。
「行きましょう、オルトくん」
では、と咳払いの後、彼は地下道へ向かいます、とマントを翻した。


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#雨に花束関連
#ヒカキャス
#ヒカキャス「新月の夜に」

ウィンターブルームは終えてる、薬師2章サイ編→剣士3章(ウェルグローブ)→クロップデールで踊子加入して八人になった後の時間軸。
自分の罪について考える薬師。

2025/3/11追記。
月の描写を間違えて挟んでいたので修正。気付かなかったのウケる(泣いてる)。



このくらいの距離感だと私が嬉しい……という気持ちが込められてる。実プレイベースの妄想じみてるので、タグをつけています。



気がかりがあると、頭の中で考えがまとまらず、眠れない時がある。

起き上がり、キャスティは鞄を手に取った。
眠る皆を起こさぬようにそっと歩く。──なんて、うまくいくはずがない。
「キャスティ……?」
耳聡いオーシュットに人差し指で合図をし、すぐに戻るから、と手を振る。夜行性のマヒナに加え、聴覚が動物並みに鋭い彼女から逃れることは難しい。
身体を横たえ目を瞑る、あるいは、星空でも眺めていた方が良いはずなのに、この夜はどうしても眠っていられなかった。

この日、リーフランドのキャンプ地にて、キャスティ達は野営をしていた。快晴が続き、朝晩はやや冷える日もある。
木々の影から覗く星空は、宝石を散りばめたように美しい。
森は静かだった。一人分の靴音が響く以外、虫や鳥の鳴き声が聞こえるばかり。
魔物避けの薬を調合し、自分の身体に振りかける。
小川のせせらぎが聞こえたので、その方へ足を向けた。
月がないのに明るい夜だった。
川の水面に星の光が反射して、綺麗だ。
キャスティは近くで立ち止まり、水面を見つめた。
サイで新たに記憶を取り戻した今、自分が向かうべき場所は分かっていた。
旅はじめの頃、テメノスの話を聞いて訪れた、無人の村──ヒールリークス。
そこに行け、とマレーヤは言った。
一度訪れたから分かる。誰もいない、虫も、鳥の声すら聞こえない、平穏にしては不気味なあの村で、一体、自分は何を思い出すのだろう。
(……本当に、人を殺したのだったら、)
記憶を失ったばかりの頃は、話の真偽を気にしていられなかった。
だが、手がかりを求めて旅を始め、いざ記憶に触れるようになってからは違う。
恐れていた。記憶を失ってからの自分は、この手で人を救ってきた。それが自分のするべきことだと思ってきた。でも、それだけの知識があるということは、裏を返せばそれほど人の死を見てきたとも言えるわけで──記憶を失う前の自分は、この手で人を殺めてきたのではないだろうか? 
調合するたび、そんな疑問が過り、不安は確かに蓄積されていた。
(一緒にいて、いいのかしら)
一人で始めた旅は、つい最近になって八人となった。
スターとなり、あるいは商人として世界中の人を助けたいと夢見る者や、民や村の人々を助けるべくして道を往く者もいる。
罪と向き合い、別れる道を選ぼうとする者もいれば、罪に真っ先に飛び込む者もいて、罪を犯す人々を探る者まで揃っている中、自分は、どうなのだろう。
罪を犯したのか。償うべき存在なのか。それとも。
「ここにいたのか」
はっと振り返り、眩しさに目を細めた。
木々の影から角灯を持って現れたのは、最初の仲間であるヒカリだ。
「見張りにしては、随分遠くを選ぶ」
たしなめるというには柔らかく、苦笑と呼ぶには穏やかな言い方だ。心配したのだと付け足す。
「……誰かさんみたいに、散歩がしたくなっちゃって」
「月がない夜にか」
「あら、星があるわよ。……こんなに明るいのに」
言いながらも自分はずっと俯いていたので、嘘をついているような気分になった。
沈黙が気まずい。かといって、一人にさせてと頼めば、不審に思うだろう。
何かないか。この場を切り抜ける、丁度よい言い訳が──不意に、閃く。
そうだ。今夜は月が見えない。
「ヒカリくん、ちょっと付き合ってくれない?」
彼の方を見ると、目が合った。ずっと見守られていたことに気付く。
「ここリーフランドには夜間にしか咲かない花があるの。その花を使って薬を調合すると、たちまち、病が治るんですって」
ほう、とヒカリは感心したように息を吐いた。
「探すには苦労しそうだが」
「大丈夫」
二人だけの別行動は危険が伴う。
キャスティとヒカリは仲間内で最も戦闘の経験値が高く、夜間の移動にも慣れていた。オーシュットがヒカリを起こした理由は、おそらくそのためだ。
クロップデール付近は魔物も弱く、ここで下手に仲間を起こして動くより、二人で対処する方が結果的に危険は少ない。
「おおよその位置は調べている。この近くなの、ついてきて」
「……止めても無駄なようだな」
片手で彼を誘えば、素直に彼は頷いた。
「分かった、行こう」
「助かるわ」
どこまでも真っ直ぐな彼を、悪い道に連れ込むようなことがないように、キャスティは口を噤む。
クロップデールそばの小川を二人で進む。魔物を警戒をしながら、キャスティは角灯を持って道を照らし、ヒカリが舟を漕ぐ。
釣りのための小空間には、蓋が開いたままの宝箱が置かれていた。
覚えていたのだろう。明かりを手渡すと、彼は、ここか、と呟く。
「ここで宝箱を開けたときに気付いたのよ。……この裏に、芽吹いていて」
ナイトクイーンの花は夜間に開く。花弁は煎じて飲み物に、実はすりつぶして塗り薬に、茎と葉は乾燥させれば魔除けの香として使えるが、栽培が難しく、自然に咲いているものから少しずつ採取して分ける。
「ごめんなさいね。ひとひら、分けてちょうだい」
花弁を一つ、引き抜く。小瓶に入れ、蓋をすれば、おしまいだ。
「……綺麗だ」
「そうね、綺麗な花なの」
鞄に小瓶をしまい、立ち上がる。
ぱちりと、目が合った。じっとキャスティを見つめるので、どうかしたのかと歩み寄る。
「ヒカリくん?」
「そなたは、星の光でも輝くのだな」
「私?」
口説き文句に聞こえなくもないが、彼がそのつもりで言ったとは考えられない。
ただの感想だろう。
「自分ではよく分からないけど……。そういえば、あなたのように暗い色の瞳の人には、色がはっきり見えるのよね。そのせいかしらね」
笑顔で受け流し、小舟に乗って、元の川岸へと戻る。
「ね、すぐだったでしょう? 戻りましょうか」
「そうだな」
すっかり元の調子だと思った。
このままキャンプ地まで向かい、何事もなかったように眠れば、朝が来る。
そうして、来るその日まで、不安を持て余すのだろう。
「キャスティ」
「どうかした?」
「一人というのは、なかなか難しい」
釘を差された、気がした。
「俺も子供の頃、……母を亡くしてすぐの頃だ。悲しみに暮れ、一人になれる場所を探して歩いたことがある。だが、結局、ベンケイに見つかり、ツキにはどこにいたのかまで知られていた」
彼の国の事情は知らないが、子供が一人で出歩くなんて大人が許すわけがない。王子となればなおのこと、彼を一人にはしないはずだ。
けれど、それは彼だからの話だ。
「その時は分からなかったが、今なら分かるのだ。友がつらさを隠しているなら、傍にいて励ましたい。一人で考えたいならそれでいい、だが……」
ヒカリが大きく距離を詰めてきたので、思わず退いた。謝罪もなく、じっとキャスティの顔を見つめる。
「帰る場所は、ここにある」
「……ヒカリくん」
「それだけは忘れてくれるな。記憶を取り戻した後も、そなたの居場所は、ここにある」
戦を乗り越えてきたと聞いている。その年で、多くの命を斬り、味方を救ってきた彼を、果たして人は、罪人だと呼ぶだろうか。
見方を変えれば、全てが変わる。そうせざるを得ない環境であったのかもしれないし、自ら進んでそうしたのかもしれない。
今はまだ、分からない。
「私が悪い人でも、許してくれる?」
「さあ、そなたには助けられてきたからな。そなたの悪事を聞かぬことには、なんとも」
「……そこは許す、って言ってくれないのね」
「許すのは、俺ではない」
長い黒髪を翻し、彼は肩越しにキャスティを見やった。
「そなただろう。キャスティ」
皆が待っている、と言って歩き出すその背中を、ゆっくりと追いかける。
隣に並ぶ。伸ばしかけた手を躊躇ったとき、彼の方から手を差し伸べられた。
甘える。繋いだ手のひらは温かく、頼もしい。

月のない夜で良かった。
潤んでしまった瞳を、彼に見せずに済んだのだから。


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実プレイ時の私の感想
キャスが自分のこと悪人だと思ってるかどうかって、作中では微塵も語られないので、私も「この人は、それはそれ、これはこれ、事実確認しない限りは様子見する人かな」と思っており。このあたりはテメと似た性格かなって思ってたんですよねー。
でも、クロスストーリーを見て、プレイヤーにすら見せないくらい自分の中に抱え込む人なのかも、と(少なくとも開発側の演出としてそれを意識してるのかな?と)思ったので、なんだろう、同じく人の上に立ち、不安というほどの不安を強く示すような人じゃないヒカくんには感じ取れるものだったりしないかな?と……このあたりは私がこの二人好きだからそう思ったので、形にしてみました。
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そうだそうだ、マレーヤさんがいたから仲間内には話さないよなあって……思ってたんですよね……。

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#テメキャス
#ボツ

Q.書き終わったんですか?
A.まだです。

没展開です。これ採用したかったのにな〜!!!

⚠️身体接触あり、R15に該当する描写が含まれます⚠️
(今のレーティング的に)


※ふたりとも踊子衣装を着ています。
※場所はトロップホップの浜辺で、人目がなさそうなところだと思ってください。





潮風が木々を揺らした。葉擦れの音やさざ波の音が変わらず穏やかに響いているというのに、氷を当てられたかのような嫌な冷たさを覚える。
「何をって……」
語尾が窄まるに合わせて彼女が視線を足下へ落とす。
返答を待っても良かったが、言わせるよりも先に身体が動いていた。
「こちらを向いて」
「え、あ──」
抱き寄せ、口付ける。肩に触れ、腕を撫で下ろし、脇腹から胸元へ手を滑らせると、さっと彼女の手に阻まれた。
「や、こんなところで、なに」
押し返される。手首を掴んでも振り解かれることはなく、加減されていると感じた。
どうしてそう、調子付かせるのが上手いのだろう。
「離しませんよ」
「テメノス! 待って、いや──」
片脚を持ち上げ、押し倒す。怯えさせたいわけではない。無理を強いるつもりもない。
けれど、伝える前から諦めるような真似だけは、してほしくなかった。
「いやだというなら、この胸の中に秘めないでください」
コルセットと一体になった胸元の布地をずらし、胸の谷間に鼻先を埋める。抱きしめたときよりも濃厚な彼女の香りに鼻を鳴らして、肌に吸い付いた。
「っ、ん……」
善い反応をする。このまま抱いてしまいたい。
誤解を避けるためにも、大人しく離れ、服を整えてやる。
胸元を両手で隠す彼女の顔は赤らんでいて、今しばらくは二人きりで居なくては、と考える。
「すみません。あなたの許可もなく触れたことは謝ります」
「ち、違うわ」
今夜もまた機会を逃すのかと名残惜しく思いながらも殊勝に謝ると、予想外の返答に面食らった。
「いやじゃないから、困ってたのよ……」
掠れるような声で、赤くなった顔を両手で隠すように彼女が白状する。
互いに冷静になるまでの間、穏やかな海風が通り抜けていた。
「……キャスティ、提案なのですが、このままコテージに連れ帰っても構いませんか?」
「だ、だめに決まってるでしょう! アグネアちゃんがいるのに……」
「ではもう少しだけ、そばにいてくれませんか」



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#雨に花束関連

神官加入編→剣士2章を書き始めてしまってたので、ひとまず神官加入までののんびりした話を公開します。

神官加入編を読む

学者加入は漫画なのとヒカとキャス中心なのでまた別で出します。

ミントさんの言動はほぼ私のイメージです。エクストラ前までのミントさんが好きすぎて……(そのあとはめちゃくちゃ好きで……)(結局どっちも好き)

あと私はテメと教皇を主軸に、聖堂騎士さんたちとかロイさんたちとかの話を受け止めてるため、そのあたりを主従っぽい雰囲気やら親しい友人的な雰囲気やらに演出すると思います。よしなに。

テメのEx技の神殿見つけた!!見てきます。どんな技なんだろ。

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