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ヒカ・キャス・テメに対する煩悩かべうち

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#雨に花束関連
#ヒカキャス
#ヒカキャス「新月の夜に」

ウィンターブルームは終えてる、薬師2章サイ編→剣士3章(ウェルグローブ)→クロップデールで踊子加入して八人になった後の時間軸。
自分の罪について考える薬師。

2025/3/11追記。
月の描写を間違えて挟んでいたので修正。気付かなかったのウケる(泣いてる)。



このくらいの距離感だと私が嬉しい……という気持ちが込められてる。実プレイベースの妄想じみてるので、タグをつけています。



気がかりがあると、頭の中で考えがまとまらず、眠れない時がある。

起き上がり、キャスティは鞄を手に取った。
眠る皆を起こさぬようにそっと歩く。──なんて、うまくいくはずがない。
「キャスティ……?」
耳聡いオーシュットに人差し指で合図をし、すぐに戻るから、と手を振る。夜行性のマヒナに加え、聴覚が動物並みに鋭い彼女から逃れることは難しい。
身体を横たえ目を瞑る、あるいは、星空でも眺めていた方が良いはずなのに、この夜はどうしても眠っていられなかった。

この日、リーフランドのキャンプ地にて、キャスティ達は野営をしていた。快晴が続き、朝晩はやや冷える日もある。
木々の影から覗く星空は、宝石を散りばめたように美しい。
森は静かだった。一人分の靴音が響く以外、虫や鳥の鳴き声が聞こえるばかり。
魔物避けの薬を調合し、自分の身体に振りかける。
小川のせせらぎが聞こえたので、その方へ足を向けた。
月がないのに明るい夜だった。
川の水面に星の光が反射して、綺麗だ。
キャスティは近くで立ち止まり、水面を見つめた。
サイで新たに記憶を取り戻した今、自分が向かうべき場所は分かっていた。
旅はじめの頃、テメノスの話を聞いて訪れた、無人の村──ヒールリークス。
そこに行け、とマレーヤは言った。
一度訪れたから分かる。誰もいない、虫も、鳥の声すら聞こえない、平穏にしては不気味なあの村で、一体、自分は何を思い出すのだろう。
(……本当に、人を殺したのだったら、)
記憶を失ったばかりの頃は、話の真偽を気にしていられなかった。
だが、手がかりを求めて旅を始め、いざ記憶に触れるようになってからは違う。
恐れていた。記憶を失ってからの自分は、この手で人を救ってきた。それが自分のするべきことだと思ってきた。でも、それだけの知識があるということは、裏を返せばそれほど人の死を見てきたとも言えるわけで──記憶を失う前の自分は、この手で人を殺めてきたのではないだろうか? 
調合するたび、そんな疑問が過り、不安は確かに蓄積されていた。
(一緒にいて、いいのかしら)
一人で始めた旅は、つい最近になって八人となった。
スターとなり、あるいは商人として世界中の人を助けたいと夢見る者や、民や村の人々を助けるべくして道を往く者もいる。
罪と向き合い、別れる道を選ぼうとする者もいれば、罪に真っ先に飛び込む者もいて、罪を犯す人々を探る者まで揃っている中、自分は、どうなのだろう。
罪を犯したのか。償うべき存在なのか。それとも。
「ここにいたのか」
はっと振り返り、眩しさに目を細めた。
木々の影から角灯を持って現れたのは、最初の仲間であるヒカリだ。
「見張りにしては、随分遠くを選ぶ」
たしなめるというには柔らかく、苦笑と呼ぶには穏やかな言い方だ。心配したのだと付け足す。
「……誰かさんみたいに、散歩がしたくなっちゃって」
「月がない夜にか」
「あら、星があるわよ。……こんなに明るいのに」
言いながらも自分はずっと俯いていたので、嘘をついているような気分になった。
沈黙が気まずい。かといって、一人にさせてと頼めば、不審に思うだろう。
何かないか。この場を切り抜ける、丁度よい言い訳が──不意に、閃く。
そうだ。今夜は月が見えない。
「ヒカリくん、ちょっと付き合ってくれない?」
彼の方を見ると、目が合った。ずっと見守られていたことに気付く。
「ここリーフランドには夜間にしか咲かない花があるの。その花を使って薬を調合すると、たちまち、病が治るんですって」
ほう、とヒカリは感心したように息を吐いた。
「探すには苦労しそうだが」
「大丈夫」
二人だけの別行動は危険が伴う。
キャスティとヒカリは仲間内で最も戦闘の経験値が高く、夜間の移動にも慣れていた。オーシュットがヒカリを起こした理由は、おそらくそのためだ。
クロップデール付近は魔物も弱く、ここで下手に仲間を起こして動くより、二人で対処する方が結果的に危険は少ない。
「おおよその位置は調べている。この近くなの、ついてきて」
「……止めても無駄なようだな」
片手で彼を誘えば、素直に彼は頷いた。
「分かった、行こう」
「助かるわ」
どこまでも真っ直ぐな彼を、悪い道に連れ込むようなことがないように、キャスティは口を噤む。
クロップデールそばの小川を二人で進む。魔物を警戒をしながら、キャスティは角灯を持って道を照らし、ヒカリが舟を漕ぐ。
釣りのための小空間には、蓋が開いたままの宝箱が置かれていた。
覚えていたのだろう。明かりを手渡すと、彼は、ここか、と呟く。
「ここで宝箱を開けたときに気付いたのよ。……この裏に、芽吹いていて」
ナイトクイーンの花は夜間に開く。花弁は煎じて飲み物に、実はすりつぶして塗り薬に、茎と葉は乾燥させれば魔除けの香として使えるが、栽培が難しく、自然に咲いているものから少しずつ採取して分ける。
「ごめんなさいね。ひとひら、分けてちょうだい」
花弁を一つ、引き抜く。小瓶に入れ、蓋をすれば、おしまいだ。
「……綺麗だ」
「そうね、綺麗な花なの」
鞄に小瓶をしまい、立ち上がる。
ぱちりと、目が合った。じっとキャスティを見つめるので、どうかしたのかと歩み寄る。
「ヒカリくん?」
「そなたは、星の光でも輝くのだな」
「私?」
口説き文句に聞こえなくもないが、彼がそのつもりで言ったとは考えられない。
ただの感想だろう。
「自分ではよく分からないけど……。そういえば、あなたのように暗い色の瞳の人には、色がはっきり見えるのよね。そのせいかしらね」
笑顔で受け流し、小舟に乗って、元の川岸へと戻る。
「ね、すぐだったでしょう? 戻りましょうか」
「そうだな」
すっかり元の調子だと思った。
このままキャンプ地まで向かい、何事もなかったように眠れば、朝が来る。
そうして、来るその日まで、不安を持て余すのだろう。
「キャスティ」
「どうかした?」
「一人というのは、なかなか難しい」
釘を差された、気がした。
「俺も子供の頃、……母を亡くしてすぐの頃だ。悲しみに暮れ、一人になれる場所を探して歩いたことがある。だが、結局、ベンケイに見つかり、ツキにはどこにいたのかまで知られていた」
彼の国の事情は知らないが、子供が一人で出歩くなんて大人が許すわけがない。王子となればなおのこと、彼を一人にはしないはずだ。
けれど、それは彼だからの話だ。
「その時は分からなかったが、今なら分かるのだ。友がつらさを隠しているなら、傍にいて励ましたい。一人で考えたいならそれでいい、だが……」
ヒカリが大きく距離を詰めてきたので、思わず退いた。謝罪もなく、じっとキャスティの顔を見つめる。
「帰る場所は、ここにある」
「……ヒカリくん」
「それだけは忘れてくれるな。記憶を取り戻した後も、そなたの居場所は、ここにある」
戦を乗り越えてきたと聞いている。その年で、多くの命を斬り、味方を救ってきた彼を、果たして人は、罪人だと呼ぶだろうか。
見方を変えれば、全てが変わる。そうせざるを得ない環境であったのかもしれないし、自ら進んでそうしたのかもしれない。
今はまだ、分からない。
「私が悪い人でも、許してくれる?」
「さあ、そなたには助けられてきたからな。そなたの悪事を聞かぬことには、なんとも」
「……そこは許す、って言ってくれないのね」
「許すのは、俺ではない」
長い黒髪を翻し、彼は肩越しにキャスティを見やった。
「そなただろう。キャスティ」
皆が待っている、と言って歩き出すその背中を、ゆっくりと追いかける。
隣に並ぶ。伸ばしかけた手を躊躇ったとき、彼の方から手を差し伸べられた。
甘える。繋いだ手のひらは温かく、頼もしい。

月のない夜で良かった。
潤んでしまった瞳を、彼に見せずに済んだのだから。


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実プレイ時の私の感想
キャスが自分のこと悪人だと思ってるかどうかって、作中では微塵も語られないので、私も「この人は、それはそれ、これはこれ、事実確認しない限りは様子見する人かな」と思っており。このあたりはテメと似た性格かなって思ってたんですよねー。
でも、クロスストーリーを見て、プレイヤーにすら見せないくらい自分の中に抱え込む人なのかも、と(少なくとも開発側の演出としてそれを意識してるのかな?と)思ったので、なんだろう、同じく人の上に立ち、不安というほどの不安を強く示すような人じゃないヒカくんには感じ取れるものだったりしないかな?と……このあたりは私がこの二人好きだからそう思ったので、形にしてみました。
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そうだそうだ、マレーヤさんがいたから仲間内には話さないよなあって……思ってたんですよね……。

小説

#テメキャス
#ボツ

Q.書き終わったんですか?
A.まだです。

没展開です。これ採用したかったのにな〜!!!

⚠️身体接触あり、R15に該当する描写が含まれます⚠️
(今のレーティング的に)


※ふたりとも踊子衣装を着ています。
※場所はトロップホップの浜辺で、人目がなさそうなところだと思ってください。





潮風が木々を揺らした。葉擦れの音やさざ波の音が変わらず穏やかに響いているというのに、氷を当てられたかのような嫌な冷たさを覚える。
「何をって……」
語尾が窄まるに合わせて彼女が視線を足下へ落とす。
返答を待っても良かったが、言わせるよりも先に身体が動いていた。
「こちらを向いて」
「え、あ──」
抱き寄せ、口付ける。肩に触れ、腕を撫で下ろし、脇腹から胸元へ手を滑らせると、さっと彼女の手に阻まれた。
「や、こんなところで、なに」
押し返される。手首を掴んでも振り解かれることはなく、加減されていると感じた。
どうしてそう、調子付かせるのが上手いのだろう。
「離しませんよ」
「テメノス! 待って、いや──」
片脚を持ち上げ、押し倒す。怯えさせたいわけではない。無理を強いるつもりもない。
けれど、伝える前から諦めるような真似だけは、してほしくなかった。
「いやだというなら、この胸の中に秘めないでください」
コルセットと一体になった胸元の布地をずらし、胸の谷間に鼻先を埋める。抱きしめたときよりも濃厚な彼女の香りに鼻を鳴らして、肌に吸い付いた。
「っ、ん……」
善い反応をする。このまま抱いてしまいたい。
誤解を避けるためにも、大人しく離れ、服を整えてやる。
胸元を両手で隠す彼女の顔は赤らんでいて、今しばらくは二人きりで居なくては、と考える。
「すみません。あなたの許可もなく触れたことは謝ります」
「ち、違うわ」
今夜もまた機会を逃すのかと名残惜しく思いながらも殊勝に謝ると、予想外の返答に面食らった。
「いやじゃないから、困ってたのよ……」
掠れるような声で、赤くなった顔を両手で隠すように彼女が白状する。
互いに冷静になるまでの間、穏やかな海風が通り抜けていた。
「……キャスティ、提案なのですが、このままコテージに連れ帰っても構いませんか?」
「だ、だめに決まってるでしょう! アグネアちゃんがいるのに……」
「ではもう少しだけ、そばにいてくれませんか」



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小説

#雨に花束関連

神官加入編→剣士2章を書き始めてしまってたので、ひとまず神官加入までののんびりした話を公開します。

神官加入編を読む

学者加入は漫画なのとヒカとキャス中心なのでまた別で出します。

ミントさんの言動はほぼ私のイメージです。エクストラ前までのミントさんが好きすぎて……(そのあとはめちゃくちゃ好きで……)(結局どっちも好き)

あと私はテメと教皇を主軸に、聖堂騎士さんたちとかロイさんたちとかの話を受け止めてるため、そのあたりを主従っぽい雰囲気やら親しい友人的な雰囲気やらに演出すると思います。よしなに。

テメのEx技の神殿見つけた!!見てきます。どんな技なんだろ。

小説

#つぶやき
#雨に花束関連
memoにもリンクを張りましたがここにも。
実プレイベースの妄想シリーズ「雨に花束」の剣士5章書きかけを公開しています。

小説を読む

「強風に煽られるからヒカくんにしがみつくキャス」という図を考え出した自分をナイスやで!と褒めたかったので……(?)
それとテメにおかえり、キャスにただいまと言わせてしまいました。縁側妄想が効いてそうです。
実プレイベースだと恋愛はなにもないので、この話で誰かと誰かがどうこうみたいなことは絶対させないんですが、
色眼鏡を装着すればナイスやで!といいたくなる場面が描けるとちょっと元気出ます。難儀なオタクです。
原稿をしてくれ。

小説

#コンビ以上カプ未満
  • テメとキャスの会話@クラックレッジ:
  • ヒカくんやオズとの関係性は実プレイベース
  • オシュ・テメ3章後
  • 特に何も起こらない

これをコンビで出すと「ああこの作者はこの二人のカプが好きなんだな」って匂いを感じる(テメとキャスがお互いのことを原作以上に心配してると示す)ので、コンビとして表に出すのを躊躇いました。短編です。

2025/1/5追記。
上記は考えすぎなのでは?の顔をし始めました。修正すればコンビで出せるのでは??🤔


タイトルは「Likewise(お互い様)」


溶岩を固めて作り上げたような魔物──テラの咆哮が轟いた。
「それじゃあ、島で合流!」
オーシュットの明るい声がなければ、テラの威圧に負け、人々に退避するよう促したかもしれない。地響きを立てながらテラは海岸へ向かって歩き出し、大きな岩山のようなその身体が徐々に海へ遠ざかる。
「はあ~、腹減った〜!」
「お疲れ様、オーシュット。みんなも、街へ戻りましょうか」
「そうだな」
キャスティ、ヒカリは戦闘慣れしている二人で、テメノスが同行する旅団(パーティ)の要である。オーシュットは魔物を使役でき、自身も俊敏に、狩人として容赦なく矢を放つため戦闘向きで──つまり荒事には不向きなテメノスがなぜここに立っているのかというと、彼らの傷を癒やす、後方支援のためであった。
「皆さん、回復を忘れていますよ」
「ありがとう、テメノス」
回復魔法を唱えるとテメノスを中心に淡い緑光が波状に広がり、全員の傷を癒やす。治療面では誰よりも先んじて動くキャスティが、嬉しそうに頬を綻ばせた。
「助かる」
「テメノス……! ありがとう!」
「どういたしまして」
順番にはしごを登り、道を案内してくれたポムに礼を述べて別れる。じゃれつくオーシュットと先程のテラについて語り合いながら、他二人の後に続き、酒場で待っていた仲間達と合流した。


「俺は先に戻る。……静かな場所で本を読みたい」
「外は寒いと思うけど」
「構わん」
「待って。それなら温かいコーヒーでも持っていったら?」
若い面子が楽しげに会話をする横で、席を立つオズバルドをキャスティが引き止めていた。ため息をついたが、大柄の学者はそのまま腕組みをして待つ姿勢を見せる。キャスティは彼がそうすると分かっていたように、何も言わずに店主へ声を掛けに行った。
「彼女の目から逃れるのは至難の業ですね」
カウンター端に座っていたテメノスが話しかけるとオズバルドは無愛想な顔の、瞳だけをこちらへ動かし、再び前へ戻す。鼻息のような、ため息のような、曖昧な息を吐く。呆れたらしい。
「……そうでもない」
「というと?」
「気がかりがなければ見逃すだろう、彼女は。現に、ヒカリは素通りだ」
話している最中にちょうどヒカリが席を立った。酔いを覚ますらしいが、彼が一人になってすることなど剣の修練だと皆が知っている。
窓の外で剣を振るい始めたヒカリを見て、アグネアが負けじと立ち上がる。この酒場に踊り場はないが、角のほうに空間があり、そこで吟遊詩人がギターを演奏していた。
「……座る場所の問題では?」
「アグネアちゃん、今朝咳をしていたでしょう? 今夜は休ませたほうがいいと思うわ」
テメノスがオズバルドに言い返した矢先、コーヒーを片手にキャスティがアグネアを引き止める。オズバルドに渡すとすぐに離れ、キャスティはアグネアの喉の調子を確認し始めた。
大丈夫! と笑って返していたアグネアの顔が、だんだんと気まずそうな表情に変わる。
最終的に、目の前で調合された薬を飲んでから歌い始めた。
テメノスが納得を示すまでもなく、オズバルドは酒場を出ていってしまい、パルテティオは近くの席の労働者と語り合い、ソローネとオーシュットは熱心に各々の武器について話し込んでいる。
アグネアの歌が始まる。店内を満たしていた喧騒が歌い出しにかき消され、客達は話を止めて歌に聞き入る。
隣の席にキャスティが座った。
目を合わせるだけで、互いに何も言わない。
仲間の歌声に耳を傾ける。
彼女の横顔からアグネアへ視線を移す。


共に旅を始めて数ヶ月が経った。
旅が終わりに差し掛かっている者もいれば、まだ旅を始めたばかりの者もいる。テメノスはどちらかといえば前者の方だが、キャスティについてはどちらとも言い難い。
記憶が戻った時を終わりとするなら、彼女の記憶はいま、どこまでが取り戻せているのだろう。
自分のことよりも他者を優先する、薬師としての姿が彼女を支えているのだろうと思ったから、テメノスは彼女のそういう部分を信頼していて、ゆえに、同じだけ心配もしていた。
これだけ相手を助けようとする彼女が、記憶を失うほどのこと──例えば、過去に彼女が何らかの罪を犯してしまったことを理由に記憶を失ったのだとしたら、今の彼女はそれを受け入れられるのだろうか。それだけではない。彼女が被害者となった可能性もある。
歌が終わる。ワッと拍手と歓声が沸き起こった。
「今夜はゆっくり眠れそう。優しい歌だったわ」
「そうですね……」
「どうかした?」
カウンターに片腕をつき、キャスティがこちらへ向き直る。
「もしかして、考え事かしら」
「いいえ、昼間の件は保留です。次の調査場所へ向かうまでに考えれば良いので」
「ふうん……?」
店主がエールを彼女の前に置いた。コーヒーのついでに注文していたのだろう、テメノスにも要るかと聞かれたが遠慮した。
マグの半分ほどまで豪快に酒を飲み、しかし、吐いた息は紅茶でも飲んだかのような落ち着きがあり、隙のない女性だなと思う。
「昼間の女性のことを考えていたとか?」
こちらは真面目に考えていたというのに、一仕事終えた彼女は職務中とは打って変わり、軽い雰囲気でそんな冗談を口にした。ソローネならまだしも、彼女にそんなことを言われるとは思わず、なんですかそれは、と半目になってしまう。
「聖堂機関はあなたのことを目の敵にしているようだし、なかなか気が抜けなさそうだと思って。それに、あなたって言動だけは不真面目だけど、真面目だから……根を詰めすぎちゃだめよ?」
「ご心配なく。謎を解き明かす過程が、なによりも楽しいですからね」
こちらが心配されているとは思いもしなかった。
困ったように笑った後、キャスティは酒の残りを数口に分けて飲み干す。
もう一杯を頼むので、テメノスも便乗した。
「飲むの?」
「ええ、あなたを見ていたら飲みたくなりました」
リーフを支払い、届くのを待つ。テーブル席ではヒカリとアグネアが戻り、五人で和やかにデザートを頼んでいた。
「キャスティ。次の質問は雑談なので、真に受けなくて構いませんが、聞いてくれます?」
「あら、なにかしら」
酒が届く。ビアマグを掲げて、乾杯をする手前、頬を色付かせた彼女を見つめた。
「記憶を取り戻したら、実は恋人がいた……なんてことになったら、あなたはどうします?」
一方的に乾杯を終わらせて、酒を飲む。
質問を吟味するように、時間をかけて酒を飲んでいたキャスティだったが、ふむと頬に手を当てた後、なんでもない表情のままテメノスを見た。
「面白い話だけど、残念ながら、どうもしないわね」
そう言って唇を湿らせるように酒を含む。
「鞄の中に手紙はなかったし、恋人らしき存在について手記にも書いていなかった。私のことだから──と言っても、まだ分かっていることは少ないけれど──好きだったら、一言二言くらいは書くと思うのよね」
「なるほどなるほど。それは確かに」
「それに……これは想像だけど、恋人より患者を優先してしまうから、私を恋人にしようなんて人、きっといないわよ」
離れたテーブル席で笑い声が起こる。
彼女は事実を口にしただけなのだろうが、それはどこか自嘲じみた響きを伴って聞こえた。
「そんなことはないでしょう」
かろうじて、それだけを答える。それ以上のことを口にしようものなら、この話題が別の意味を持ってしまいそうだった。
ふ、と突然彼女が吹き出す。
「さっきの冗談、思ったより効いたのね。ごめんなさい、からかって」
「……違います」
「あなたは良い神官だと思うわ。本当よ」
「それはどうも」
肩を竦めてどうにかそれだけ言い返す。酔いが回ってきたのか、キャスティはまともに取り合いはせず、テメノスもそのまま不貞腐れたふりをして、他の仲間達と共に席を立った。



諦めてカプ寄りにするべきだったかな……分からない。カプになる二人ならテメはキャスのことを「素敵な女性」だと褒めるだろうし、キャスも「あなたがそう言ってくれるなら、恋人も要らないわね」っていうのかなと思いました。付き合ってない状態でそういう会話をしてくれ。


本来のネタは「記憶を取り戻す前なら、好きだった相手のことも忘れているから、取り入る隙があるのでは?と考えてしまったテメ(何もしない)と、恋なんてするわけないって思ってるキャスによるテメキャス」でした。今度はカプでリベンジします。
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